忍者ブログ

東都幻想工房

同人サークル・東都幻想工房の近況等を報告するブログです。 また、二次創作小説等も掲載しています。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第2章・その7

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第2章・白昼の吸血鬼:その7

 そう叫ぶと自称吸血鬼は、どこからか大鎌を取り出しで今にも襲い掛かろうとしていた。
 「今日はアンタにヴァンパイアとは何かをその身に教えてあげるわ」
 そう言うと、間髪入れずにチェリーに向かって大鎌を振り下ろす。晴海とソフィアは左右へ、チェリーは後方に下がって振り下ろしを避ける。3人が避けれたのは良いもののかなりのスピードである。自分で素早いと言っていた事に嘘はないようだ。
 「いきなり何をするのよ!危ないわね!そこまで言うなら、あなたが本物の吸血鬼かどうかしっかりと確認してあげるわ!」
 すっかり置いてけぼりにされてしまった大治郎は、一連のやりとりからチェリーが危なくなった時に手助けをすればいいかと考えていた。
 「今の振り下ろしを避けるとは。どうやら口だけじゃないようね」
 「何よ。試したわけ?」
 「当然よ。あれくらいを避けてもらわないと話しにならないわ。まだまだ本気は出してないもの」
 「変に手加減をすると、足元を掬われるわよ」
 「ご忠告ありがとう様。じゃあ、これならどうかしら?」
 そういうと大鎌を振りかぶってチェリーに向かって投げつける。それをチェリーは避けたが、大鎌はブーメランのように孤を描き、木を一本切断して戻ってきたのだ。それを避けるのは簡単であったが、自称吸血鬼は投げた位置よりもチェリーに近い位置で大鎌をキャッチして、斬りかかってきたのだ。鎌ブーメランの動きは囮だったのだ。
ブオンッ!!
 鋭い切れ味を持つ大鎌がチェリーに襲い掛かる。薙ぎ払った後、自称吸血鬼がチェリーがいた場所を見たが、姿が無い事に気がついた。
 「こういった重量級の武器の性質って知ってる?基本的に、薙ぎ払うか叩きつけるのどちらかになるの。そして、いくつかの動きを合わせた所でも、細かく動く事はできないの。つまり、武器の軌道が読みやすいという事よ!」
ドガッ!
 薙ぎ払った大鎌にいつのまにか飛び乗っていたチェリーが解説を入れた後、相手の側頭部に向かって飛び蹴りを入れたのであった。

続く
PR

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第2章・その6

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第2章・白昼の吸血鬼:その6

 「怪しい、怪しすぎる。蝙蝠の亜人に見えるけど、あんな肩やヘソが出ているはだけているように見える服はないわね。仮装パーティーにでも行ってきたのかしら?」
 ソフィアの発言を聞いて、夏に会った時に肩やヘソを出してる服を着ていたのは他ならぬ言っている本人である。五十歩百歩であろう。
 「とりあえず、捕まえて拷問にかけるのよね?我々はいつも正義だ、という感じで」
 「晴海、君はどこでそういう言葉を覚えてくるんだい?ここは普通にホールドアップだ」
 大治郎は精霊銃を取り出し、獲物を狙う猫のように静かに蝙蝠の亜人と思われる人物の背後に近づき、銃を構えて言葉を発しようとした瞬間――

フォン!

