東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第3章・5尾のお巡り:その1
「大丈夫?」
「ええ、何とか……」
紗江が鹿部に飲み物を渡す。鹿部は大治郎に攻撃を受けたお腹を押さえたまま、その場でうずくまっている。
「ちょっと兄さん。いくらなんでもこれはやりすぎよ。相手はいたいけな女子高生よ。もう少し手加減したらどうなのよ。この調子だと2、3日はまともに動けないわよ」
「この前のクラル姫の一件で重傷者を多く出したクセによく言うよ。ソフィア、この企画の管理者側に治癒系の精霊術を扱える人を集めているんだろう?」
「そう聞いているわ。今回の件では重傷者が多数出る事を想定して、各地から臨時で雇ったと聞いたわ。今頃、私達が倒した相手を治療している所でしょう。じきに治療班がここに来るから私達は次の地点に向かいましょう。」
三人は次の目標地点はオータム・リーフ・フィールドに向かっていった。アップフィールド地区の南だ。
「あ~あ。もう少し上手く使えばもっと戦えたのになぁ・・・」
残された鹿部は、お腹を摩りながら呟いた。
オータム・リーフ・フィールド。ここは日本における文化の発祥地として長年親しまれ、家電からキャラクターアイテムや、何に使うかわからない不思議アイテムまで何でも手に入れられる街として、日々賑わっている。自総研でも紗江を筆頭に熱心に通っている人達もいる。だが、今日は違った。3人を迎撃し、賞金を獲得すると思惑を抱く人が各地から参戦し、銃口や刃物をぎらつかせ、怒号が響いていた。その人達もむなしく、大治郎が刀をなぎ払えば戦車の上半分が吹っ飛び、ソフィアの拳で人が地に伏せられ、紗江の凶刃に犠牲となった人の悲鳴が上がる。さらに商店の密集地帯と相成って、外れた戦車砲や大治郎達の攻撃を受けて吹っ飛ばされた先の商店がグッズや食べ物関係無しに周辺に撒き散らす。3人が通った後は、創造の始まりが行われるレベルでごちゃごちゃになっていた。このカオスな状況になった街を3人が南側にあるオータム・リーフ・フィールドの橋まで来た所、5つの尻尾を持った人物が目に入った。
続く
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