東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第2章・試される大地から:その3
ガゴーン!
大治郎の対空攻撃が空を切った後、中空で止まっていた鹿部が勢いよく大治郎に突っ込んできたのだ。衝撃で地面が陥没し、アスファルトの破片が周囲に舞った。大治郎は直撃を避けたが右の二の腕辺りの服がうっすらと赤く染まっている。
「あの子凄いわね。兄さんに傷をつけるなんて。アイリスとか言う技をうまく使っているわ」
「あんな風に間合いを操作されると、私の場合、空振りが多くなるわね」
紗江とソフィアは、路肩に腰かけていつの間にか買ったジュースを飲みながら観戦ムードとなっていた。
バゴン!
鹿部が薙刀を地面に勢いよく突き刺し、地面からアスファルトの破片を飛ばしてくる。厄介なのは、その破片と共にアイリスを使ってスライド移動して攻撃してくることだ。破片を避けようとするならば鹿部の薙刀攻撃が、防御するなら薙刀攻撃も防御しなければ動けない。さらに、各攻撃の後にはアイリスの移動能力でその場から移動してしまうのだ。
「ディレイ!」
大治郎が時属性の精霊術を叫ぶ。ディレイの効果は対象の移動速度や詠唱時間を遅くする効果がある。時属性の精霊術は強力だが扱いが難しい部類に入る。ディレイの効果を受けた鹿部の動きが遅くなっているのがわかる。それを見て一気に距離を詰めて攻撃に移る。
「さあ、さっきのように動けるか!?」
鹿部の薙刀が自分の所に来る所まで移動し、鹿部の攻撃を防御する。鹿部はまたヒットアンドアウェイを行うが移動後のアイリスの動きが遅くなっている。
「閃翔断空破!!」
水平回転斬りで自身へ引き寄せる風を起こし、鋭い踏み込みと同時に回転斬り上げで相手を吹き飛ばす剣技だ。動きが遅くなっているアイリスの移動速度では、風の吸い込み力からは逃れられず、薙刀で防御するが、弾かれ無防備になった所に胴への一撃を叩き込まれて、その場に崩れ落ちた。
【登場人物紹介・その2】
・氏名:鹿部 真由美(シカベ マユミ)
・性別:女性
・誕生日:6月10日
・武器:薙刀
・主な技:飛岩陣、逍遥、烈風牙、等
・特殊能力:アイリス(移動系特殊能力)
・職業:高等教育学校・1年生(18歳)
オータム・リーフ・フィールド近くの高等教育学校に通う少女。北の大地出身。
12歳の時に事故に巻き込まれ、両親と死別。自身も右目を喪失し、2年の間昏睡状態になっていたとの事。そのため、高等教育学校1年生は基本16歳が多いが彼女は18歳。
また、後遺症により筋肉のリミッターが弱くなっており、常人よりも力を強く出す事ができる。
特殊能力であるアイリスは、人や物を移動させる特殊能力である。本人はフックで引っ掛けて移動させる感じであるとの事。
第3章へ続く
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