東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第4章 養老鉄道・その5
「それなら脚の砲台をさっさと破壊するしかないわね。見た感じ、連射は出来ない仕組みのようだから狙う瞬間はそこかしら?砲台系の精霊弾は重いから弾くのは得策じゃないわね」
「狙う箇所は決めたのか?」
「人でいうと膝の部分ね。関節部分は他の部分と違って装甲は薄いはずよ。それに砲台を破壊していくよりかは早いわ。精霊弾の爆風を利用して一気に行くわよ」
屋根の上に立った紗江に向かって精霊弾が放たれる。放たれた砲弾が着弾する刹那、紗江は飛び上がった。砲弾の爆風が紗江を上空へと押し上げる。降り注ぐ落下傘爆弾は大治郎の射撃で破壊されていく。
「はああああああああっ!!」
渾身の一撃が、なめがわの関節部分に叩き込まれる。
ガキンッッ!!
「!!」
関節部分に放った一撃は、硬い金属音が鳴り響く。紗江の刀では切断するにはいたらず、弾かれてしまった。
『ワハハハハハ!!装甲が薄い関節部分を狙ってくる事は想定済みだ!この部分には精霊術でコーティングし、耐久性を上げているのだ』
精霊術には防御力を上げる物が存在している。対象は人でも機械でも構わない。共通している事は一定時間、もしくは攻撃を受け続けていると剥がれてしまう事だ。剥がれてしまったらまたかけ直す必要がある。
「そうか、ならこれならどうだ?」
なめがわの足元に移動していた大治郎が諸手突きで脚に突き刺し、精霊術を発動する。強烈な雷が避雷針代わりにした刀に当たり、脚に強烈な電撃を流れる。脚に設置されていた砲台から煙が上がった。
「やはり、雷属性への耐性はなかったようだな」
「耐性無視の攻撃なら、こちらだって出来るわよ」
紫炎を纏った紗江の刀がもう1つの脚を真横一文字に切り裂く。砲台の動きがピタリと止まりとまり、煙を吐いた。
「種がわかってしまえば、対策はできるの!それにここなら爆弾は落とせないでしょ!」
そう、この多脚戦車の真下はまったくの安全地帯であったのだ。脚を動かそうとしても機関車にしがみついているから身動きがとれないのだ。
続く
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