東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第8章 VS お姉ちゃん・その3
「2階!なにやっているの!しっかり援護しなさい!」
逆井が声を張り上げる!新米への不意打ちで始まった戦闘は、自総研の2人に有利働いていた。広間に置かれていた物を片付けた状態でも2人にはあまり関係ないようだ。
「ほらほら、どうしたの?距離をとらないとその銃は使えないのかしら?」
先程から、紗江は新米を追い回している。至近距離で撃っても、悉く避けられ紗江に反撃を喰らうのであれば逃げるしかないだろう。一方、逆井の方は大治郎と正面から対峙し、鍔迫り合いを演じている。大治郎の位置が壁側にいるため、真上の2階部分から援護は出来ない上に、反対側の2階部分は逆井を挟む形となっているので撃つ事が出来ない。
「さてどうする?このままでは埒があかないぞ」
「ふんっ!」
鍔迫り合いの状況だったが、逆井が押し返すように距離を離す。槍を持ち直し再び構え、突撃をしようという動きではなく、バックステップを行いさらに距離をとると同時に援護射撃が行われる。
「同じ手はしないわよ!」
そういうと後腰につけていた爆弾を一斉に投げつける。
ドゴォォォォォーン!!
対大型クリーチャー用の精霊爆弾を複数一度に投げつけたため、爆音と爆風がいつも以上に大きく広がっている。地響きと共に、城のいくつか窓ガラスが割れた。
『た、隊長・・・。本当にここまでやってもよかったのですか?』
「あの“影姫”様が使えと言ったのだから使ったまでよ。上官の許可が出ているなら責任は上が取るものよ」
もくもくと上がる煙がはれると同時に大治郎の姿が現れる。しかし、大治郎には全くといってダメージは通っていないようで、服の何箇所が擦り切れるくらいであった。あの、対大型クリーチャー用の精霊爆弾を使ったのにだ。
(無茶苦茶よ。どうやれば、ダメージを与える事ができるのかしら?クリーチャーばかり相手しているだけじゃ、ダメって事?)
いつの間にか新米の方が静かになっいたのでちらっと見てみると、腕を極められ、喉元に刀を突きつけられ、紗江から“いつでも首を搔ききれるけど、どうする?”という視線が逆井に向けられている。
「た、助けてください・・・」
「情けない声出しているんじゃないわよ!」
『隊長、これでは援護射撃もできません』
溜息と共に、がっくりと肩を落とした逆井は叫んだ。
「止めよ止め!これ以上はお金と時間と兵の労力の無駄使いだわ!ソフィア様の所に連れて行ってあげるから、刀をしまってくれない?あなた達は、ここの現状復帰!いいわね!」
逆井の攻撃中止により、1階の戦闘は終了した。
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