東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第5章・艶美な妖花・その2
尾張の街から南西方向に1時間半。大治郎達は関と呼ばれる山越えのルートに差し掛かっていた。道はかろうじて舗装はされているが、整備が行き届いていないのか状態が非常に悪い。
ソ「カーブが多い上に激しい揺れ!これじゃ、酷い道と書いての酷道よ!私の国でここまで放置した担当者がいたら、10年ぐらい牢にぶち込むわ。流通を何だと思っているのかしら!」
不「ここは私達が統括している政府から、独立した民族が治めている所なので道路の意味合いがそれぞれ異なるためでしょう」
ソ「独立国家みたいなわけね。それなら、通行許可証とか必要になったり検問所があったりするんじゃないの?」
不「こちらの世界の統治は独自のシステムがありまして、そういうのを作るのは自由となっています。基本的に町に短期滞在したり、通り抜けるだけなら問題にはなりません。ただ、その種族が管理する立ち入り禁止区域にいたりすると排除されますよ。内容は過激なものから様々です」
ソ「ここを治めている独立種族はどんな人達なの?」
不「そうですね。過去の出来事によって他種族に対してとても排他的です。そして魔界の住人だろうが外の人間だろうが関係なく食べてしまう人達です。気分を損ねると大変危険な人達なので、出会ってしまったとしても変に刺激しないようにしてください。火を放つのは持っての他です」
他種族には排他的でさらに魔界の住人でさえも捕食してしまう種族が住む地域であるが、代替の交通ルートと言われるだけはあり、対向車が度々やってくる事から通り抜ける事に関しては問題がないようだ。離合に苦労する所もあったがいつしか対向車は来なくなった。
大「何か妙だな。さっきまで頻繁に来ていた対向車が急にこなくなった」
不「たしかにそうですね。この山脈を超える道路はいくつかありますが、かなり険しい峠道なので、代替ルートとは言えませんね」
鬱蒼と木が生い茂った太陽の光もあまり届かない森の中を進んでいると突然、不知火が急ブレーキをかけて車を止めた。ライトに横倒しになって道路をふさいでいる多くの倒木が映し出された。
大「対向車が来なくなった理由はこれか。これでは引き返して別の道を進むしかないな」
晴「え~、ここまで来て通行止めにぶち当たるなんて今日はなんてついてないのかしら」
その運の無さに追い打ちをかけるように突如木が倒れ、来た道を塞いでしまったのだ。そして、車を取り囲むように何者か達が姿を現した。
不「ああ、あれは!」
プリンセスラインのウエディングドレスをさらに膨らませたような恰好した人物が、車を取り囲むのを見た不知火は悲鳴に近い大声を張り上げた。しかい――
ガチャ
不「菊川さん!何をしているのですか!?こういう場合は車から出ないのがセオリーです!」
大「何言ってんだ。この感じだとそれは逆効果だぞ。どうみても殺気だっているじゃないか」
大治郎がそういうとソフィアと晴海、そしてチェリーが車外に飛び出した!
大「不知火、1つ聞くがこれは予定通りかい?」
不「いいえ!これは完全にイレギュラーです!!」
チェ「対象のスキャン完了。伸縮性がある複数の触手と腹部に空間が確認されます」
ソ「じゃあ、あれは第2の口という訳かしら?ヒトを食べる種族と聞いていたけど、その通りね」
晴「触手に注意すればいいんでしょ?全部、斬り落としてやるわ!」
大「さあ、来るぞ!!」
続く
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