東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第3章・5尾のお巡り:その3
たとえ記憶に無くても、人は無意識の内にヘイトを自身に集めてしまう事が多々ある。どちらにせよ、不知火にとっては紗江が、因縁の相手であることは違いない。不知火が纏う炎と紗江が纏う至極色のオーラが交錯する。不知火が十手を振るう毎に炎が舞うため、周辺の温度が上昇している。
「暑いわー。この真夏の中なのによくやるわね。でも、紗江は平気な顔をしているわ。なんで?」
「至極色もしくは紫炎のオーラが見えるだろう?あれは陰陽術の力を使役している証だ。力を強く出す程、色が黒に近くなっていく。陰陽術の干渉効果で、熱によるダメージを無効化しているんだ」
「ソフィアから聞いたけど、制御は難しいけどとても便利なんでしょう?」
「便利といえば便利だ。制御さえ出来ていればの話だが」
紗江が使役する陰陽術は、ありとあらゆる事象に干渉する事が可能である。使役している力の強さによってオーラの色が変わる。力の強さによって紫色から黒に近づいていく。はっきりわかっている事は日の光すら通さない程、オーラが黒く染まっていたらそれは暴走状態に陥っている状態である。かつて紗江は暴走状態に何度か陥り、生命の危機に晒されている。
「私に勝ちたい?いくら猛ったとしても、あなたの炎は私には届かないわ」
「私の炎が侵食されていく!?」
不知火の炎を飲み込むように、紗江のオーラが広がっていく。たまらず、距離をとる不知火に不適な笑みを紗江は浮かべた。
「逃げてしまっては私には勝てないわよ、こっちに来ないとね。だけど、深淵に触れる度胸があなたにあるかしら!」
至極色のオーラを炎のように揺らしながら、獲物を見つめる目で不知火を視界に納めた。
続く
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