東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第7章 いわれなき大騒動・その5
「そろそろ、決着をつけるか。もうすぐ、夜になるからな。その前に済ませたいものだ」
「では行くぞ!ガイアミサイル!」
上空から無数の鋭角な結晶が大治郎を狙って降り注ぐ。しかし、この精霊術は対象がいた地点に狙って降るという特性があるため、どんなに発射数が多くても対象が動いてしまえば、簡単に外れてしまう。自機狙い弾といえば説明しやすいだろうか。
「アクアレイザー!!」
カズサは丁寧に精霊術の名前を告げてくれるので解説がしやすい。カズサを中心として3方向に水塊が発射される。これもガイヤミサイルと同様、相手のいる位置を狙って発射されるタイプだ。どれも地属性と水属性のポピュラーな精霊術だ。
「攻撃の種類が単調。それでは誰も当たってくれないぞ」
いくら熟練度が上がって、同一発射数が増えても何の工夫もなく自機狙い系の攻撃をしてもまず当たらない。自機狙い系の攻撃は、他の攻撃と連携させた方が当てやすい。何もせず当たってくれるのは、動きが鈍い相手もしくはクリーチャー位のものである。
「ならば、これならどうだ!?」
上空から無数の木の葉が降り注く。それは発生した風に吹かれ、大治郎に迫る。木属性と風属性の複合精霊術であることは確かであるが、独自にあみ出した物のようだ。振り払う火の粉をはらうように木の葉を弾く。ただ数が多いため、どうしても隙が生まれてしまう。
「フンッ!」
刀で木の葉をはじいて時に先ほどの正拳突きを大治郎にあてる。木の葉を刀で弾いているため、左手で防ぐのが精一杯であった。直撃ではないがダメージを受けたのは確かだ。
「おお、一発当てたぞ!」
「一発じゃだめよ。ここで手を止めたら手痛い反撃を喰らうわよ。相手は百戦錬磨以上の自総研。クリティカルなんてもらったら一撃でやられる事は確実よ」
いつの間にか、傘をさして風に舞う葉を防いでいるセレス達が感想をこぼす。その間も木の葉は降り続けている。
「兄さん、この精霊術はフィールドに影響を与えるタイプね。術者が止めるか、あるいは倒さない限り止る事はないわ。受けるダメージは微々たるものだから、あまり気にしなくてもいいんじゃないかしら?」
「そうかそれなら、早く止めるとするか。掃除も大変だろうし」
精霊術なので、止めたりすれば木の葉は消える。
「そろそろ終わりにするか。来い。最大の技でかかってきな」
木の葉が舞う中、それをものともせず刀を構える。まさに威風堂々。
「いいだろう!私の中の全力を受け止められるか!!」
勢いよく踏み込んだカズサであったが、次の瞬間、玉座に向けて吹っ飛んでいった。
続く
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