この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第一章・その4
風呂場兼入渠ドッグに斉藤が行くと、磯波が床でのびていた。塩素の臭いがほんの少し鼻につくが、その所為でのびているわけではなさそうだ。よく見ると壁や床がかなり綺麗になっている。壊れて使えない2つの入渠ドックもだ。
「うう、提督~、さすがに疲れました。お風呂の掃除がこんなにも体力を使う物だと思いませんでした」
「ずいぶん頑張ったみたいだな。これなら、落ち着いて汗を流せる空間になるな。ところで、新しい艦娘を建造がまもなく終わるが、立ち会わないか?」
「本当ですか?ぜひ行きます!」
疲労しているはずだが、キリッと勢いよく立ち上がった。それだけ楽しみなのだろう。
磯波を連れて工廠に戻ってくると、明石の所に大淀も来ていた。
「機械が無事稼動してくれて良かったです」
「提督、建造が完了しましたよ。誰でしょうか?楽しみですね」
「お友達になれるといいのですが」
3人が思い思いの意見を言う。しかし、このオンボロ鎮守府の様子を見て新たに配属された艦娘は何を思うだろうか。悪夢か、はたまた地獄。もしくは戦況が絶望的であると誤解する確率は高いだろう。ひょっとしたら脱走するかもしれない。明石が一番下の引き戸を引く。その様子は、サスペンスドラマによくある検死室の死体保管の棚から引き出す動作に似ているため、微妙な気分だ。
建造マシーンから出てきた艦娘は磯波と似たような服を着ており、傍らには可愛い顔がプリントされた連装砲が置かれている。
「特型駆逐艦、綾波型の“潮”です。もう、下がってよろしいでしょうか?」
下がる?どこに下がるというのだ?ここは工廠である。潮は周りをキョロキョロと見回すと怪訝な顔つきになった。それもそうだ。窓ガラスが割れており、それをベニヤで応急処置している工廠、そして隣には壊れた艦娘建造機械のあるのだ。
「言いたい事があるようだが、正直に言っていいぞ」
「あ、あの、ここは鎮守府なんでしょうか?」
4人供、首を同時に縦にふる。
「ええ!どうしてこんなにもボロボロなんですか!?空襲にでもあったんですか!?」
「空襲?そんな事が起きるほど戦況は悪化していない。“最初からこの状態”なんだ。日本は今日も平和だ」
提督からの返答に潮は目を丸くした。
「潮さん。これがここの鎮守府の艦隊章よ、後で服につけてくださいね」
大淀が追い討ちをかけるように、艦隊章を渡す。あっけに取られる潮。
「大淀!居住区の準備はできているか?」
「まだ、掃除は終わっておりません!」
「では、磯波と潮を伴って居住区の清掃の続きを行え!執務室の準備はこちらで引き受ける」
「了解しました!」
あっけにとられる潮の手を引っ張って、磯波と供に居住区へと向かっていった。
「すまないが明石、工廠の片付けの続きを頼む」
「お任せください!」
夕方、居住区の方から潮の泣き声と磯波の悲鳴が上がった。どうやら、“あれ”でも出たのだろう。お約束の反応である。
続く
PR