 突如、後ろにいる大治郎に向かって、振り向きながら引っ掻き攻撃を繰り出してきた!大治郎はとっさに後ろに飛んだが、精霊銃の銃口は向けたままだ。
 「かなり静かに近づいたが、よく気がついたな。どうやら蝙蝠の亜人ではなさそうだな」
 「あなたこそ、ただの人とは違うんじゃないかしら?それにあそこの茂みに4人隠れてるでしょ?」
 茂みからチェリー、ソフィア、晴海、月島がバツが悪そうな顔を出す。
 「何よ、最初からバレバレだったというの?」
 「気をつけろソフィア。こいつはそこいらの傭兵やクリーチャーとは全く違う。何を仕掛けてくるかわからんぞ」
 「私を亜人やモンスターと一緒にしないでもらいたいわね。私は誇り高いヴァンパイアなのよ」
 ヴァンパイア。たしかに5人はそう聞いたが、全員の頭の中で“?”マークが浮かびあがったのだ。そもそもヴァンパイアを始めとした“悪魔”と呼ばれる人達は、超高度文明崩壊後から全く持って見かけない存在となってしまったため、伝説的な存在になってしまったため、ピンッとこないのだ。この間、晴海が仕掛けた騒動に妖狐の不知火がいた事態とても珍しい事だったのだ。5人が余りにもしらけた反応だったので、ヴァンパイアと名乗った女は少々焦り始めた。
 「何よあなた達、ヴァンパイアを知らないの!?」
 「知らないもなにも。それが本当かどうか判断する材料がないな」
 「アッハハハハハ!ヴァンパイアって吸血鬼の事ですよね?そんなの嘘に決まっているじゃないですか」
 突然、チェリーがお腹を抱えて笑い出す。
 「吸血鬼は太陽の光を浴びると灰になって死んでしまうのですよ。だから、夜に活動して人を襲うのです。それなのに、堂々と日向に立っているじゃないですか」
 「何?ヴァンパイアって太陽の光で死んでしまう程、ひ弱なの?」
 「でも、灰になっていないという事は、日焼け止めクリームか何かをつけているのではないでしょうか?」
 「もし、そうなら何とか手に入れて商品開発チームに渡してみたいわね。あたらしいUVカット商品ができそう」
 「ちょっと!ヴァンパイアが太陽の光に弱いのは相当前の話よ!それにひ弱ではないわよ。素早く空を飛ぶ事もできるし、人間だって簡単に吹っ飛ばせる程のパワー、それに多種多様な属性を含めた術を使えるわ。あなた達がいう精霊術ってやつね」
 「それでも激しい流水に飲まれると死んでしまうのでしょ?」
 「誰だって水に呑まれたらただじゃ済まないでしょ!」
 「後は、胸に木の杭を撃ち込まれたら死んでしまうとか」
 「チェリーさん。それはヴァンパイアに限らず、私達も死んでしまうと思うのですが・・・」
 「ところがですね月島さん。吸血鬼はあえて、木の杭に弱いという弱点が言い伝えられているのですよ」
 どうやらチェリーは、ヴァンパイアに関する知識を有る程度持っているようだ。
 「あと、1番重要なのがですね。吸血鬼に血を吸われると吸われた人物も吸血鬼になってしまうのです!」
 「なによそれ・・・。という事はウィルスか何らかの感染症を持っているとの事?つまりは保健所送りの案件じゃない!」
 「えーい、うるさい!やかましい!ヴァンパイアは変なウイルスとか持ってないわよ!それに噛まれたらヴァンパイアになるのだったらとっくの昔に地上はヴァンパイアだらけよ!最近の人間達は私達の事を忘れてやりたい放題しているというのは間違いじゃなかったのね!そこのチェリー頭!まずはあなたからヴァンパイアの凄さと恐ろしさを味あわせてあげるわ!」
 どうやらチェリーのヴァンパイアに対する知識は間違いが多く、それが災いして火をつけてしまったようだ。まあ、さんざんボロクソに言われた挙句、ウィルス持ち等コケにされたら、怒り出すのは無理はない話だ。

