東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第8章 VS お姉ちゃん・その2
「準備だけは入念にしてあるようだな」
サウザントリーフ城に再び訪れた大治郎と紗江は、城内の入り口佇んでいた。この間とうって変わって城内はガランとしていた。色々置いてあった展示物等は全部どこかに片付けられてしまったようだ。これでは、上下左右遮蔽物になる物がないため、集中砲火を浴びる事は確実である。さらに、ご丁寧に2階部分からは大勢の兵士が、正面には印旛地区で戦った逆井と酒々井街道で戦った新米が構えている。攻めてこないのは、城内に2人が1歩でも足を踏み入れた時に戦闘を開始するように指示が出されているのだろう。考えてみれば、最寄の駅を通りがかった時に、ご丁寧にサウザント・リーフの兵士がここまで案内してくれた時点で疑うべきだった。明らかに別の意味で歓迎されている。
「・・・・・・いっその事、踵を返して帰るか」
「そうね。ここから請求書だけを投げ入れて帰ろうかしら。請求書のコピーをカズサに渡せば済むし」
「ちょっとそれだと私達が困るのよ!いや、このまま戦闘するのも嫌だけど!」
「一応、仕事ですからね。このまま戦っても私達が勝てる確率があるんですかね?」
「そうね。私達に手紙を寄越してきた“ソフィア”という人物にいい様に使われているのも癪だわ」
事実、ここにいる全員がソフィアという人物に振り回されているのだ。ただ、ここで踵を返して帰ってしまうと、この分の依頼料(2人はそう解釈している)を減額しなければならなくなる。さて、どうするか。
「ねえ、兄さん。このまま帰るのも戦うのも癪だわ。例の方法をとろうと思うんだけどどう?」
「例の方法?ああ、あれか。いっその事やってみる・・・か!」
バンッ!
“か!”という言葉と共に、紗江と大治郎が精霊銃を撃つ。その弾は新米にHITする事態が発生した。ゲームで例えるなら、画面に半分だけ映っている相手に撃つと同じ事である。戦闘開始の合図は、2人の騙まし討ちで始まったのであった。
続く
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