東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第5章・艶美な妖花・その3
大治郎とチェリー、ソフィアと晴海の組み合わせで車を挟んで左右に展開する。一方、相手側は触手を叩きつけたり、触手から拳銃のように弾を発射して攻撃を繰り出してきた。
不「姉さん!金萌(かなめ)姉さん!聞こえますか!?一大事です!!」
車の中に取り残された不知火は持っていた携帯端末で姉に連絡を入れた。
『どうしたの不知火?その声からするとかなり不味い状況のようね。あなたは道案内もまともにできなくなってしまったの?冗談はさておき、何があったの?』
不「実はマンドラ族と遭遇して戦闘状態に入ってしまうというイレギュラーが発生。現在、連れてきた4人が応戦中です」
金『・・・そう。なら黙って見ていればいいわ』
不「い、いいんですか?マンドラ族は今回の件についてのルールから逸脱した行動をとっています!」
金『そうね。今回の作戦においてマンドラ族はメンバーに1人もいれていないからフラストレーションが高まっていた事はたしかね。その反動で襲い掛かってくる事は十分に考えるわ。けれど、マンドラ族も馬鹿じゃないわ。魔界に連れてきたあの4人だからこその行動だと推測できるわ。もし、マンドラ族の族長が出てきたらあなたでは止められないでしょ?逆にその4人に任せておいたほうがいいわよ』
姉にはっきりといわれて不知火は頭を搔いた。実際、マンドラ族の族長は魔界でも指折りの実力者だ。戦闘になったら金萌姉や真土香姉なら対抗できるが、自分や弟の風舞、妹の阿佐水では歯がたたない所か、下手をすれば捕食されてしまうかもしれない。
不「わかりました。後で結果を連絡します」
金『それでお願いね。それにしても不思議な話よね?北側のメインルートが突然、土砂崩れを起こした上にマンドラ族に襲われるなんて、変な偶然もあるものね』
不「金萌姉、もしかして・・・・・・」
不知火が続きを言おうとした瞬間に連絡が切れた。その時、不知火は確信した。土砂崩れが起きたのも、マンドラ族がワナを張って待ち構えていたのも計画の内だと。事前にここを通る情報が流されており、自分達はここを通るように仕組まれたのだと。金萌姉ならルート変更の権限もある、土砂崩れを起こすなら真土香姉の魔力で十分起こせる。
一方、大治郎達は有利に事を進めていた。マンドラ族の鞭のようにしなる触手攻撃と精霊術に注意すればさほど警戒する相手ではないようだ。触手を切り落とされた相手は苦悶の表情を浮かべているが、治癒系の精霊術を受ければすぐに回復する便利な体のようだ。手一本、足一本切断されてしまうと元に戻すのが大変な人間の身体とは大違いだ。重そうな身体に見えるが、触手を鉤縄のように使って木の枝にぶら下がったり、複数の触手でスクリーンに出ていた某蜘蛛男のように、振り子移動で素早く移動する。その動きを封じ込めようと大治郎は木に向かって一閃を繰り出した。地上に落ちたマンドラ族の動きは鈍く、ヨチヨチ歩きぐらいの速度であった。
「止めぬか!」
突然、戦いの場に大きな声が響き渡る。誰しもがその一喝した声の主の方へ視線を向けると、さらに派手な格好となっているマンドラ族がそこに居たのであった。
続く
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