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東都幻想工房

同人サークル・東都幻想工房の近況等を報告するブログです。 また、二次創作小説等も掲載しています。

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東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第6章・その2

第6章・魔界のエージェント

 翌日、大治郎が目を覚ました所、屋敷の廊下から何やら言い争う声が響いてきた。声の主は晴海であり、物凄い形相でセラッグに喰ってかかっていた。晴海は水をかけられたかのように濡れている。何かの拍子で被ってしまったのだろうか。
 大「おはよう。あさから元気だな」
 晴「聞いてよ!コイツ、酷いのよ。味見とか何とか理由をつけて私を呑み込もうとしたのよ!」
 セ「だから、すまなかったと謝っているじゃないか」
 晴「それはいいわ。私が納得いかないのは、ヒトの肉は私くらいの年齢がちょうどいいから我慢できなかったという理由よ!?一族の取り纏めの立場のヒトがそれで言いわけ!?全く、信じられないわ」
 会話の内容から晴海はセラッグに突然襲われ、呑み込まれかけたようだ。
 セ「それにしてもあの状態から電撃を放って私から逃れるなんて、私はお前さんが気に入ったよ。話は急に変わるがこの件が終わったら、私達が作っている物をそちらで扱ってみないかい?」
 晴「何よ急に」
 セ「お前さんの家は商人の家だろう?ここで魔界の物を取り扱ってみないか?そちらの世界に無い物がこちらにはたくさんあるぞ。それと交換で、こっちの世界に無い物を私達に卸して欲しい」
 晴「意外とがめついわね」
 セ「がめついとは心外だな。今のご時世、お金は力の一つだ。それにあればあるほどいいじゃないか。基本、何もしてくれない神様よりはよほど役に立つだろう?」
 晴「まあ、私の一存だけじゃ無理ね。ま、お婆様に一応、話をしてみるわ」
 セ「おお、そうか!ぜひとも頼むぞ。最近の魔界は刺激を求めている。そちらの世界の物なら様々なジャンルの物が受けるはずだぞ」
 セラッグが嬉々とした表情で、晴海の両手を捕って上下に激しく揺さぶる。余程、こちらの世界の物が欲しいのだろう。
 ソ「頭いた~い。昨日は呑みすぎたわ~。うう・・・」
 そんな時、二日酔いでソフィアが現れ、いい雰囲気をぶち壊すにえげいていた。その様子をみたセラッグは“ここで吐くなよ!”と慌て始めた。
 ソ「ちょ、ちょっと車を止めて頂戴・・・・・・」
 不「なんですかソフィアさん、またですか?」
 路肩に車を止めた瞬間、ソフィアが車から音速の如く飛び出し、茂みに隠れたと思ったら耳障りな声が聞こえてきたのだった。
 ソ「あのもらった薬、本当に二日酔いに効いているのかしら?さっきからいっこうに治まる気配がしないわ」
 チ「私のスキャンによる結果では、体調はあまり変わっていない模様です。おそらく、峠道を右に左に揺られた影響が間接的に出ていると思われます」
 不「私の予想だと、おそらく、あの薬は何の効果がないエセ薬だと思いますよ」
 ソ「エセ薬!一体、何のために!」
 不「多分、その方がおもしろいと思うからですよ」
 それを聞いたソフィアは顔を真っ赤にして悪態をついた後、月島から渡された水を口に含んだ後、あてつけるかのように勢いよく吐き出した。マンドラ族の集落を離れる際に、セラッグが“ここから先は妨害になるような障害はない”と言っていたため、京の都にはすんなりと入る事ができた。
パリン!
 不「おっと!」
 突然、車の窓ガラスから音をたてた。よく見ると9mm程度の穴が開いている。
 ?「止まれ!」
 大きな声がした方向をみると、大きなフロッピーハットを被った女性がおり、構えた銃から煙が立ち上がっていた。
 大「彼女がコードレスか?」
 不「そうです。間違いありません」
 コ「外の世界から来た四人組みはお前達だな!?」
 大「いいえ。違います」
 コードレスの問いに大治郎は何の悪びれもなく嘘をついた。
 コ「・・・・・・。嘘をつくな!五尾の火狐が連れているという情報が入っているのだ」
 大「お前さん、そんな二つ名があったのか?」
 不「・・・一応」
 どうやらすんなりと通してはくれなさそうだ。
 ソ「・・・・・・行って」
 ソフィアが何気なく言った一言に全員が視線を向ける。
 ソ「アクセルを踏んでさっさと行って頂戴」
 チェ「そうしたら、あのヒトを轢いてしまう可能性があるわよ」
 ソ「そんな事関係ないわよ!名無しだか無線だが知らないけど、ここは車道よ!ボーッと突っ立っているほうが悪いのよ!さあ、行きなさい!さっさと車を出さないと、あなたの頭をサッカーボールのように蹴っ飛ばすわよ!」
 一国の女王を務める人物とは思えない発言である。しかし、ソフィアの威圧に負けたのか、不知火はアクセルを踏み切った。
 コ「何を考えて――」
 その先の言葉は聞こえなかった。アクセルを踏み切り、急加速した車に撥ねられたのだ。しかし―

