東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第8章 VS お姉ちゃん・その5
ブンッ!
ソフィアの素早い蹴りが空を切る。格闘術の確かな物であった。先の騒動の時に戦ったカズサよりも行動の速さ、技のキレ等が上である。さらに、2人同時に来ても構わないとソフィアが言っていたがそのくらいの自信はあるのだろう。しかし、それでは簡単に終わってしまうため、大治郎達2人同時の連携攻撃は使用せず、交互に攻撃を行うように動いている。ソフィアの動きは刀と小刀、それぞれ間合いが違う武器に上手く対応し、回避や攻撃のタイミングを的確に把握している。
「素早い動きだな」
振り下ろした刀を白刃取りしたソフィアにポツリと大治郎がつぶやく。
「当たり前よ。私はカズサとは違うわ。戦い方のスタイルも実力もね。ハッ!」
掛け声と共に刀を捌いた後、距離を取る。たしかにソフィアの言っている事は本当だ。カズサは防御を中心とした磐石な戦闘スタイルに対し、ソフィアは素早い動きからなる回避が中心である上に、攻撃の手数も多いスピードスタイルである。さらにいくつかの技はカズサよりも攻撃動作が変化しており、カズサが踏み込みからの正拳突きに対し、ソフィアは踏み込みからの炎を纏ったアッパーを繰り出してくる。
「カズサが扱う格闘術は私と同じで、防御の型を修めたといえども皆伝に達していない未完の武術。私が扱っているのは既に皆伝に達した相伝の格闘術よ。私がカズサと手合わせするなら一方的にボコボコよ」
「その様子だと弟さんは、王様の仕事で忙しくて訓練の時間があまり取れていなかったようね」
「当たり。正統な血筋を持つカズサは、帝王学とか色々やらされていたからね。政治や経済学は私より上だから、そちら全般は任せているわ。私がやる事は別の形でこの国を発展させる事に力を添える事よ。少し前にぶっ潰した貴族連合のような腐敗の温床が出ないようにとかね」
以前に局長が言っていたサウザント・リーフ王国に存在していた貴族連合を潰したのはソフィアだったのだ。潰した後の貴族の処遇を伝聞で聴く限りでは、かなり酷い仕打ちを行った模様だが、国民からの指示を得ている事から、彼女は抑圧されていた国民を解放する救世主として映ったのは間違いない。
続く
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