東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第1章・その2
数日後、クラル・イースト国のクラル姫がお忍びで自総研にやってきた。クラル姫は国家元首でもあるが今日は数少ない休日という事で自総研に来たのであった。お忍びという事であり、いつものピンクのドレスと王冠ではなく、半ズボンに黒タイツ等活発な女性をアピールするような服装だ。髪も金髪のストレートではなく、後ろで縛ってポニーテールにしている。腰には護身用の精霊銃だ。
「折角の休日なのに、こんな所に来て良かったのか?しかもお土産も持ってきたというじゃないか。」
「いいのですよ。あなた達にはいつもお世話になっていますから。そのくらいはさせてください」
「お土産を渡して紗江をこの場から離さしたんだ。姫さんの事だ。何か話しておきたい事が有ってここに来たんだろう?」
「話をわかってくれて助かります。サウザント・リーフ王国を知ってますね」
「知ってるも何も隣国の1つじゃないか。鉄道で簡単に行く事ができる。たしか、貴族連合だったがな。その壊滅の影響で経済状態が、かなりまずい状況になっていると聞いている」
「その通りです。サウザント・リーフ王国の疲弊しています。置き土産といった感じでしょうか。この調子では再建には時間がかかることでしょう。その状況を打破したいのか、今度、サウザント・リーフの使者が来る事が決まりました」
「この時期に使者か。他の国に使者を送ったという話は出てないな。そうすると、一番最初に使者が向かうこの国は重要な位置、と言う事だな。そして、この事を話したという事は、サウザント・リーフ王国と一悶着あるかもしれない。もし、あった場合はどうかお願いといった所か」
「やっぱり、ここに来て正解だったわ」
「経済が危ういのに、そういう物騒な事を起こす体力があるとは思えないがな……」
しかし、“現実は小説よりも奇なり”という言葉がある。時に、ありえない事が平然と起きてしまうのであった。
クラル・イースト王国に使者が来てから数週間後、自総研の応接室がなにやら慌しい雰囲気になっている。それもそのはず、クラル・イースト王国の大臣が血相を変えて飛び込んできたのだ。
「つまり、サウザント・リーフ王国に連れて行かれたクラル姫を助け出して欲しいと」
「そうでございます。かねてより、姫様はサウザントリーフ・王国の貴族連合が崩壊してからと言うものの、我が王国とサウザントリーフ・王国の間で何か有った場合、あなた方の力を借りるようにとおっしゃられておりました」
「何かあったらって、今回はあなた達の警備の不備が原因じゃない!?」
大治郎と紗江は怪訝な顔をしている。ようは、サウザント・リーフ王国にクラル姫が連れて行かれてしまったのだ。しかし、1番最初に使者を送り、なおかつ他の国には使者を送っていない状態である中、重要な位置にあるクラル・イーストの国家元首を、あの経済状態が困窮している国が連れていけるのだろうかと2人は考えていた。クラル姫がいる城は、国の中で1番高いランクのセキュリティ体制なのは必然だ。それなのにだ。姫を連れて行った旨を記した置手紙だけを残して城から連れ出せるものなのだろうか。疑問は尽きない。何か裏があると考えるのは当然だろう。
「我が王国は、隣国との戦いは望んでおりません。秘密裏に姫様を奪還及び真相の調査を依頼します」
「念のために聞くが、クラル姫がいなければまずい日が直近であるか?」
「金曜日までに戻ってくればなんとか。明日から3日間はたまたま、公務が入っていない日となっております」
「何か凄く都合がいいわね。まるでこの日を狙っていたみたいじゃない。私達が動くというのも、もしかして計算済みかしらね」
「だと、すると戦闘は避けられそうにないな。ヒトの場合、クリーチャー相手よりもやりにくいな」
「そこは自総研の2人でございますから、全ておまかせします」
「それで、クラル姫はどの方向に行ったかは目撃情報は集めているんだろうな」
「はい。それはもちろん抜かりなく……」
こうして2人はサウザント・リーフ王国に向っていった。
第2章へ続く
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