「兄さん!お願い、お金貸して!」
「紗江、また何に使いこんだんだ?いや、むしろ俺からお金を借りる必要はないぐらい持っているだろう?」
「いいじゃない!兄さんからお金を借りたって!1万や10万、すぐに稼げるでしょ!」
「まったく。1,000円で我慢しろよ」
「やったあ、さすが兄さん!」
大治郎から1,000円を受け取った紗江はいずこかへ駆けていった。
(フフフ、気づいていない。感づかれてはいけない)
大治郎は机の引き出しを空ける。
(ここに1,000万円のあたりくじが有る事を!)
※この部分は本編には関係ありません。
東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
【注意】
※この小説は2017年3月現在、製作中のオリジナル同人ゲームの内容をオリジナル小説にした物です。
※本編の内容とほぼ同じになりますが、ゲームでは描かれない部分を追記、補完してあります。
【今回の主人公】
●菊川 大治郎
自然総合研究所(通称:自総研)に所属している。自総研に持ち込まれる様々な依頼を日々解決している。メイン武器は刀と精霊銃。クリーチャー退治はお手の物。とは言うものの、最近は雑用レベルの仕事も来る為、事実上、何でも屋状態になっている。
●菊川 紗江
兄と同じく自総研に所属している。メイン武器は小刀と陰陽符と精霊銃。自総研に持ち込まれる依頼はクリーチャー退治等様々。陰陽術の干渉能力で色々とめちゃくちゃにする事がある。
かつて地球の暦が西暦と呼ばれていた時代に宇宙に放たれた“ボイジャー2号”は数十世紀の歳月をかけて、広大な宇宙ネットワーク文明の調査隊に発見される。その解析結果より地球に広大な宇宙ネットワーク文明の使者が降り立った。その広大な宇宙ネットワークの仲間入りを果たした地球には様々な技術が導入され、地球の人達の生活は飛躍的に向上した。しかし、繁栄と栄華の超高度文明はいつまでも続かなかった。
突如、地球に飛来した巨大隕石により、地球の施設や環境が多く破壊された。それは、広大な宇宙ネットワーク文明から切り離されるには十分だった。地球の再建は放棄されると同時に、地球は再び、広大な宇宙で一人ぼっちになった。
未曾有の災害から生き残った人々はそれぞれ集まり、残された技術を元に再建を試みたが、人の欲望が生み出した救い無き戦争により、残された技術の多くが失われてしまった。残された人々は黄昏の世界で生きる事を余儀なくされた。ある者達は、海の底へ。ある者達は、地の底へ。ある者たちは地上に残った。
そんな黄昏の世界から5000年程度の月日が流れた――
第1章・拐かれし姫
「貴族連合が壊滅した?」
「そうよ兄さん。今朝、局長が言っていたわ。サウザント・リーフ王国のこの組織がなくなったから、しばらくは様子を見ていた方がいいって」
「国の体制が変わるって事だからな。とは言ってもこの国に行くような仕事は入ってか?たしか無かったはずだぞ」
「そのはずよ。ただ、壊滅の仕方が随分と派手だったみたいね。何でも軍の一部が動いて物理的に排除との事よ。家に火をつけられた所もあったそうよ」
「過激だな。そんな事をしたら市民からの支持は得にくいんじゃないか」
「それがね。なんと市民は今回のこの行動に賛同しているのが大多数なのよ」
自然総合研究所の一室で2人は隣国の状況が変わった事について話していた。
自然総合研究所。通称・自総研。大治郎や紗江はここに所属している。仕事の内容といえば、特定自然保護区域の管理、農産物の生産や研究。発見された超高度文明時代の技術が使われている物の管理及び研究等を行っている。たまにクリーチャー退治等の雑用が舞い込んで来たりしているが、二人にとってはそちらの方がメインの業務となってしまっている。
後ほど局長から聞いた話であるが、サウザント・リーフ王国の貴族連合はいわゆる“癌”という存在であった。市民、貴族、王族で構成されていたが、ある時から貴族が王族よりも権力を持ち始め、貴族にとって都合の言いように国を動かしていたのだ。前国王と前女王、そしてもその前の国王達も貴族連合によって暗殺されていた事が現国王によって発表された。今回の騒動で残った貴族達は揃って国外追放になったという。ただ、自総研があるクラル・イースト国側に追放になった人物が入ってきたという事は今の所はいない。
続く
PR