ボスッ!
 突然、鈍い音と共に車体が右側に傾く。不知火が減速させて車を停める。原因ははっきりしていた。
 大「車に撥ねられて空を舞っているというのに、その最中、正確に車のタイヤを狙ってきたな」
 撥ねられたコードレスは地面に叩きつけられず、しっかりと片手をついて着地していた。ダメージも無さそうで、まるで映画のアクションシーンのようであった。
 晴「ファーストアタックはうまく行かなかったみたいね」
 コ「車を使った先制攻撃とはなかなか考えたわね。しかし、そんな程度じゃ私からは逃げられないわよ」
 大「やれやれ、やっぱりダメか。少し楽はできると思ったんだけどな」

続く
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東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第6章・その1

第6章・魔界のエージェント

 戦闘が終わった後、大治郎達はセラッグを囲んでいた。この先、移動するにも不知火がいないとどこに向かうかわからないためだ。しかし、不知火はセラッグの体内にいるので、吐き出してもらわないといけなかった。
 大「何をするのもまずは不知火を返してもらわないとこの先どうする事もできないぞ」
 そういうと大治郎は、地面に伸びてるセラッグの脇腹に蹴りを入れる。
 セ「随分とご挨拶な起こし方だな」
 大「おとぎ話に出てくるお姫様のようなお目覚めが希望か?残念だがここには女王はいるが王子はいないぞ」
 大治郎がソフィアをちらりと見るが、ソフィアが早くしろと言わんばかりに腕を組んでいる。
 大「さて不知火を返してもらいたいのだが、ちゃんと生きているんだろうな?」
 セ「もちろんだ。少し待ってろ」
 触手を使って身を起こしたセラッグは、背中の方の触手から不知火を吐き出したのだが、不知火はピクリとも動かなかった。その光景を見た一行は、疑いの視線をセラッグに向ける。
 晴「・・・・・・事情を説明してもらえるかしら?」
 セ「大丈夫だ、この火狐は生きておる。ただ、これは漿液の効果で昏睡状態になっているだけだ。肺や胃の中の漿液がなくなれば目が覚める」
 ソ「目が覚めるって何時になる事やら、それまでここでキャンプでもするしかないのかしら?」
 セ「そこでだ。私はお前達に興味が出てきた。特別に我が領地での滞在を許そう。こんな所で喋っているよりもいいだろう。ぐうたら寝ているこの火狐を車にぶちこんで、さっさと向かおうではないか」
 そう言うとセラッグは、触手で起用に車のドアを開けて不知火を放り込んだ。道案内はセラッグがしてくれるのだが、車には入らないので、屋根に乗る事になったのだが、
ミシャッ!!
 チェ「ちょっと!車の屋根が下がってきたわよ!フレームも歪み始めているし。あなた!どんだけ重いのよ!」
 セ「マンドラ族は全体的に体重が重い方にはる部族なのだ。ほら、早く出発しないとタイヤがパンクするかもしれないぞ」
 そう言われて車を前進させたのだが、押さえつけられている力が働いているのか加速がとても悪い。その事から目的地に着く前に車が壊れるのではないかと非難の声があがる始末だ。しかし、領地とやらは近くであったため、車は壊れずに済んだ。
  「セラッグ様!この者ども達は!?」
 セ「私の客人だ。失礼が無いようにな。車で来れるのはここまでだ。そこの駐車場に置いてきれ。私は一足先に屋敷に戻ってこの火狐を寝かしたりさせるから、案内の者について屋敷へ来てくれ」
 セラッグは車から飛び降り、不知火を小脇に抱えてそそくさと街の奥へ向かっていった。案内の者について街に入ったが、街の入り口は観光客用のお土産屋等が集中しているため、かなりにぎわっている。一方、屋敷に近づけば近づくほど、観光客で賑わう喧騒は小さくなっていた。
