東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第3章・5尾のお巡り:その5
不知火は自身の引き千切られた部分を見てみたが、至極色のオーラが傷口にまとわりついているのがわかる。しかも、痛みはないのだ。
「妖獣の類はそこらのヒトよりも身体が頑丈と聞いていたけど、そんな事はなかったわね。トイレットペーパーのように簡単に契れたわ。返して欲しい?」
「これじゃあ、どちらが悪役かわからないな。不知火と言ったな。正直に言って返して貰った方がいい。妖獣には四肢が切断されても自然治癒されるらしいが、今の紗江に手を粉砕されてしまうと、治癒能力も消されるだろう」
「フフフ、当たり。兄さんの言うとおりよ。このまま、グシャ!と潰せば、あなたの左手は二度と、元に戻らない。まあ、今回は特別サービスで返してあげるわ。向きが正しい所でカチッと嵌るわよ」
紗江はそう言って不知火に腕を投げ返す。不知火は紗江が言っている事に対して不信感を抱いていたが、きっちりと腕が嵌り、以前のように動かせるようになった事で安心はしたようである。
「どうする?まだ続きをやる?」
「いくら陰陽術の脅威を知ったとは言え、退くわけにはいかない!」
「やれやれ、頭が固いのも考え物ね。まあ、いいわ」
紗江がもう1つ小刀を取り出し、両方の小刀を逆手で構える。
「あなたのように中途半端な強さの妖獣の類は、私の相手じゃないのよ」
至極色のオーラを纏いながら、不知火と交錯する。不知火の十手をいとも簡単に捌いた瞬間、不知火の全身から鮮血が噴出した。力が抜けたようにその場にぐったりと崩れ落ちた。
「少し手加減してあげたから、普通の人間よりは身体は頑丈だから、少しすれば動けるようになるでしょう」
「これで手加減したのか?」
「ええ、このくらいね」
紗江が人差し指と親指にほん少しだけ隙間がある。本当に手加減したかは怪しいものだ。
【登場人物紹介・その3】
・氏名:近江 不知火(オウミ シラヌイ)
・性別:男性
・誕生日:11月11日
・武器:十手
・主な技:旋風打、サマーソルト、スピンエッジ、フレイムウェイブ等
・職業:魔界治安警察官
五つの尻尾を持つ妖狐。その中でも火を得意とする火狐である。そのため、黄色ではなく朱色っぽい色の毛が特徴。超高度文明崩壊と共に姿を消したとされる種族の一つでであり、見かけるのは非常に珍しい。腰に忍ばせている十手は、魔界の治安を維持する警察組織に所属している証との事。5人姉弟の3番目で姉が2人、弟が1人、妹が1人いる。
今回の騒動に参加した理由はわからないが、紗江の事を非常に警戒している。紗江のあずかり知らない所で何か揉め事を起こし、その因縁と思われる。
第4章へ続く
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