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東都幻想工房

同人サークル・東都幻想工房の近況等を報告するブログです。 また、二次創作小説等も掲載しています。

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東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】第4章・その4

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第4章 養老鉄道・その4

 貨物列車上に展開している兵士達を蹴散らして、大治郎達は先頭の機関車までやってきた。別にこの貨物列車をジャックしようと思っているわけではない。運転手には終点まで運転してもらえばいいのである。それに非戦闘員だ。貨物列車がビックフィールドタウンに入った瞬間、ヘリコプターの音と共に不恰好なロボットが落ちてきた。
 「とんでもない物が落ちてきたな」
 落ちてきたロボットはそのまま貨物列車の側面をガッチリとホールドしている。
 『見つけたわよ!あなた達ね!無頼な無賃乗車をしてるのは!?』
 「無賃乗車とは酷い言い草ね。こちらが乗り込んでくる事を想定してような兵士の配置だったじゃない。それに戦車のオマケ付よ」
 「それに乗車の仕方はそちらの方がかなりダイナミックだぞ。俺達には真似できないな」
 実際、空から降りてきたの関わらず、この不恰好なロボットは機関車をガッチリとホールドしてしがみついている。
 「で?このへんちくりんなロボットで乗り込んできて一体何がしたいのかしら?」
 『へんちくりんなロボットではない!少ない予算を必死に集めやっとの事で完成した多脚歩行戦車“なめがわ”だ』
 不恰好なロボットに取り付けられたスピーカーから、街宣車の如くけたたましい声が響く。多脚歩行戦車と聞いて二人はこの不恰好なロボットの足に視線を送る。よく観ると脚の部分に砲台やらミサイルと思われるの発射装置がふんだんに取り付けられている。胴体の部分には下部にハッチらしき物が見える。おそらくそこにも武器が仕込まれているだろう。
 『逆井や新米とは違う。この私・月崎が開発した“なめがわ”の実戦データを取るには申し分ないわね。タダで降りる事は叶わないわよ!』
 スピーカーから自信に満ち溢れた声がした後、武器のシステムを起動したのか、砲台の砲身がこちらを向き、発射装置の蓋が開くのが見える。機関車の上という狭い足場では大きく動く事はできない。
ピィーーーッ!ピィーーッ!
 突然、機関車が警笛を鳴らす。実はこの機関車、車両の真ん中に運転席があるのだが、その構造から真ん中の部分だけ出っ張っているのだ。二人はその出っ張り部分を塹壕のように身を隠すように潜り込んだのだ。突然、運転席の視界を塞がれたので運転手がそれで驚いたのだ。ただでさえ屋根の上で何かが起こっているのに確認ができないのだから。
 「いーい!?邪魔をしたら、刀をブッ指して、あなたと運転席を固定するわよ!わかった!!?」
 紗江が運転手を睨みつけながら凄みを利かせて叫ぶ。こういう時の紗江は容赦がない。邪魔をしたら本当にやりかねない。ワンテンポ遅れて放たれた精霊弾が頭を上を通過していく。
 『む!運転席の屋根を遮蔽に利用したか!?』
 (ただし、それは想定済みだ)
 月崎はなめがわの運転席にある黄色のボタンを押す。
シュパパパパパパ
 発射装置からミサイルと思しき物が上空へ発射される。しかし、それはミサイルではなくパラシュートをつけた小型落下傘爆弾であった。
 「ちょっとちょっと兄さん。何とかしてよ。このままだと当たるわよ」
 紗江に言われる前に、大治郎は仰向けになって精霊銃を爆弾に向けて撃ちまくっている。大治郎や紗江以外の所の爆弾は破壊していないため、機関車や線路わきに平気に当たって爆発している。
 『ハッハッハッ。どうかな、精霊爆弾は?弾薬には困らないからガシガシ落としてやるぞ~』
 「そんな事して機関車が壊れてもいいのかしら?」
 『この機関車は我がサウザント・リーフ王国所有の物だ。動かなくなったらこのなめがわで線路わきに押し出してしまえばいいだけの事。君達をこの先に行かせないのが目的だからな』
 「まずいな。このままだと、この乗務員がいる屋根を破壊してまで射線を確保しだすぞ。機関車を直接、破壊しだすかもしれない」

続く
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~艦隊これくしょん 佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:その33~【二次創作小説】