 セ「さて、ディナーの用意をさせるのだが、肉は牛でいいかな?」
 屋敷に入るなり、セラッグがこちらを見ていきなり尋ねてきた。
 晴「何で私の方を見て言うのよ!?」
 セ「いや君が牛の亜人系の血筋だから、牛を食べるのに抵抗があるかと思ってな」
 晴「亜人と動物を一緒にしないでもらいたいわ」
 セ「ハハハ、そうかそれなら問題ない。こうして客人をもてなすのは久しぶりでな。あの火狐もディナーまでには目覚めるだろう。それまで自由にくつろいでくれ。街に出るなら案内をつけよう。その方が動きやすいだろう」
 その後、大治郎達は再び街へ行く事となった。特に目を光らせていたのは晴海であった。何か珍しい物があれば、持ち帰って商売のネタにするつもりなのだろう。そんな感じで時間は過ぎ去り、ディナーの時間となり案内係に食堂に通された。そこには意識を取り戻した不知火も座っていた。
 セ「おお、待っていたぞ。さあさあ、席について食べようじゃないか」
 テーブルを見ると、普段自分達が食べているような料理が並んでいた。街をうろついていた時に、どのような料理が出るのか話していたが、気に病むような物はなかったので一同はひとまず安心した。
 セ「街の様子はどうだったかな?この鬱蒼とした森の中にあるが、それなりににぎやかだっただろう?」
 晴「他種族に対して排他的と聞いていたけど、商店が並んでいる所は活気があったわ」
 セ「排他的か。確かに私達は他種族をあまり信用していない。かつて我々は、人間や魔界に住んでいる種族達に万病の秘薬として、大勢の同胞達が狩られた過去があるのだ。そのおかげで我々はマンドラ族と呼ばれるまで各地を転々としなが、隠れながら生きてきたのだ。この街を回って気づいただろう?我々以外の部族が入れる所は街の入り口付近のエリアだけだったと」
 大「・・・・・・・・・」
 セ「そのエリアで騒動が起これば、すぐさま、衛兵がやってきてボコボコにされるさ。それに今の時代に同胞達を狩ろうとするのは魔界の法律で禁じられている。世の中バランスが大事だからな。商店を出している同胞は、他種族にできる限り寛容な者だ。こちらからへんなトラブルを起こされても困るからその辺りは厳しくしている。でも、君達が聞きたいのはそれじゃないんだろう?一体、どうやって君達がここを通る事を知ったかなんじゃないかな?」
 ソ「そうそれよ。誰かが情報を流さないと罠をはる事もできなかったはずよ」
 セ「その通りだ。ある人物からタレコミがあったんだ。火狐が君達の情報を私達に流したのは“コードレス”だ。不知火は知っているだろう?」
 不「“コードレス”!あの人が!」
 先に断っておくがここでの“コードレス”は無線の事ではない。とある人物の事を指している。
 ソ「そのコードレスって誰よ」
 不「諜報活動から暗殺まで何でもこなせて、困難な任務ですら問題なく完遂する魔界一のエージェントです」
 不知火によるとそのコードレスという人物は魔女と九尾の魔義師に仕えるエージェントである事だ。情報収集から工作活動だけでなく、戦闘も得意としており幾度となく、窮地を乗り越えてきたという。彼女がいつから魔女に仕え始めたのかといった素性等はほとんどわからない状態であり、しかも本当の彼女の名前を知っているのはその2人だけらしい。ちなみに九尾の魔義師に仕えているとは言っても、あくまでも補佐的な意味合いらしい。
 セ「そして、そいつが山城地方の京の都でお前さん達を待っているといった所だ。前に1回戦った事があるがあいつは強いぞ。あんたみたいに懐に飛び込んでくる事すら厭わなかったな。私が言えるのはここまでだ。ささ、難しい話はここまでにして料理を堪能してくれ」
 セラッグは手をパンパンと叩くと奥から、メイドと思われるマンドラ族がお酒等の飲み物を持って現れた。かなり高級なビンテージ物らしく、それを気に入ったソフィアは1人ガブガブと飲んでいた。

