この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第9章・その4
執務室に駆け込んできた大井と潮からの説明により、定置網に引っ掛かっていた女性は意識を取り戻した事を知った斉藤達は大淀に女性の身元をヒアリングするように命じた。大淀が仮説していた艦娘で有る事はこれで確定した。普通の人間ならばとっくに水死体になっているはずだ。さらに驚いたのが、彼女は正規空母の瑞鶴だというのだ。航空戦力を望んでいた斉藤達にとっては願ったり叶ったりであるが、
「話が上手くできすぎている。オンボロ鎮守府に配属された不運からの巡り巡っての幸運か?それとも何かの罠か?」
と斉藤は怪しむ始末。念のため、熊本の菊地提督に瑞鶴を最近、喪失した鎮守府がないか確認をしてもらったが、該当する鎮守府は見つからなかった。そのため、佐潟鎮守府に瑞鶴が配属される事となった。
「本当にやられる前の事は覚えていないのかい?」
「はい。気がついたらここに」
「そうか仕方ない。覚えていない事を聞いても仕方ない。今、君の服や装備は陳情しておいた。数日中に届くはずだ。それまで、周辺施設の場所を覚えておくと良いだろう。コンビニと駅の位置を覚えておけばこの田舎では十分だ」
「提督さん。気になることがあるんですが、何故、ここの鎮守府はボロボロなんですか?」
「最初に自分達が配属された時点からここはオンボロだ。しかもこの間は落雷による火災が発生してこことこの下を残して焼け落ちてしまった。プレハブ部分が混在している謎建築になっているのはその所為だ」
「ええ・・・嘘・・・」
「嘘ではない。さらにこの鎮守府だけなのかどうかはわからないが、戦況が悪化していないのにも関わらず、陳情した物資が遅配される事もしょっちゅうだ」
それを聞いて瑞鶴はこめかみを押さえた。まさか、九死に一生得たといっても過言ではなかった状況であったが、流れ着いたのはまさかの干物の臭いが染み付いているオンボロ鎮守府であった。自分の格好は、Tシャツと長ズボンのジャージ姿だ。彼女が佐潟鎮守府・6番目の艦娘として活動できるのはもう少し先であった。
「みなさ~ん。食事の用意が出来ましたよ。今日は久しぶりのお米がありますよ~」
「お米といってもお赤飯ですけどね」
久しぶりのお米と聞いて、瑞鶴はゾッとした。ここは普通の鎮守府ではない。何もかも極限の状態にあるかもしれないと。これからの期待と不安を抱えながら瑞鶴は食堂に向かっていった。
オンボロ鎮守府・終わり
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