この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第二章・その1
佐潟鎮守府に来てからという物、この鎮守府はありとあらゆる物が荒れ果てており、調理場兼食堂の掃除をしていた潮と磯波であった。15時頃になんとか使えるレベルにまで掃除が終わった所、斉藤提督から声をかけられた。何でも地元の漁港関係者と漁についての打ち合わせを行うのだという。
日本の地理的状況を考えると、国土の大半を山が占めるため人口密集地は海側のほとんどに集約させられる。いくら省スペースで済む艦娘がいる鎮守府といえども、それ単体で新たに造る土地はすでに日本にはほとんどなかった。そこで日本政府は、漁港に併設して建設するという妙案を発案した。また、それは日本の食糧確保のため、艦娘に漁船を警護させるという目的もあった。そう、これから行われるのは地元の漁師との打ち合わせなのだ。
深海棲艦が出没するようになってからは、世界中で漁の最中に深海棲艦に遭遇し、死傷者、行方不明者が続発したため、漁船に軍艦を警護に派遣しなければならず、食料確保と深海棲艦との戦い両方に戦力を割かなければならないという状況に陥っている。日本は艦娘を利用した漁船の警護という形で漁業の安定を図っている。まれに定置網に駆逐イ級等の小型深海棲艦がかかっている場合があるため、近海警備と錬度上昇を兼ねた“迷案”とも言われている。斉藤提督達がいる佐潟港は、ごち網、さし網、まき網、一本釣り漁業が行われている事は事前の地域情報により把握している。
打ち合わせを行う所は鎮守府からかなり近くであった。漁師達が集まる施設のため、漁港から近いのは不思議ではない。すでに中には地元の漁師達が集まっていた。
「失礼します。先日、ここの漁港の鎮守府に着任しました佐潟2174艦隊の斉藤提督です。この町でお世話になります」
挨拶をしながら、斉藤は参加している漁師を見た。若い世代が1人もいない。ほとんどが50代と見られる人間だ。良くて40代は1人くらいか。
「あんた達だったのか。あのオンボロ小屋に来た提督さんというのは」
「はい、その通りです。時にお伺いしますが、我々の鎮守府は元々あった建物を利用した物なのですか?」
「いや、オレっちが見た限りでは最初は立派な建物だったべ。気がついたらオンボロになってたんだべ。あれは悪趣味なイタズラとしか思えんばい。あ、提督さん、あっしがこの漁業組合のまとめ役の鮫島てんだ。まあ、若いもんはいねえが、何とかやってる組合だ」
「後ろの2人が例の艦娘かね?この田舎で若い子を見るのは久しぶりだ」
「岩田、お前の所は孫がいるだろう?」
「何言ってんだ中村。ウチの娘は大阪に嫁いだのはいいものも、てんで帰ってきやしねぇ。盆と年末くらい顔を見せてもいいじゃないか」
そう言いながら漁師同士の愚痴の言い合いが始まった。少子高齢化社会になってから日本各地の労働力に歪が出来始めた。若い世代は待遇が良い都会へ出て行き田舎に戻ってこない。一次産業を始めとするありとあらゆる業種で働き手が不足し、還暦を迎えた人がいつまでも働き続ける時代になってしまった。もちろん人手不足は都会でも起きている。それは壊滅状態に陥った海上自衛隊を再編する際にも影響を及ぼしていた。まあ、日本の自衛隊は日本防衛軍として再編されるわけとなったが。
「提督、そして私達は何をすればいいんですか?」
「一言で言ってしまえば、漁船の警護だ」
艦娘が漁船を警護する理由は、深海棲艦が近くにいないかを見張る事が主な役割である。だが、それだけなら艦娘達が警戒するライン付近で行えばいいのである。しかし、定置網等、網を引き上げる時に深海棲艦の駆逐艦が引っ掛かっている場合があるのだ。引っ掛かった深海棲艦は引き上げられた後、船の上で暴れてその場で砲撃するため船が壊れたり、死傷者が出るのだ。それに未然に防ぐために艦娘が対処する必要があるのだ。
続く
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