続く

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第5章・その5

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第5章・艶美な妖花・その5

 鬱蒼とした森の中で、怒声や銃声、そして精霊術の発動音が響き渡っていた。マンドラ族の族長であるセラッグの襲撃ともいえる状況であるが、戦況は大治郎達の優勢であった。
 「何故だ!何故、4人だけなのに手こずるのだ!?」
 大治郎達は前後をマンドラ族に挟まれている状態である。大治郎の後方はソフィアとチェリー、そして晴海と月島が担当してマンドラ族の一般人を相手にしていた。ソフィアはしょっちゅうクリーチャー退治をやっているだけでなく、自分の王国に蔓延り腐敗の温床となっていた“貴族連合”を物理的に叩き潰した実績があった。晴海は短期間ながらも大治郎に剣の指導を受けたり、不思議な夢と思われているやけにリアリティー溢れる世界で冒険をしたという不思議な体験で実力をつけており、さらに月島のサポートも有る。チェリーに至っては身体に組み込まれたブラックボックスだらけのシステムのおかげか、相手の攻撃を的確に対処しており、戦闘面は全く問題がない。大治郎とセラッグの場にも一般戦闘員がいたが、瞬く間に叩き伏せられてあっという間に一騎打ちの状況となった。セラッグの攻撃は、一般戦闘員と同じく触手からの弾丸や叩きつけ、そして精霊術の3種類は変わらなかったが、防御についてはピカイチで数多くの触手で大治郎を間合いに近づけなくしたり、一般戦闘員よりも多い触手で移動を繰り返したり、時折、捕まえている不知火を盾にしようとしたりしていた。
 不「わわわ!何をするんですか!?私を殺す気ですか!!??」
 大治郎が攻撃を仕掛ける際にセラッグが、不知火を盾にしようとするとこの発言が飛び出してくる。
 大「そりゃ、捕まっているお前さんが悪い。自力で脱出してくれ」
 不「そんな殺生な・・・・・・」
 大「さて、そちらの防御技術が高いのはわかった。しかし、このまま防御一辺倒ではスタミナがなくなってしまうぞ?勝ちたいならそろそろ、本格的に攻めてきた方がいいぞ」
 セ「フフ。読まれていたか。しかし、ここまで私の攻撃を防ぎつつ、攻撃を仕掛けてくる相手は実に34年ぶりだ。もちろん、このまま押し切られる気はないさ、なあ」
 妖しい目つきを不知火に向けた途端、一つの触手が不知火に食いついたのであった。言葉にならない呻き声をあげながら、セラッグの体内に呑み込まれてしまったのであった。
 セ「さあ、ここからが本番よ」
 大「おいおい。スタミナが減ったからって不知火を食べてしまうとは」
 セ「そう思ってじっと見ていたあなたも随分と人が悪いじゃない。こいつを呑み込んでいる触手を切り落とす事くらいできたでしょうに。フフ、中でもがいているようだけど、すぐに大人しくなるわ」
 大「早めに返してもらおうか。道案内がいないとこの先不便だからな」
 セ「なら、ここに突きはやめておいた方がいいわよ。あの火狐に当たったら死んでしまうかもしれないわよ?」
 セラッグがヒトでいう下腹部にあたる部分をポンポンと叩く。どうやら不知火はあの部分に格納されているようだ。
 セ「焦る必要はないわ。この戦闘が終わったらこいつは開放するわ。魔界のお偉方に喧嘩を売るようなレベルまでの事はしないわ。だけど、こいつには私のために役立ってもらうわ」
 そういうとセラッグは右手に十手を持ち、左手に炎をまとわせ始めた。
 大「火か。不知火はたしか火狐だったな。だけど火はあんた達にはご法度ではなかったのか?」
 セ「火を見ただけでパニックを起こすマンドラ族は新米戦闘員位よ」
 その台詞と同時に、大治郎の後方からキャーキャーと悲鳴が響き渡ってきた。あまりの叫び声のため、セラッグも大治郎も視線を向けてしまった。見ると火を纏った木の葉が辺りに降り注ぎ、多くのマンドラ族がパニックを起こしていたのだ。ソフィアが木と火の複合属性を持つ精霊術を発動したのだ。よく考えれば、烈炎脚やブレイズナックル等の火属性の攻撃方法を多く持つソフィアが、それを縛ってまで戦い続ける訳がなかった。今がチャンスだと言わんばかりにパニックを起こしているマンドラ族に対して手当たり次第、攻撃を繰り出している。
