この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第五章・その1
鳥海が目を覚ましてから数日後、鳥海の服と20.3cm連装砲の修理が終わったので、正式に佐潟鎮守府に所属する艦娘として登録された。それまで、鎮守府内を色々と見て回ったのだが、疑問に思うことが多々あった。実際、この鎮守府に初めてきて疑問を抱かない人物はいないだろう。君も来たら顔をしかめる事は間違いない。
まず、艦娘達への娯楽施設がほとんどない事だ。鳥海がおぼろげなく覚えている限りでは、甘味処があった事はたしかなはずだ。そこのアイスはとても美味しく、仕事の後や入渠後の楽しみとして多くの艦娘達が連日、舌鼓をうっていた。だが、佐潟鎮守府にはそんな施設は無く、ボロボロで今にも壊れそうな入渠施設があるだけである。鎮守府の周辺に設置されているのかと思えば、予想以上のド田舎であり、営業しているかは一目ではわからないちっぽけな商店が一軒あるだけであり、コンビニは国道まで出なければならない上に片道30分弱は歩かなければならないといった具合であった。そんな中でここの艦娘達の楽しみは何かと聞いた所、干物を食べる事だという。現に、毎日誰かしらが調理室兼食堂にて魚を捌いて干物を作っている。斉藤がカラカラになるまで干した干物を執務中に齧ったり、休憩時間に七輪を囲んで干物を齧っている。さらには漁船警護中に干物を齧っている場合もあるという。鳥海はこの鎮守府の食料事情の要因を調べた所、鎮守府の資金は運営費及び修繕費に充てられている上に、毎日支給される各資材の供給量も少ないため、艦娘の装備を揃えるのさえ一苦労という状況を認識した。現に、鳥海の部屋は大井と相部屋であり普通とは違う。正確にいえば、駆逐艦寮といった具合に艦種毎に住む部屋が分かれているのが普通なのだ。
「司令官さん。自分なりに思う事があるのですが……」
「思う事?ここを見て思う事は沢山あるだろう?遠慮なく言ってみ」
「はい。ここの鎮守府の生活環境は余りにも低すぎます!人生の80%を損している、そんな感じしかしません!」
「ああ、やっぱり。確かに何かの陰謀かと思うけど、デフォルトでこの状態だ。色々と思う事が他にもあるかもしれないが、今の俺達は“今あるカードで勝負していくしかないんだ”。だが、他の鎮守府の生活環境の違いはたしかに気になるがな」
「他の鎮守府の様子を見れば、いくらか参考になると思います」
鳥海の意見により近日中に近くの鎮守府への視察が行われる事が決まった。なお、ある夜に北上病を発症した寝ぼけた大井に、同じ部屋で生活する事になった鳥海が襲われるという珍事件が発生した。鳥海の発言によると、まるで蛇が這いよるかの如く、腕からまとわりついてきたというのだ。さらに、
「あなたが北上さんじゃないのが悪い!」
という、大井の超理論まで飛び出す始末であった。身の危険を感じた鳥海は別部屋で生活する事を提案、もちろんそれは受理されたが部屋の修繕が必要であった。
続く
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