この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。

佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第六章・その1

 鎮守府炎上騒動から2週間。やっとの事でプレハブによる臨時居住区が組み立てられ、佐潟港の近くにある集会場から鎮守府に戻ってきたのだ。焼け残った執務室の部分とプレハブ小屋の部分を無理やりくっつけた継ぎ接ぎの不細工な建物となった。
 「集会場での生活の方が豪華だった気がするわ」
 若干、焦げ臭さが残っている鎮守府の建物の前で大井が呟く。実際、この鎮守府で寝る環境は火事が起きるより前の物であっても、集会場で布団敷いて寝る方がはるかに安心できたのであった。
 「今度、台風が来たら、プレハブ小屋の屋根が飛ばされてしまうのでしょうか。そんな気がします」
 「やめてください。もし、そんな事になったら私の部屋がびしょびしょになってしまいます」
 潮が不吉な事を言う。それを聞いた鳥海は慌てて首を振った。鎮守府の荷物を運んだのはいいものの、皮肉な事に火事でほとんどが焼けてしまってため持込む荷物がほとんどないので簡単に引越し作業は終わってしまった。ただ、布団や机なども全て焼けてしまったが、菊地提督が用意してくれた物資の中に新品の机と布団があったため、艦娘達は大いに喜んだ。ただし、壁はプレハブであるが。
 翌日、磯波、潮、大井、鳥海が執務室に集められた。鎮守府の運営もそろそろ再開と言った所である。今回の会議では、現時点で出撃を行っている海域についてが主な議題であり、重巡である鳥海が加わったため、敵主力部隊を倒すことが可能と判断したようである。幸い、この海域の敵主力部隊は軽巡を旗艦とした水雷戦隊であるため、重巡の火力を持ってすれば軽巡に大ダメージを与える事は、この海域の深海棲艦そして今の鳥海の状態ならば簡単だ。いい加減、上層部にも新しい戦果を送らなければならない。
 「今回の出撃は相手に当てる事。つまりは命中重視の陣形での行動を基本としたい。4隻揃った事で複縦陣の陣形が使えるはずだ」
 「火力を重視するよりも命中重視という事ですね」
 「そうだ。折角の重巡の火力も当たらなければ意味が無い。まして、回避されてカウンターをもらうような事なら目も当てられない」
 斉藤の提案を確認するように磯波が声をあげ、それに斉藤が答えた。
 「前にも言ったかもしれないが、今は防御よりも攻撃の時代だ。どんなにガチガチに防御を固めてもやられる時はだいたい一発だ。一発喰らえば、最悪一撃、良くて中破か大破だ。かすり傷や小破は基本期待しない方がいい。相手もこっちも技術の進歩とやらで攻撃力が上がっているからな。相手に攻撃を素早く命中させる事と相手の攻撃をいかに回避するかだ。いいか、相手が中破や大破の状態になったら、すかさず攻撃を加えて沈めるんだ。これでブリーフィングは終わりだ。出発してくれ」
 4人は装備を確認し、佐潟港から該当海域に向けて出撃していった。

