この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第五章・その4
翌朝。明るくなった所で今回の被害状況が明らかになった。斉藤の執務室兼艦娘寮は、入り口近くの2階にある執務室と1階にある斉藤の部屋を残して他は焼け落ちる。入渠施設に至っては完全に露天風呂状態になってしまった。ボイラー等もダメージを受けていたが、明石によれば、交換すれば入渠機能だけは再稼動できるらしい。鋼材や弾薬といった資材も火災で失われたあげく、鎮守府全員の空腹を満たしていた干物がほぼ全滅してしまった。幸い、工廠は別の建物であったため工廠内にある機材は全部無事であった。しかし、昨日の火事騒ぎを地元の新聞にすっぱ抜かれてしまった。取材に来た記者はどうもここが鎮守府とは思っていなかったらしく、斉藤達がたまたま火事現場に居合わせたという認識だったため、話のタイトルが“貧乏鎮守府の災難・火災発生”というのだから身も蓋も無い。とりあえず、無事だった工廠の片隅に通信機を移設し、鎮守府の運営を再開する事となった。
数日後、斉藤のもとに菊地から連絡があった。なんと火災保険がおりるらしい。その話を聞いた時、斉藤は耳を疑った。あのオンボロ小屋に火災保険がかけてあったとはとても思えないからだ。だが、保険金の金額はあてにならない。むしろ、どんな仕打ちが待っているか想像をするだけで背筋が凍る。なけなしの燃料を入れて偽装漁船で食料調達に行って来た艦娘達に伝えると、
「保険が降りても、建物はすぐ建つわけないじゃない?むしろ、自分達で組み立てろとか言われるんじゃないの?」
大井から辛辣な言葉が飛び出してきたが、その予感は的中する事になる。数日後、建築資材を載せたトラックが佐潟港にやってきた。斉藤は訳がわからないままそれを受けとるハメになった。
「提督、この建築資材の山は何ですか?」
「磯波言うな。物凄く嫌な予感がしている。とりあえず、同封されていたこの手紙を読むぞ」
“斉藤、済まない。今回の火災保険の件だが、今の自分ではこれが精一杯だった。生活環境を向上させようといい建物が建つよう交渉したのだが、そのような予算は追加で確保できなかった。そこでだ、プレハブという比較的安価な資材を用意した。夏に向けて空調もいくつか詰め込んである。艦娘も一応は軍人だ。プレハブを組み立てるぐらいの技能はあるはずだ。健闘を祈る”
「さすがにあっちもこういった事態は想定していなかったみたいだな。まあ、無理もない。普通なら落雷で一瞬でここまで燃えてしまうのはそうそうないだろうな」
この事を明石に話した所、例のコロボックル達の力を借りれば何とかなりそうという事であったので、焼け残った部分と連結するようにプレハブ小屋を組み立てる事になった。ただ、入渠施設に関しては屋根の部分にあう資材が無かったため、壁で周りを覆う形の露天風呂のような形で修繕される形となった。
第6章へ続く
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