続く
【登場人物紹介・その5】
■クレイン・トゥルース
■種族:ヴァンパイアとサキュバスのハーフ
■性別:女性
■職業:看護婦
■好きな物:健康なヒトの血液、焼肉、ヘルシーサラダ
■嫌いな物:不健康なひとの血液、やたらと油っこい物、ブラックコーヒー
■誕生日:12月21日
太陽の光を浴びると灰になる等の話は、はるか昔の時の種族の話らしい。今は太陽とお友達で、昼夜を問わず活動可能だそうだ。吸血の方法もだいぶ変わったらしく、気絶させた後に専用の器具を使って血を抜き取るのが主流であるそうだ。齧りつくのは戦闘時の攻撃方法として使われるのがメインだとの事。特に彼女は看護婦として人体の構造や治癒系の精霊術を把握しているため、証拠を残さず効率的に血を奪う事ができるそうだ。現代の人間は血にいろんな物が混じっているため、そのまま飲むと不味いらしい。
父親がヴァンパイア、母親といとこがサキュバスである。そのおかげかプロポーションは抜群で、オータムリーフフィールド辺りを歩いていれば、男性陣の目線が釘付けになるだろう。お酒を外で飲んだ時、いつの間にか家に居て帰って、来る途中の記憶がない場合は、彼女達に血を抜き取られたのかもしれない。翌日、フラフラするのも二日酔いではなく、一時的な貧血の可能性がある。

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第2章・その5

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第2章・白昼の吸血鬼:その5

 朝。夜の冷えが地面を覆っている森の中で焚き火を大治郎はつついていた。いくら線路沿いとはいえ、市街地から離れた森の中ではクリーチャーと遭遇する可能性は十分ある。そのため、交代で夜の番をしていたのだ。実際、夜中にクリーチャーの成りそこないが現れたので、叩きのめしていた。
 「おはようございます大治郎様。朝御飯の支度を始めますね」
 「おはようチェリー。よく眠れたか?クリーチャーが出る野外は初めてだろ?」
 「はい。大治郎様のおかげでゆっくり眠れました。ですが、夜に退治したクリーチャーみたいな人みたいな生き物は何だったのでしょうか?あれもクリーチャーですか?」
 「あれは、遺伝子障害が何かで成長できないまま産まれてしまったクリーチャーの成れの果てだ。環境による突然変異で生殖能力を身につけたクリーチャーだから時々、不完全な個体が出ると研究機関等は予想している。クリーチャーに人の遺伝子が含まれている事がわかったのも、ああいう個体がいたからだ。脅威度については動きは緩慢な上に脆い事から低くされている」
 「人型のクリーチャーはいないのですか?いてもおかしくないと思いますが」
 「ごく稀に寄生型のクリーチャーが、宿主の姿に化けるくらいだな。ただ、寄生型はとても珍しいから、今まで1,2回程度しか見た事はないな。あまり、気にしなくていいだろう。あんな感じに」
 大治郎がテントの中を指差すと、そこには爆睡しているソフィアの姿があった。実際、できそこないのクリーチャーと対峙している時も気にも留めず寝続けていたのだ。普段、彼女の女王としての立場には他人には知らない気苦労があるのかもしれない。それからチェリーが食事の支度をしていると、その匂いにつられたのか、ソフィアが目を覚ましたのであった。
日もすっかり昇った後、相変わらずトンネルを行き交う鉄道を見ながら見張っていたが、全く音沙汰はなかった。
 「もう、金属の箱を見続けるのは正直飽きたわ。何か起きてくれないかしら?」
 ソフィアが愚痴を零す。実際問題、張り込みは地味だ。姿を隠しながら、一点をずっと眺めていれば愚痴を言いたくなっても仕方ない。本当に鉄道が通る以外、何も起こらないのだ。鉄道好きなら色んな形式の車両が通るため、飽きる事はないと思うが生憎、3人は鉄道は好きでも嫌いでもなかった。
 「やっと見つけたわよ」
 「どこかで聞いた声がしたと思ったら晴海じゃないか。どうした?まだ、進展の連絡はしていないぞ。学校はどうした?」
 「フッフッフッ。私が通っている学校にはボランティア制度があるの。わかりやすく言えば社会奉仕制度かしら。それを申請すれば、授業への出席は申請した期間だけ免除されるのよ」
 「なんだ、こちらの気遣いは全く持って無駄だったのか」
 「私をのけ者にしようなんてそうはいかないわ。今回の件は東雲グループの新しい分野の開拓できるニオイがあるわ。これは絶対逃すわけにいかないわ」
 「まだ、相手の正体がつかめていないというのに。商人が考えている事はイマイチわからない」
 大治郎は半分、呆れたような感じで返答した。それからしばらく、晴海の自慢話が続き、緊迫した張込現場は幾分が雰囲気が和らいでいるうちに、午前が終わっていた。
 「レーダーに反応!人数は1人!トンネルに近づいています!それと同時にトンネル付近に磁場の乱れが少しずつ出てきています」
 正午が過ぎ、昼の準備をしようとした矢先にチェリーから緊迫した報告が入る。
 「折角、これからお昼にしようと思っていたのに。昼食の邪魔をするなんて無粋な奴ね」
 「晴海の愚痴はいいとして、この時間は鉄道がくる時間間隔が少し開くタイミングだ」
 「ねえ、職員の可能性は?」
 「ソフィア、その可能性は非常に低いぞ。人気がほとんどないこのような場所に職員が単独で来る事は、職員の安全確保の点から職務規定違反だ。この付近にくる時は連絡を入れてもらうようにお願いしてある」
 「だとすると騒動の関係者か、それに関係している内通者かしらね」
 「どちらにしても現場を押さないとな」
 そういうと、4人は音を立てないように線路脇の茂みまで移動し、トンネルの方向を伺うとそこには、背中に蝙蝠のような羽がついた奇妙な格好をした人物が確かにいた。