続く

~艦隊これくしょん 佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:その32~【二次創作小説】

この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。

佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第五章・その4

 翌朝。明るくなった所で今回の被害状況が明らかになった。斉藤の執務室兼艦娘寮は、入り口近くの2階にある執務室と1階にある斉藤の部屋を残して他は焼け落ちる。入渠施設に至っては完全に露天風呂状態になってしまった。ボイラー等もダメージを受けていたが、明石によれば、交換すれば入渠機能だけは再稼動できるらしい。鋼材や弾薬といった資材も火災で失われたあげく、鎮守府全員の空腹を満たしていた干物がほぼ全滅してしまった。幸い、工廠は別の建物であったため工廠内にある機材は全部無事であった。しかし、昨日の火事騒ぎを地元の新聞にすっぱ抜かれてしまった。取材に来た記者はどうもここが鎮守府とは思っていなかったらしく、斉藤達がたまたま火事現場に居合わせたという認識だったため、話のタイトルが“貧乏鎮守府の災難・火災発生”というのだから身も蓋も無い。とりあえず、無事だった工廠の片隅に通信機を移設し、鎮守府の運営を再開する事となった。
 数日後、斉藤のもとに菊地から連絡があった。なんと火災保険がおりるらしい。その話を聞いた時、斉藤は耳を疑った。あのオンボロ小屋に火災保険がかけてあったとはとても思えないからだ。だが、保険金の金額はあてにならない。むしろ、どんな仕打ちが待っているか想像をするだけで背筋が凍る。なけなしの燃料を入れて偽装漁船で食料調達に行って来た艦娘達に伝えると、
 「保険が降りても、建物はすぐ建つわけないじゃない?むしろ、自分達で組み立てろとか言われるんじゃないの?」
 大井から辛辣な言葉が飛び出してきたが、その予感は的中する事になる。数日後、建築資材を載せたトラックが佐潟港にやってきた。斉藤は訳がわからないままそれを受けとるハメになった。
 「提督、この建築資材の山は何ですか?」
 「磯波言うな。物凄く嫌な予感がしている。とりあえず、同封されていたこの手紙を読むぞ」
 “斉藤、済まない。今回の火災保険の件だが、今の自分ではこれが精一杯だった。生活環境を向上させようといい建物が建つよう交渉したのだが、そのような予算は追加で確保できなかった。そこでだ、プレハブという比較的安価な資材を用意した。夏に向けて空調もいくつか詰め込んである。艦娘も一応は軍人だ。プレハブを組み立てるぐらいの技能はあるはずだ。健闘を祈る”
 「さすがにあっちもこういった事態は想定していなかったみたいだな。まあ、無理もない。普通なら落雷で一瞬でここまで燃えてしまうのはそうそうないだろうな」
この事を明石に話した所、例のコロボックル達の力を借りれば何とかなりそうという事であったので、焼け残った部分と連結するようにプレハブ小屋を組み立てる事になった。ただ、入渠施設に関しては屋根の部分にあう資材が無かったため、壁で周りを覆う形の露天風呂のような形で修繕される形となった。