 大「どうやらここにいる連中のほとんどは新米戦闘員のようだぞ?」
 セ「実に嘆かわしい。ここ最近、騒動が起こっていないとすぐこれだ。後で徹底的に鍛錬をこなす必要があるようだな。さて」
 セラッグがお話はこれまでだと言わんばかりに、炎を纏った十手で横薙ぎに払う。
 セ「もう感づいていると思うけど、マンドラ族は体内に格納した生物の能力を使用する事が可能なのだ。ただし、格納した生物が生きている事が条件だがな」
そういうとファイアストームを放つ。草タイプが炎タイプの技を使うという似つかわしくない状況もそうだが、触手をうまく使ってサマーソルトまで繰り出してくる。たしかに前の騒乱の時に見た不知火の技であるが、あの重そうな体格では、ウエディングドレスを着た花嫁がサマーソルトをしているのとまるで同じだ。しかも、ご丁寧に狐火まで再現している。
 セ「轟破炎裂衝!!」
 セラッグが十手で十字の形の炎弾を飛ばし、回転斬りで炎の衝撃波を周囲に飛ばす。大治郎は難なく回避したが、倒木や一部の木に火が付き、周囲が紅色に染め上げられた。その光景に慌てたセラッグ族が消火作業に入る。
 大「不知火のヤツ、こういう技も使えたのか。あの時はこういうのは使ってこなかったな」
 以前、晴海が引き起こしたイースト・ペイジング王国の中心街で行われた大規模な争乱中に、不知火と大治郎達は一戦交えていた。あのとき、このような大技使ってこなかったのは明らかに別の目的で動いていたと考えられる。ひょっとしたら、今回の騒動はあの騒動があった夏から静かに動いていたのかもしれない。
 セ「私に接近戦を挑むか!愚か者め!マンドラ族に接近戦を挑むのは魔界では無謀と言われているのだ!」
 セラッグの腹部から隠れていた触手が飛び出し、大治郎の刀と足を拘束してしまったが、
 セ「ウゲェ!?」
 唯一、セラッグの拘束を逃れていた大治郎の左手が、腹部にめがけて強烈な拳を繰り出したのだ。
 大「接近戦がこちらにとって不利だというが、それがどうしたと言うんだ。ヒトは勝利を確信時に最も致命的な隙をさらす。勝利の余韻に浸るのは完全に相手を倒した時まで我慢する事だ」
 そして、セラッグがのけぞっている合間に顎に向かってもう一撃を繰り出す。まともに喰らったセラッグはそのまま後ろに倒れこんでしまった。
 大「誰かの力に頼るのは自由だが、最終的に勝負を決めるのは本人の技術さ」
 セラッグが倒れた音が響いた事により、この地での戦闘は終了となった。
【登場人物紹介・その8】
■名前:マロン・セラッグ
■種族:マンドラ
■性別:女性
■職業:族長
■好きな物:肉(人間含む)、花等の自然な物
■嫌いな物:宝石類
■誕生日:3月16日
魔界に住む少数民族の1つであるマンドラ族を束ねる女性。外見はウエディングドレスをさらにふくらませ、花やフリルをふんだんにあしらったドレスにヴェールがついた花の冠を頭にのせている。特急列車のドアは通れないだろう。普通列車のドアを通れるかも怪しい。
下腹部には内臓の他に、色んな物が格納できるポケットみたいな器官や沢山の触手が隠されており、日常生活や戦闘に使用される。また、マンドラ族の特殊能力として、呑み込んだ相手の能力を使用する事ができる。ただし、吐き出したり、呑み込んだ相手が死んでいたりすると能力は使えない。セラッグの話によるとマンドラ族の呑み込んでいる時の引き込み力は凄まじく、抜け出すのは非常に困難らしい。ただし、呑み込まれた相手は漿液の効果で健康になってしまう。外科手術が必要な大ケガも治癒する事ができる。たまに病気の治療で訪れる人が来るらしいが、変なセラピーと思われても困るため、基本断っている。
なお、マンドラ族は他種族に対して排他的な態度をとるのが大勢いるが、それはかつて万能の特効薬としてマンドラ族が乱獲されてしまった事が起因している。血や体液、肉の全てが薬になるそうだ。