続く

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第2章・その4

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第2章・白昼の吸血鬼:その4

 「この地図を見て欲しい。これはチェリーが調べてくれた一連の騒動を巻き起こしている連中が出入りしている可能性がある場所を示している」
大治郎のオフィスの壁に映し出された地図には2箇所の赤丸がついていた。
 「それぞれ富士山から少し離れた北東と南東の所だけど、そこに何があるの?」
 「晴海の疑問にはこの地図を拡大すればわかるだろう」
 大治郎が端末を操作すると地図が拡大される。
 「これって鉄道の線路の所にあるということかしら?しかも、地図のマークを見るとトンネルの入り口部分のようだわ」
 「その通り。反応があった場所は鉄道のトンネルだ。さて、2箇所あるという事は、両方あるいはどちらか一方の地点を調査しなければならないが、今回は南側の小田原を調査する事にした。高尾側は、場所が場所のため今回の騒動の調査には適さないと判断した」
 高尾。イースト・ペイジング王国の中心からほぼ真西に位置する国境の1つだ。そこから西は広大な森林地帯と山が広がり、精霊達の住処となっている。この森林地帯は超高度文明時代の住居やハイウェイがそのまま森に飲み込まれた光景が広がり、自然の力を目の当たりにできる。その影響で交通手段は鉄道のみという移動には厳しい所となっている。さらに、精霊達は多種族との接触をできるだけ避けており、精霊達の住処には行くには事前の申請が必要である。当然、精霊達も今回の騒動については警戒しており、たとえ自総研といえども申請も無しに、勝手に調査を行えば、トラブルは避けられない。
 「そこで今回の騒動に関わっている人物が現れるまで、近くで見張りを続ける。現れたら直ちに捕まえて重要参考人としてその場で取調べを行う。出発は明日の朝だ」
 翌日、自総研を出発した大治郎とチェリーは、昨日説明したポイント付近でキャンプを設営していた。ソフィアはこのキャンプで合流する手筈になっている。
 「大治郎様、晴海さんはアレでよかったのですか?」
 「ああ、いいんだ。今回の相手はクリーチャーではない可能性が濃厚だ。剣術の才能だけではカバーしきれないはずだからな」
 意気揚々とついて行く意思を見せていた晴海に対して、大治郎は昨日条件を出していた。取調べが終わり、先に進む事になった時にすぐに来れない場合は置いていくという内容だ。晴海は学生だ。今は学業に専念にしていた方がいい。
 「ああ、いたいた。駅からここまで来るのはしんどかったわ。色々、持ってきたわよ」
 ソフィアが現れ、リュックの中から色々と取り出してくる。食べ物、遊び道具、お酒。どこから見てもキャンプを満喫するためのアイテムしか入ってない。
 「それで、ここで何日間張っているつもり?一週間くらいかしら?」
 「そうはならないだろう。チェリーの調べでは、平均2日の間隔で観測されている事がわかっている。もしかしたら、キャンプの設営中に反応があるかもしれない」
 「平均2日!結構短いわね。でも、平均でしょ?最大で何日だったの?」
 「6日ですよ」
 チェリーが即答する。しかし、この日はテントが出来てからも、夜が更けようとも反応はあらわれなかった。