第6章へ続く

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】第4章・その3

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第4章 養老鉄道・その3

 貨物列車に乗り込んだ2人であったが、終点までのんびりと座って景色を見ているわけには行かなかった。
 「待ち伏せね」
 「何か癪だな。うまい具合に誘導されているようだ」
 2人が乗り込んだ貨物列車はサウザントリーフ王国所有の車両だったのだ。無蓋車から頭を出すとコンテナ上やら脇やらにいる兵士から精霊銃の弾丸が飛んでくる。
 「列車の上で戦闘を行うのは考古学者の映画であったかしら?」
 「それを言うなら、荒野の一人のレンジャーじゃないか。差し詰め俺達は列車強盗か?」
 「あら、攫われた姫様を助けるのだから、私達はヒーロー側よ」
 「だったら格好よく決めたいな」
 「それなら先に行く。援護するわよ」
 「どうせ少しサボるんだろう。年に1時間でもいいから真面目なってくれ。先陣を切る味方を遠距離攻撃で的確に決めてやるさ」
 「ひどい言い草ね。私はいつも真面目よ。見てなさい」
 そういうと紗江は無蓋車から飛び出す。それを見た相手は精霊銃の引き金を引いて応戦するも、紗江の小刀で弾丸を弾かれ、一気に肉薄される。そして、両腕を斬りつけ銃を使えなくする。そこまでは良かったが、最後に蹴りを入れたのが余計だった。蹴飛ばされてバランスを崩した兵士はそのまま貨物列車から転落した。転落していった様子は大治郎も見ており、その状況を危惧したが、この国の医療技術は高いと聞く。それにこの貨物列車に乗り込んでいる事は知られているので後続の列車か何かで回収されるだろう。運悪く、対向列車に撥ねられない限り死ぬことは無いだろう。
 紗江が貨物のコンテナからコンテナ飛び移っていたが、当然、紗江は頭を引っ込めた。
 「何で戦車が積み込まれてるのよ!しかもこっち狙ってるし!」
 ご丁寧にこの貨物列車には戦車が積み込まれていたのだ。いかにも待ち伏せと言わんばかりに砲身をこちらが確実に通る位置を狙っている。射線に入った瞬間引き金を引かれるだろう。そして戦車を守るように周りに随伴兵が配置されている。戦車は随伴兵を守り、随伴兵は戦車を守る形である。
 「これは流石に兄さんの出番ね。格好良く決めてよね」
 大治郎が戦車の射線に入った所、案の定、戦車から砲撃が行われたが戦車から放たれた砲弾は列車のはるか後方の2箇所で爆発を起こした。高速で飛んでくる砲弾を一瞬で切り払ったためだ。
ガシュッ!
ガッキンッ!
 怯んでいる随伴兵をよそに戦車に大治郎の白刃が襲い掛かる。乾いた金属音と共に、まるでみかんの皮を剥いたように戦車の装甲が外れ、中の兵士達がむき出しになる。その後、随伴歩兵と共にナイフで襲い掛かったが、大治郎のパンチで軽く倒されてしまった。
 「複線だったら、線路に障害物という事で日鉄から怒られる所だったわね」
 「それだったら、線路が無い方に切り落とすだけさ。そのくらいの事は紗江もできるじゃないか」
 高速で飛ぶ砲弾や斬る事もさながら、中の乗員を傷つけずに壊す事はそうそう出来るものではないと思う。
 貨物列車上での戦闘は移動できる足場が少なく移動が制限される上に、線路脇からの支援攻撃も加わり、過酷と思われたがそんな事は無かった。貨物列車に乗り込まれる事を想定していなかったのか沿線には部隊はまったくといって配備されていない。障害物が何もないコンテナの上での戦闘においては、精霊銃を使用してきたならいつも通り弾きつつ、ナイフを持って突撃してくる兵士に注意を払えばいい。周りからの支援が無い限り、いつも通りの戦闘となる。
パパパパパパパパパパ・・・・・・・・・・。
 乾いたローター音が聞こえたので上を見上げると、小さな飛行ドローンがこちらに向かってきているのが見える。サウザント・リーフ王国軍が所有する“航空支援ドローン・カッラ=ズジョー”だ。気がつけば田園地帯を抜けてオータキの市街に差し掛かっていた。おそらくそこから飛んできたのだろう。カッラ=ズジョーは下部に精霊銃を取り付け、上空から撃つだけという非常にシンプルな攻撃方法を採用している。着弾すると爆発するタイプの精霊弾を発射する亜種もある。単純な航空支援と言えども支援には違いない。遮蔽物が何もない貨物列車の上では邪魔となる事は必須だ。適切な対処が求められる。紗江は忌々しそうな顔をしていた。
 「兄さん、地上はまかしていいかしら?私はあの騒がしいのを落とすわ」
 そう言って紗江は懐からお札を取り出す。紗江の持っているお札は陰陽術の力を宿したお手製の物である。陰陽術の特性である干渉能力を生かした攻撃特性を持たせている。人に触れれば切れたり、殴られたような衝撃を与える。機械に当たれば突き刺さったり、凹ましたりする事も当然できる。案の定、お札が当たったカッラ=ズジョーはその場で爆発する物、煙を吹きながら地面やサウザント・リーフ兵士が集まっている所に落下し爆発。サウザント・リーフ兵にとってはたまったものではなかった。その状態に陥り、慌てふためく兵士達を見ながら紗江はクスクス笑っていた。

