東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第4章・火を吹く人:その1
「さてと」
倒れこんでいる不知火に蹴りを入れる。呻き声をあげ、不知火が目を覚ます。
「少し気が変わったわ。アンタが私に色々と言いたい事がある様だけど、私はそれを覚えていない。いや、その表現は違うわね。正確には欠落しているというのが正しいわね。簡単に教えてくれないかしら?心当たりはあるといえばあるけどね」
しゃがみこんで不知火を見る紗江と、うずくまりながら紗江を見上げる不知火。沈黙が場を支配した。
「そう。なら、いいわ。大体わかったわ」
沈黙を破ったのは紗江であった。不知火は一言も発しなかった。それでも紗江は何かを理解したようだ。
「話題を変えましょう。あなた達“魔界”の住人達は、普段から私達の身近にいるものなの?5,000年程前にこの世界から姿を消した“妖の人々”は」
「!!。“魔界”・・・だと。その呼び方はこっちでは知られていないはず!」
「ええ。私も今、知ったのよ。陰陽術であなたの記憶にちょっと触れてね」
「ああそうだ。魔界の住人の大半は姿を変えて来ている。その姿は見分けがつかない。もし、あからさまに魔界の住人が異変を起こすような時は、魔界内でのガス抜きか、こちらで大きな異変が起きる警告のどちらかだ。いいか忘れるな。私達はいつでもお前を見ている。妙な気を起こすなよ」
「妙な気は起こさないわよ。少しだけ魔界観光に行ってみたいけどね」
そう言うと、紗江はスタスタと2人の元へ戻っていった。
(本当にあの時、魔界に来た人物と同一か?それともあれが陰陽術の影響なのか?聞いた話の印象とは全く違うが。まあ、今回はこれで良いんだろう)
「何の話をしてたんだ?」
「ちょっとした世間話よ。それより次はシルバーストリートを経由してシーサイドガーデンが目的地なのよね。早く行きましょう」
シルバーストリートへ向かった一行であったが、相手に支給された物が爆発物を中心とした物騒な武器であった。戦車もそうだが、一般市民が次々と爆弾やロケットランチャーを撃ち込んできたのだ。
(本当にここで戦っていいのかしら?)
ソフィアの不安は的中し、シルバーストリートの中心にあるシンボルともいえる時計塔が半壊するという事態となった。
続く
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