東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第4章・火を吹く人:その4
「奇妙な動きといい、変な武器を出したりするわね。どこにしまっているのかしら?」
一ノ橋と対戦中のソフィアは、いくつかの疑問を抱いた。KABUKIといい、SUMOUといい、普通の武術とは随分と違う部分がある事がわかった。目の前にいる一ノ橋の挙動だが、火を吹くだけでも異質だが、重力の影響を無視したかのようなふわりとした跳躍。どこにしまっているのかわからない大きな下駄を取り出して盾として使い出す。水が飛び出してくる不思議な扇子をブーメランのように投げてくる。さらには、どこからか三味線や小鼓、“ヨォ~”という掛け声のような物が、聞こえているような気がしている。
「どこにしまっているかって?それは企業秘密さ」
(案外、2人が持っている物質圧縮ポーチみたいな物をもっているのかしらね)
「それよりも、火はそろそろ飽きたんじゃないかしら?」
突如、放たれた紫色の霧を吸い込んでしまったソフィアは、激しく咳き込む。それと同時に身体全体が熱くなり、口腔に鉄の味が広がった。
「毒を浴びたな」
大治郎がポツリと呟く。ソフィアは思いっきり吸い込んでしまったようで胸を抑えて激しく咳き込み続けている。
「どうかしら、特製ポイズンブレスのお味は?私が吹けるのは火だけじゃないのよ」
「たしかにそれには驚いたわ。ただ、毒を消すのは簡単よ」
咳き込みが落ち着いたソフィアが膝をつきながら、なにやらぶつくさと呟いた後、淡い光がソフィアを包んだ。
「セレスから治癒術を教えてもらっててよかったわ」
「治癒術か。それを覚えているとは知らなかったな」
一ノ橋は悔しそうに呟いた。精霊術には怪我を治したり、解毒を行ったりする治癒術が存在するが、どれも扱いが難しいため、しっかりとした効果を得るには精霊術に対するそれなりの熟練が必要となる。ただ、サウザント・リーフ王国では治癒術を利用した病院が多数存在する事により、治癒術の指導を行う精霊術師が多く在籍している。そのような状況になった背景には複雑な事情があるが・・・。
続く
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