この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。
佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第9章・その2
作業が一段落した昼過ぎであるが、何やら漁港側が騒がしい。様子を見に行った磯波が慌てて戻ってくる。
「提督!大変です!沖に仕掛けていた定置網に女性がかかっていたと!」
その事を聞いた全員は“何だって!!”という表情を浮かべた。昨今、客船や貨物船が深海棲艦に襲われる事は珍しいことではなくなった。いくら軍艦や艦娘が護衛をしていても不幸にも沈んでしまう船は出てしまっている。その定置網に引っ掛かった女性もその不幸な犠牲者であろう。
「仕方ない。警察やらが到着するまで、我々が面倒を見ておくか。一応、鎮守府近辺の事だから無関心ではあってはならないだろう。大淀、すまないが一緒に来てくれないか?」
もっともらしい事を言っているが、作業から離れたい口実かもしれない。
「ああ、提督さんか。難儀なこったべ。親から漁業を引き継いでこれまでやっていたが、こんな事は始めてだ。女の子が引っかかっているときは吃驚しただた」
「そんな事、そう簡単には起こりませんからね。今の時代、深海棲艦に襲われて沈んだ船の乗組員は死体すら見つかりませんからね。で、その幸運な仏さんはどこですか?」
「ああ、あっちだべ」
鮫島さんが指差した方角に、布に包まれた物が見える。
「済まないがお顔を拝見させていただきますよ」
顔にかかっている布を取ると、仏さんの顔が現れる。見た所女性の顔が顔は綺麗でまったく傷跡がない。
「何か妙ですね。溺れたという割には、外傷も特にない上に全然身体がふやけたりしていませんね。・・・あれ?角膜が濁っていない」
実況検分は警察の仕事だが何かしら違和感を感じ取ったのか大淀が何やら身体を調べ始める。普通、水死体は死後3日程で角膜が濁り始める。角膜が濁っていないのであれば、溺死してから3日は経っていない事となる。毎朝届く、通信文書には沈んだ船の情報も掲載されているがここ5日間程の周辺で民間船が沈んだという情報は入っていなかった。この溺死体は何かおかしい。どこから流れてきたんだ。そのような疑問が浮かんだ。
「提督。私はこの人が死体とは思えません。鎮守府の入渠施設に運んでください」
「入渠!?ちょっと待て。もしや艦娘だというのか?」
「はい。このまま警察に引き取られたしても、身元不明として扱われると思われます」
「なんだべ?この子は生きているんだべか?」
「人間でいう脈は感じられませんでした。しかし、私達艦娘のメカニズムは私達にもわかりませんが、普通の人間とは違うと思います」
「・・・わかった。実況検分に来た警察には私が説明しよう。大井と鳥海も呼んで、運んで行きなさい」
「それと提督。高速修復材の使用許可をお願いします。私の読みが正しい場合、これを使用しないと効果が現れないと推測されます」
高速修復材。入渠した艦娘をあっという間に回復させるアイテムだ。効能がかなり強いアイテムのため、中々の価値があり日々の補給では支給されない。佐潟鎮守府には3つしか置いていない。それを使おうというのだ。
「いいだろう。何が起こるかわからない。物を持ち込んで構わないから交代で24時間見張るんだ。それが条件だ」
「ありがとうございます、提督。状況が判別するまで監視を行います。では早速、処置を行います」
続く