第6章へ続く

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第5章・その4

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第5章・艶美な妖花・その4

 「あれだけ意気込んで向かったというのにこのザマは何だ!?まともに攻撃があたってすらいないではないか!」
 どうやらあのマンドラ族は、大治郎達に攻撃をしかけたマンドラ族の行動に我慢できずに出てきたようだ。
 大「おい、不知火。あのマンドラ族は誰だ?」
 不「大治郎さん、大変な事になりました。あれはマンドラ族の族長です。戦闘になったら私では止められません。くれぐれも刺激するような事は避けてください」
 大「それは難しいぞ。どうみてもこの場を鎮めようとして出てきたわけではなさそうだぞ」
そのやりとりを聞いていたのか、ギロリと鋭い目つきをこちらに向ける。
 「おい、キツネ!出てこい!」
 不「な、何でしょうかセラッグ様」
 不知火が“セラッグ様”と発言した事で2人の上下関係は大体は把握した。不知火だと止められないのは間違いではなさそうだ。セラッグから伸びて来た触手は、車の窓ガラスを叩き割って不知火を引きずり出す。
 セ「今回の一連の騒動で、よくも私達を除け者にしてくれたわねぇ~。趣旨を聞いた所、今回は死人を出してはいけないという事じゃないか。私達がどこぞのワーム族みたいに、のべつまくなしでヒトを喰いまくるとでも思っていたのかい!?」
 不「お怒りなのは心中お察しいたしますが、生憎、私は選考作業には関わっていないのでそれ以上は何とも言えません。それにしても私達がよくここを通る事がわかりましたね」
 セ「タレコミがあったのさ。“私の弟”がここを通るから適当にあしらっても構わないってね。私達の適当ってどういう意味か理解していると思うけどね」
 不「それはつまり・・・・・・」
 セ「死ぬかもしれないって事よ!」
 そう叫ぶと不知火を触手で簀巻きのようにぐるぐる巻きにして、大治郎達に向き直る。
 セ「さあ、先に進みたければ私を満足させな!」
 大「いいだろう。そちらが大将ならこちらも大将がお相手しよう」
 チェ「周りの相手は私達に任せてください!」
 ソ「エキシビジョンマッチというなら手加減はいらないわね」

