この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第一章・その2
佐潟港。そこに斉藤達が暮らす事になる鎮守府がある。元々、寂れた小さな漁港であったが、深海棲艦が海で幅を利かせるようになった後、国策で食料自給力向上を掲げたため、農地や漁港の見直しが図られたのであった。実際の軍艦がある鎮守府よりも、艦娘用の鎮守府の方が遥かに省スペースで済むため、漁に出かける漁船を警備する目的も兼ねて、数多くの艦娘用の鎮守府が漁港に設置された。
斉藤提督御一行様が到着し、辺りを見回したが鎮守府らしい建物は見当たらない。
「大淀、自分達の鎮守府は本当にここなんだな?」
「ええ、間違いありません。指定された住所は間違いありません」
おかしな話である。艦娘の鎮守府とはいえどもそれなりの設備を入れる必要があるため、それなりに目立つ建物である。さらに田舎の漁港である。目立つ建物は新たに作られた鎮守府くらいのものである。
「提督。もしかしてアレ・・・・・・でしょうか」
明石が言葉を濁しながら、ある方向を指差す。そこには建物が確かにあった。しかし、異様な雰囲気を放っている。その建物だけ、時代から取り残されたような安普請。所々の窓ガラスは何故か割れており、隣には今にもくずれそうなあばら小屋がある。
「ほ、本当にこの建物が自分達が暮らす事になる鎮守府なのか?」
「て、提督!中を!中を見てみましょう!ここが本当に鎮守府なら我々の設備が運び込まれているはずです!」
大淀が叫びながら、中へ入っていく。彼女もここが自分達の鎮守府だと認めたくないのだろう。そりゃそうだ。誰しもがこんなオンボロな建物がこれから住む所になるとは思いたくはないだろう。中の状況もひどい物だ。ガス、電気、水道が通っているのが奇跡に近い。修繕は必須だ。下手したらリフォームよりも1から作り直した方が安く上がるのではないかと思う程だ。その時、現実は非常である事を突きつけられたかのような悲鳴が中から響いてきた。どうやら、大淀の思いは木っ端微塵に砕けたのであった。悲鳴が聞こえた部屋に行ってみると大淀が隅っこでうなだれていた。斉藤達が来たとわかったのだろうか、黙ってある方向を指さした。そこには艦娘を製造する機械が2台置かれていた。
続く
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