続く

~艦隊これくしょん 佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:その31~【二次創作小説】

この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。

佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第五章・その3

 数日後の昼頃、佐潟鎮守府周辺の天気が怪しくなってきた。どうやら雨雲が発生しているようだ。地球温暖化が話題となって数十年、たしかに日本におけるにわか雨はゲリラ豪雨と呼ばれるまで雨の強さが増していた。
 「これは一雨くるかな?夏というか梅雨もまだなんだがな。もし、ゲリラ豪雨がきたらこの建物のどこかで雨漏りがしそうだな」
 「提督、たしかに雨雲レーダーでは北西の方でかなり強い雨が観測されています。この雲が南東に下がってきた場合、この鎮守府に雨を降らしますね」
 「やっと鳥海の寝床ができたというのに雨漏りしたら適わんな」
 はるか遠くから雷が落ちる音が聞こえてくる。雷が鳴っているならかなり強い雨が降っているのだろう。この雨雲が北に向かって行ってくれる事を斉藤は祈った。しかし、祈りは届かず、雷の音はだんだんと鎮守府に向かって近づいてきた。
 「おい、これは一雨くるかもしれないぞ」
 「閉められる窓等、雨が入りそうな所を閉めてもらうように言ってきますね」
 磯波が執務室からイソイソと出て行った。斉藤が窓から外を見る。どす黒い雲が真っ直ぐに鎮守府に向かってきており、時々黒い雲の中が光っているのが見える。悪い予感は当たる物だ。窓にうちつける風が強くなり窓ガラスをガタガタと揺らす。この間にも雷の音はだんだんと大きくなる。外は夜のように真っ暗になった。深海棲艦が出現した時、まれに暗雲に覆われる時があるが有るらしいがまさにその時のようである。突然、、砲撃を喰らったかのような派手な轟音と共に鎮守府内の灯りが落ちた!
 「停電か!どこか近くに落ちたな!」
 「こちら工廠!停電で機材が使えません!」
 「ちょっとお風呂に入ってら灯りが消えたわよ!」
 「大きな音がして灯りが消えたんですけど、落雷ですよね?」
 鎮守府が停電したらしたで、慌てた顔をした明石とバスタオル姿の大井と仕込み中の潮がなだれ込んで来た。気持ちはわかるが、少し落ち着いてもらいたいものだ。特に潮は干物を作るために魚を捌いているので、エプロンに魚の血がついている。その上、包丁を片手に持っているので暗さと合わせて軽くホラーだ。しかし、停電で何も作業ができないのはたしかである。鳥海も執務室にやってきたが、一連のやりとりにあきれていた。
 しばらくして何やら焦げ臭いが漂ってきたので、鳥海が様子を見に行ったが血相を変えてあわてて戻ってきた。
 「司令官!大変です!火事です!」
 「何だって!?ハッ!そうか落雷か!」
 そう、停電の原因は落雷であったが、この雷はこの鎮守府に落ちたのであった。寄りにも寄って執務室がある建物にだ。
 「総員作業を中止!各自に必要な物を持って外に避難しろ!」
 斉藤が大声で叫ぶ!6人の艦娘慌てて自室に駆け込んで行った。斉藤は消防への連絡を済ませた後、避難の準備を始めた。
 「鳥海さん!提督は!?」
 「まだ外に出てないわ。今の所、磯波さんが最後よ」
 建物がオンボロなため、意外と火の回りが速い上に煙も充満している。既に執務室兼寮のあちこちから煙が噴出してる。
 「あー!!」
 突然、潮が大声をあげる!
 「干物に塗る特製タレの壷を取ってくるのを忘れました!取りに行かないと!!」
 「ダメです潮さん!!調理場があるのは出火した所に近いです!戻るのは危険です!」
 「タレが!私のタレが!干物が!!」
 「干物で命を捨てるような事をしないで下さい!」
 大淀が暴れる潮を羽交い絞めにしておさえつける。どうやら潮の干物中毒レベルはかなり進行しているようだ。
 「あのバカ!何をしているのよ!早く、出てきなさいよ」
 6人の艦娘に1人のコロボックルが近づき何やら呟く。コロボックルの話によれば、執務室の窓から何回か外に荷物が投げられたとの事。その証拠に荷物の方を指差し、コロボックル達がその荷物を運んだと言わんばかりの表情をした。状況から察するに斉藤が荷物を外に放り投げた後、何か別の物を運び出そうとしている可能性が高い。
 「行きます!」
 磯波が煙が漂う鎮守府内へ飛び込む。熱気が漂い始めている鎮守府を駆けぬけ執務室に飛び込む。
 「提督!」
 「おー、磯波か。丁度いい、これを外すのを手伝ってくれ」
 「一体何を!?早くしないと煙をすって倒れてしまいますよ」
 「わかっている。だが、これを放置して出ることは出来ない!これがあれば、この鎮守府が焼け落ちても鎮守府運営はできる!」
 そう言いながら、斉藤はモニターと通信機のケーブル等を外している。斉藤の友人である菊地に通信が繋がれば物資の陳情ができるからだ。
 「よし、外したぞ!磯波、脱出するぞ!」
 鎮守府の入り口から磯波と斉藤がモニターやら通信機の機材をかかえて鎮守府を飛び出すと同時に消防車のサイレンが響いてきた。騒ぎを聞きつけ、周辺の人達も野次馬として集まってきた。干物が焼ける香ばしい匂いが辺りを漂う中、斉藤達は消防隊による消火作業を延々と見る事しかできなかった。結局、佐潟港にやってきた雨雲は阿久根市街にのみ雨を降らし、佐潟港には雷だけを落としてきただけだった。その日、斉藤達は佐潟港近くに集会施設を借り、一晩を過ごした。

続く

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