東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第4章 養老鉄道・その7
「羽を捥がれた蜻蛉みたいだけど、これは何のマネかしら?それとも手も足もでないという達磨の真似かしら?」
『これを見てもそうは言えるかな!?』
何やらまだ、武装が隠されているようで、操縦席のが上に上がっていく。重厚な砲身が姿を現した。
『これがなめがわの必殺兵器!対大型クリーチャー用、エレメンタルブラスターだ!!』
どこかしらパラボラアンテナを髣髴とさせる重厚な砲身の中心に光が集まる。光が最大限に溜まったと思われた瞬間、バンッという乾いた音が響いた。
ピーピーピーピーピーピー!
如何にも警告とわかる音が当たりに響き渡る。大治郎が砲身に徹甲弾を撃ち込んだのだ。
『一体何が起こったんだ!?精霊エネルギーが逆流している!』
チュボーーーーン!!
「わああああああああ!!」
精霊エネルギーが逆流したなめがわは大爆発を起こした。乗っていた月崎は、爆発と共に外に放り出され、ベチッ!という音を立てながら大治郎達の目の前に落ちる。なめがわはポンコツになってしまった。
「あんな物をぶっ放したら、どこかの民家に命中するぞ。もっと使う場所を考えたらどうだ?」
「折角作ったのに試さなくてどうするんだ!?あんた達なら、そこいらにいるクリーチャーを撃つよりも良いデータが取れるじゃないか!」
「私達を実証データ採取に利用しようとしたわけ?それはそれで高くつくわよ!」
紗江が凄みを利かせて迫るが、大治郎に静止される。
「あーあ、なめがわが。開発費1億円以上がパアだ」
「いくら注ぎ込んだかは知らないけど、私達にぶつけたらスクラップにされる事はわかってるでしょ?」
「さてと、この貨物列車が目的地につくまでもう少し時間がある。今回の騒動について知っている事を話してもらおうか」
「やれやれ・・・。降参だ」
月崎はへたり込みながら、両手を上げた。
【登場人物紹介・その3】
・月崎 いすみ(つきざき いすみ)
・性別:女性
・誕生日:10月2日
サウザント・リーフ王国軍の開発部に所属する熱心な研究者。役職は主任。
兵器や武器の開発以外にも、変な物を作ったりもする。その変な物が妙なトラブルを起こす事もしばしば。新米が持っている精霊銃の試作型を作ったのも彼女である。今度は、二足歩行型の戦車を作ろうかと考えている。
財政難の中、必死に集めた開発費で対クリーチャー用万能多脚戦車・なめがわを制作するもデータを採取するため、大治郎達と対峙するがあっけなくポンコツにされてしまう。
このように後方部隊の人物であるが、開発した武器のデータを取るため前線にやってくる事が多い。そのおかげでサウザント・リーフ王国内で1番多くのクリーチャーと戦っているため、通常の実戦経験も豊富。
第5章へ続く
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