東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第4章 養老鉄道・その2
カーテン・ザング。そこはサウザントリーフ王国内にある貨物列車や旅客列車が1番多く集まるターミナルがある。そこに到着した貨物列車は、日本国内各地へと運ばれていく。しかし、今日のこのターミナルは物々しい雰囲気に包まれていた。
「警備がやたら厳重だ。まあ、酒々井の防衛部隊が通報したんだろう」
「それで兄さん。どの貨物列車なの?ここからじゃパッと見てもわからないわ」
「もう少しで鴨川の方に向う貨物列車が出るんだ。その貨物列車を探そう。姫は勝浦の街に向ったというからそれに乗れば追う事ができる。東の方に機関車をつけていてエンジンに火がついている貨物列車を探そう。その列車はサウザント・リーフ王国所有の車両だから、日鉄にはあまり影響は無いだろう」
「気づかれてその列車が運転を止めてしまったらどうするの?」
「その時は、列車毎借りればいいだろう。勝浦で乗り捨てだ」
「レンタカーみたいな扱いね。探してみるけど多少のトラブルには目をつぶってね」
そういうと紗江は列車の屋根の上に飛び乗り、辺りを見回した。そんな事をしたらすぐに見つかってしまう。多少のトラブルというが物は言いようである。
「あったわ兄さん。隣の113系の奥に一編成だけ東に機関車をつけている貨物があるわ!」
「それだ。その貨物列車に乗っていくぞ!」
紗江が貨物列車を見つけたと同時に笛がなる。案の定、ターミナルを警備する兵士に見つかってしまったのだ。笛が鳴ったのと同時に地面に降りた紗江は大治郎と一緒に貨物列車へと駆けていった。
「どこだ!?」
「いたぞ!反対側だ!」
「何だ?何だ?」
「HQ!例の2人を発見!王都行きの貨物列車を狙っているようだ!」
『了解!増援を送る、奴らを足止めしろ!』
無線のやり取りが終わると周辺の兵士が集まってくる。列車の影から兵士が精霊銃を構える。
「待て!車両に当たる!銃は使うな!」
別の兵士が叫ぶ。これには深い訳がある。鉄道の車両、すなわち日本鉄道株式会社が所有している車両だが日本鉄道は日本内にある国対して絶大な力を持つ民間企業である。かつてある国の捕り物において日鉄のダイヤを大幅に乱して多大な損害を与えた際、その損害を請求したが支払いを拒否したため、ただちに鉄道員を引き揚げさせ、貨物列車を含めた全ての列車の運行を取りやめてしまったのだ。その結果、物量や人の流れが止まったその国は経済的に大打撃を受け、泣く泣く損害請求金額を支払ったという話がある。特にサウザント・リーフ王国は財政難の状況にあるため、余計な出費を払いたくはないはずだ。しかし、大治郎は的確に精霊銃を兵士に当てている。確実に当てられる自信があるからこそ撃つ事ができるからこそである。列車と列車の幅は戦車などは配置できないため、目的の列車までは妨害も少なく容易に近づき、警笛を鳴らして動き始めた列車に乗り込むことができた。
続く