この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第六章・その2
鎮守府の正面から南西に離れたこの海域において敵主力部隊を見つけ出し、それを撃破するのが今の佐潟鎮守府に与えられた課題だ。倒しても倒しても無尽蔵に現れる深海棲艦は出現する海域によって強さが違う。新米提督は深海棲艦の錬度が低い所から出撃するように命じられ、戦果を挙げれば次の海域に出撃許可が出る形式をとっている。沖縄本島に1番近い奄美大島にいる部隊や首都に近い横須賀に配備されている部隊の精鋭達に比べた佐潟鎮守府の艦娘は錬度も何もかも足りなかった。そのような領域に少しでも近づいておかなければ、いつ起こるかわからない深海棲艦の大進行の時に成す術なくやられてしまうだろう。途中、軽巡ホ級1隻と駆逐ロ級2隻の艦隊と交戦したが、4人は無傷で撃破したがこれがこの海域の主力部隊では無いことは今までの出撃でわかっている。
「主力部隊はもう少し南西かしら?」
「そうですね。以前行った所まで進んでみましょう」
「水上機があれば、索敵ができるのですが・・・・・・」
零式水上偵察機。重巡や一部の軽巡を除いて装備する事ができる索敵用の水上偵察機だ。大井は装備できないが、鳥海は装備可能だ。しかし、佐潟鎮守府において零式水上偵察機は開発されていないため在庫はない。
「たらればの話はやめましょう。私達は今もっているカードで勝負するだけです」
「カードって提督の台詞じゃない。秘書艦をやっていると口調がうつるのかしら?」
敵部隊を撃破した後、大井、磯波、鳥海が現状を確認する。周囲に敵影は確認できない。この付近の海域では艦載機を飛ばしてくる深海棲艦は確認されていないが、不意をつかれては元も子もない。海にいる限り、深海棲艦とはいつでも遭遇するものである。4人はさらに南西へと進んでいった。
「敵艦隊を右舷に確認!」
鳥海が叫ぶ。右側の方角に黒い人影が海の上を移動しているのが見える。影は全部で5つ。
「軽巡1隻に駆逐3隻。もう1隻は何でしょう?この海域で初めてみるタイプですね」
「あれは深海棲艦の雷巡タイプね。魚雷を多方向にばら撒いてくるわよ」
双眼鏡を見ながら潮と大井が相手の艦種を確認する。相手は軽巡ヘ級、雷巡チ級、駆逐ハ級、駆逐ハ級、駆逐ロ級の5隻である事を確認した。進行方向は同じであるため同航線である。お互いに武器を構え、射程圏内に向けて距離を縮める。射程距離で言えば、大井と鳥海。相手はヘ級の砲撃が最初に射程に入る。だが、射程範囲に狙った瞬間にチ級が魚雷を発射した。雷巡の名の通り、結構な量の魚雷をばら撒いた。磯波が叫ぶ。
「敵が魚雷を発射しました」
「落ち着いて。陣形を乱しては相手の思う壺よ。全速力で抜けるわよ」
4人の中で実戦経験が豊富な大井が指示を出す。鳥海はサルベージされた経験で錬度がリセットされてしまったので、実戦経験については大井に劣っている。4人は速力を全開にして魚雷の軌道から外れる。それを見越してかヘ級も砲撃を加える。どうやら魚雷と砲撃の挟み撃ちにしようとしてたようだ。だが、ヘ級の砲撃は潮の近くに大きな水柱を上げて終わった。
「主砲よーく狙って・・・撃てーっ!」
鳥海の20.3cm連装砲と大井の15.5cm三連装砲から砲弾が発射される。反撃だ。狙うのは雷撃が得意なチ級である。
ズガーンッ! ドゴォッ!
鳥海と大井が放った砲弾が共にチ級に命中。防御面が劣る雷巡に重巡の攻撃は非常に重いため、命中すれば大ダメージを与えられる。当たった砲弾が魚雷を誘爆させたか、大爆発を起こしたチ級は派手にぶっ飛んで沈んでいった。
「形を留めているのが不思議です」
潮が状況見て喋ったが、それは深海棲艦故だろう。
続く
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