東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第2章・試される大地から:その2
ガキン!!
「!?」
勢いよく突っ込んで来た鹿部の薙ぎ払いは、すり足で後方に移動した大治郎には当たらない・・・はずだった。たしかにそのはずだった。鹿部が足を踏み込んだ位置から滑ってきたのだ。
(相手の速度がありすぎたのか?足元は土だから考えられるが)
だが、その後も何かが変だった。大治郎の攻撃は外れ、鹿部の攻撃は大治郎が毎回防御するという形であった。
「あの女子高生、中々やるじゃない。軍にスカウトしてみようかしら?」
「あなたの所の軍は、自国出身じゃなくても入隊できるの?それは機密情報の観点から大丈夫なの?」
「もちろん、普通はNGよ。まあ、私個人直属の部隊に配属なら別ね。セレスはそうよ、参謀もやらせているけど」
「私兵部隊?女王権限でそんなの作ったの?」
「今はセレスしかいないけどね。人数は数人の小規模にするのよ」
「クリーチャー討伐部隊になるのかしら。ちょっとー、兄さん。差し込まれているわよ。いつものをクリーチャーを叩きのめすいつもの勢いはどこにいったのよー」
戦闘を行っている大治郎を尻目に、雑談を交える紗江とソフィア。時折、戦闘に目を向けて、どことなく投げやりなツッコミを入れている。
「間合いがおかしい。術か何か使っているな?」
「そういうのは見破れるのではなくて!?」
何か使っている。まずはそれを見破らなければならない。そう考え、大治郎はさらに仕掛ける事にした。後の先でいいからまずはどういった物なのか把握する必要がある。鹿部が薙刀を横に払うように振りかぶる。大治郎は踏み込み、刀の頭で脇腹の強打を狙った。その時、身体が何かに引っ張られるような感覚に襲われ、脇腹への強打は失敗に終わる。そして大治郎がいる位置は鹿部の薙刀の刃がくる所である。
ガキンッ!! カシャーン!!
素早く刀で薙刀を受け止め、捌く。
「やはり使っていたな。精霊術とは違う。テレキネシス系の類か」
「テレキネシスとは少し違うわ。私はコレに“アイリス”と名前をつけているわ」
この世界では、精霊術以外にも多くの技が確認されている。ただ、多種多様であるため、明確な分類は出来ないため、専ら特殊能力とまとめられている。なお、精霊術は精霊の力を使役する物として認識されている。
「私のこの力でどこまで通用するか試してみるわ!」
鹿部はそう言うと地上5階程まで軽々と飛び上がり、そのまま、大治郎に向かって薙刀を突き立てる。
「逆井と同じ技かしら?急降下攻撃は威力があるけど軌道が単純よ」
「それにしてもあの跳躍力は見事ね。あそこまで届く人はそういないわ」
その落下軌道先にいる大治郎は、迫りくる鹿部に向かって対空攻撃を仕掛けたが、その瞬間に鹿部が空中でピタリと止まったのであった。
続く