東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第1章・その4
「・・・そろそろ、決めにいかないとマズイわね」
「へえ。かなりのダメージを負っているようだが、まだ余裕があるようね」
「サウザント流はそのくらいでは簡単に破られないわよ」
構えから鋭いステップで、三ツ葉山の間合いに踏み込む。ソフィアの拳を掴もうと三ツ葉山の手が伸びる。だが、掴まれる瞬間にソフィアの手が引っ込む。
(フェイント!)
素早く三ツ葉山の横にステップ移動したソフィアが、腋の下に掌低を叩き込む。
「うっ!」
「はああああああっ!!」
怯んだ隙をソフィアは逃さなかった。
ガガガガガガガガッ!! ダダッ! ドゴンッ!!
獅子王烈拳。無数の拳の後に強力な獅咆哮を叩き込む大技である。三ツ葉山はホールの門の横にあるレンガ造りの壁に叩きつけられたうえに、壁を壊して奥へと転がっていった。
「あの時は防御体勢をとったけど、しっかり入ればこれほどの威力なのか」
土煙がもうもうと上がる門を見ながら大治郎が呟く。先の騒動の時、大治郎はソフィアの獅子王烈拳を防御していた覚えがある。そのため、獅子王烈拳をしっかり見たのは今回が初めてとなる。
「アハハハハハ!まいったね、こりゃ!一本取られてしまったよ。だがね、RIKISHIの力っていうのはこんなもんじゃないよ!」
「ゲッ!体力馬鹿なのは格好でわかっていたけど、ここまでくると逆にひくわ」
背中から血を流しているが三ツ葉山は元気であった。ドンッ!と四股を踏むと力を溜め始めた。
「フオオオオオオッ!!」
気合を入れている声が終わると同時に、頭から勢いよく突っ込んで来た。大銀杏スクリューロケットと世間から呼ばれている低空回転頭突きだ。足先か出ている飛行機雲のような物はSUMOUパワーを蒸気のように発散させているとの事だ。
「一発芸はお断りよ!」
ソフィアは、ステップで三ツ葉山の横の位置に移動し、突っ込んで来た三ツ葉山に踵落しを叩き込む。延髄落しとソフィアが使う踵落しにはそう名づけられている。延髄落しを喰らった三ツ葉山は、地面に叩きつけられてしまった。SUMOUルールの決まり手にあわせると、はたきこみもしくは素首落しのどちらかではないだろう。
「まさか、本当にロケットのように飛んでくるとは思わなかったわ」
「どうだ、SUMOUパワーは素晴らしいだろ?精霊術とはまた違った魅力がある。ただ、これらの技は、実際のSUMOUの試合では使えないのが欠点だ。アンタはスジがいい。教えてやろうか?」
「結構です。(今よりも二周りくらい大きくなりそうだし)」
「そうかい?しかし、今回は残念だったな。個人的にはいい感じにいけてたと思ったんだが・・・」
「それは残念ね。サウザント流は力だけで押し切れるほど薄くはないわ。まあ、あなたくらいならカズサには勝てるとは思うわよ」
さりげなく義弟をディスる姉である。
「さて、私に勝ったから残りは5人だね。まあ、その5人も一癖二癖ある連中だ。だが、あんた達なら造作もないだろう?私はその状況をちゃんこでも食べながら、ゆっくり観させてもらうよ」
ボーンカントリーズ地区の次は、アップフィールド地区が目的地となる。ここから北西の位置だが、そこに行くまでに再び、有象無象の集団が待ち構えているのであった。
【登場人物紹介・その1】
・三ツ葉山(ミツバヤマ)
・性別:女性
・誕生日:8月14日
女子相撲界の期待の新星。形式に拘らない独特な動きにより、次々と白星を重ね、関脇に昇進している。新しいSUMOU技の開発も熱心であり、評議部に映像を送って認定してもらった技がいくつかある。興行がないシーズンは修行のため、郊外でクリーチャー退治を行い腕を磨いている。
第二章へ続く
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