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東都幻想工房

同人サークル・東都幻想工房の近況等を報告するブログです。 また、二次創作小説等も掲載しています。

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~艦隊これくしょん 佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:その31~【二次創作小説】

この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。

佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第五章・その3

 数日後の昼頃、佐潟鎮守府周辺の天気が怪しくなってきた。どうやら雨雲が発生しているようだ。地球温暖化が話題となって数十年、たしかに日本におけるにわか雨はゲリラ豪雨と呼ばれるまで雨の強さが増していた。
 「これは一雨くるかな?夏というか梅雨もまだなんだがな。もし、ゲリラ豪雨がきたらこの建物のどこかで雨漏りがしそうだな」
 「提督、たしかに雨雲レーダーでは北西の方でかなり強い雨が観測されています。この雲が南東に下がってきた場合、この鎮守府に雨を降らしますね」
 「やっと鳥海の寝床ができたというのに雨漏りしたら適わんな」
 はるか遠くから雷が落ちる音が聞こえてくる。雷が鳴っているならかなり強い雨が降っているのだろう。この雨雲が北に向かって行ってくれる事を斉藤は祈った。しかし、祈りは届かず、雷の音はだんだんと鎮守府に向かって近づいてきた。
 「おい、これは一雨くるかもしれないぞ」
 「閉められる窓等、雨が入りそうな所を閉めてもらうように言ってきますね」
 磯波が執務室からイソイソと出て行った。斉藤が窓から外を見る。どす黒い雲が真っ直ぐに鎮守府に向かってきており、時々黒い雲の中が光っているのが見える。悪い予感は当たる物だ。窓にうちつける風が強くなり窓ガラスをガタガタと揺らす。この間にも雷の音はだんだんと大きくなる。外は夜のように真っ暗になった。深海棲艦が出現した時、まれに暗雲に覆われる時があるが有るらしいがまさにその時のようである。突然、、砲撃を喰らったかのような派手な轟音と共に鎮守府内の灯りが落ちた!
 「停電か!どこか近くに落ちたな!」
 「こちら工廠!停電で機材が使えません!」
 「ちょっとお風呂に入ってら灯りが消えたわよ!」
 「大きな音がして灯りが消えたんですけど、落雷ですよね?」
 鎮守府が停電したらしたで、慌てた顔をした明石とバスタオル姿の大井と仕込み中の潮がなだれ込んで来た。気持ちはわかるが、少し落ち着いてもらいたいものだ。特に潮は干物を作るために魚を捌いているので、エプロンに魚の血がついている。その上、包丁を片手に持っているので暗さと合わせて軽くホラーだ。しかし、停電で何も作業ができないのはたしかである。鳥海も執務室にやってきたが、一連のやりとりにあきれていた。
 しばらくして何やら焦げ臭いが漂ってきたので、鳥海が様子を見に行ったが血相を変えてあわてて戻ってきた。
 「司令官!大変です!火事です!」
 「何だって!?ハッ!そうか落雷か!」
 そう、停電の原因は落雷であったが、この雷はこの鎮守府に落ちたのであった。寄りにも寄って執務室がある建物にだ。
 「総員作業を中止!各自に必要な物を持って外に避難しろ!」
 斉藤が大声で叫ぶ!6人の艦娘慌てて自室に駆け込んで行った。斉藤は消防への連絡を済ませた後、避難の準備を始めた。
 「鳥海さん!提督は!?」
 「まだ外に出てないわ。今の所、磯波さんが最後よ」
 建物がオンボロなため、意外と火の回りが速い上に煙も充満している。既に執務室兼寮のあちこちから煙が噴出してる。
 「あー!!」
 突然、潮が大声をあげる!
 「干物に塗る特製タレの壷を取ってくるのを忘れました!取りに行かないと!!」
 「ダメです潮さん!!調理場があるのは出火した所に近いです!戻るのは危険です!」
 「タレが!私のタレが!干物が!!」
 「干物で命を捨てるような事をしないで下さい!」
 大淀が暴れる潮を羽交い絞めにしておさえつける。どうやら潮の干物中毒レベルはかなり進行しているようだ。
 「あのバカ!何をしているのよ!早く、出てきなさいよ」
 6人の艦娘に1人のコロボックルが近づき何やら呟く。コロボックルの話によれば、執務室の窓から何回か外に荷物が投げられたとの事。その証拠に荷物の方を指差し、コロボックル達がその荷物を運んだと言わんばかりの表情をした。状況から察するに斉藤が荷物を外に放り投げた後、何か別の物を運び出そうとしている可能性が高い。
 「行きます!」
 磯波が煙が漂う鎮守府内へ飛び込む。熱気が漂い始めている鎮守府を駆けぬけ執務室に飛び込む。
 「提督!」
 「おー、磯波か。丁度いい、これを外すのを手伝ってくれ」
 「一体何を!?早くしないと煙をすって倒れてしまいますよ」
 「わかっている。だが、これを放置して出ることは出来ない!これがあれば、この鎮守府が焼け落ちても鎮守府運営はできる!」
 そう言いながら、斉藤はモニターと通信機のケーブル等を外している。斉藤の友人である菊地に通信が繋がれば物資の陳情ができるからだ。
 「よし、外したぞ!磯波、脱出するぞ!」
 鎮守府の入り口から磯波と斉藤がモニターやら通信機の機材をかかえて鎮守府を飛び出すと同時に消防車のサイレンが響いてきた。騒ぎを聞きつけ、周辺の人達も野次馬として集まってきた。干物が焼ける香ばしい匂いが辺りを漂う中、斉藤達は消防隊による消火作業を延々と見る事しかできなかった。結局、佐潟港にやってきた雨雲は阿久根市街にのみ雨を降らし、佐潟港には雷だけを落としてきただけだった。その日、斉藤達は佐潟港近くに集会施設を借り、一晩を過ごした。

続く
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