続く

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第5章・その3

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第5章・艶美な妖花・その3

 大治郎とチェリー、ソフィアと晴海の組み合わせで車を挟んで左右に展開する。一方、相手側は触手を叩きつけたり、触手から拳銃のように弾を発射して攻撃を繰り出してきた。
 不「姉さん!金萌(かなめ)姉さん!聞こえますか!?一大事です!!」
 車の中に取り残された不知火は持っていた携帯端末で姉に連絡を入れた。
  『どうしたの不知火?その声からするとかなり不味い状況のようね。あなたは道案内もまともにできなくなってしまったの?冗談はさておき、何があったの?』
 不「実はマンドラ族と遭遇して戦闘状態に入ってしまうというイレギュラーが発生。現在、連れてきた4人が応戦中です」
 金『・・・そう。なら黙って見ていればいいわ』
 不「い、いいんですか?マンドラ族は今回の件についてのルールから逸脱した行動をとっています!」
 金『そうね。今回の作戦においてマンドラ族はメンバーに1人もいれていないからフラストレーションが高まっていた事はたしかね。その反動で襲い掛かってくる事は十分に考えるわ。けれど、マンドラ族も馬鹿じゃないわ。魔界に連れてきたあの4人だからこその行動だと推測できるわ。もし、マンドラ族の族長が出てきたらあなたでは止められないでしょ?逆にその4人に任せておいたほうがいいわよ』
 姉にはっきりといわれて不知火は頭を搔いた。実際、マンドラ族の族長は魔界でも指折りの実力者だ。戦闘になったら金萌姉や真土香姉なら対抗できるが、自分や弟の風舞、妹の阿佐水では歯がたたない所か、下手をすれば捕食されてしまうかもしれない。
 不「わかりました。後で結果を連絡します」
 金『それでお願いね。それにしても不思議な話よね?北側のメインルートが突然、土砂崩れを起こした上にマンドラ族に襲われるなんて、変な偶然もあるものね』
 不「金萌姉、もしかして・・・・・・」
 不知火が続きを言おうとした瞬間に連絡が切れた。その時、不知火は確信した。土砂崩れが起きたのも、マンドラ族がワナを張って待ち構えていたのも計画の内だと。事前にここを通る情報が流されており、自分達はここを通るように仕組まれたのだと。金萌姉ならルート変更の権限もある、土砂崩れを起こすなら真土香姉の魔力で十分起こせる。
 一方、大治郎達は有利に事を進めていた。マンドラ族の鞭のようにしなる触手攻撃と精霊術に注意すればさほど警戒する相手ではないようだ。触手を切り落とされた相手は苦悶の表情を浮かべているが、治癒系の精霊術を受ければすぐに回復する便利な体のようだ。手一本、足一本切断されてしまうと元に戻すのが大変な人間の身体とは大違いだ。重そうな身体に見えるが、触手を鉤縄のように使って木の枝にぶら下がったり、複数の触手でスクリーンに出ていた某蜘蛛男のように、振り子移動で素早く移動する。その動きを封じ込めようと大治郎は木に向かって一閃を繰り出した。地上に落ちたマンドラ族の動きは鈍く、ヨチヨチ歩きぐらいの速度であった。
 「止めぬか!」
 突然、戦いの場に大きな声が響き渡る。誰しもがその一喝した声の主の方へ視線を向けると、さらに派手な格好となっているマンドラ族がそこに居たのであった。

続く

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