続く

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第2章・その3

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第2章・白昼の吸血鬼:その3

 「空間の歪みのような物が2箇所確認できました。2箇所とも出現時間がとても短いため、出入りに使用している可能性が高いです」
 先日、千歳から大治郎が調査に行き詰っている事を聞かされたチェリーは張り切ってこの調査に協力を申し入れてきたのだった。
 「2箇所にしぼれたのか。それにしても早いな」
 「はい。観測用の人工衛星が軌道上にあると聞いたので、ハッキングして使用しました」
 「何だって衛星をハッキング!?」
 チェリーからその言葉を聞いて、大治郎は驚愕するしかなかった。超高度文明崩壊時に現れた巨大隕石の所為で、宇宙ステーションを始め、多くの人工衛星も破壊されてしまった。現在の宇宙に関する技術はせいぜいロケットを打ち上げるくらいしかなく、指で数える程度の観測用人工衛星が地球を周回している程度である。もちろん、その人工衛星の技術は国家機密レベルである。それにハッキングした事がバレたら、イースト・ペイジング王国、つまりはクラル姫から怒られるのは必然だ。
 「痕跡は残さなかっただろうな」
 「私の能力なら問題ありません。大丈夫です。信じてください」
 どこからそのような自信が出てくるのかと大治郎は思っていた。コンピューターと人間の融合とも言える改造手術を施した人物は、恐ろしい技能レベルを持つ科学者なのだろう。そして、そのような科学者が存在していた超高度文明時代の人間である事を改めて思い知らされたのであった。
 「あー、ムカツク!」
 自総研の大治郎達のオフィスで、さも、いつもいるような感じでソフィアが愚痴を零していた。何でも、収穫した穀物が保管庫から丸ごと盗まれてしまったそうだ。
 「サウザント・リーフ王国の穀物は、このカントー地方全域に流通しているはずよね。そうしたら、スーパーに並ぶ生鮮食品の価格にも影響が出てるわね」
 同じく、さも、いつもいるような感じで晴海が穀物盗難の影響を話す。東雲グループ先代会長の忘れ形見という立場の彼女は、英才教育のおかげで初等教育学校の6学年目でありながら、経済や流通事情には強い。
 ソフィアは春のクラル姫誘拐騒動後、晴海は夏の騒乱以降、頻繁に自総研へ出入りするようになった。大治郎達への依頼料という多額の借金を背負っていたソフィアは、秋の初めに突然、全額を支払ったのだ。大治郎と紗江は、経済再建中の自国の税金を使い込んだ物かと疑ったが、そうではなく、南海の海域で宝探しをしていた際、海賊団と遭遇し、その海賊団からお宝を強奪してきて得たお金だそうだ。一方、晴海はあーだーこうだと五月蠅いお目付け役が多い実家から頻繁に抜け出し、自総研で宿題等を持ち込んだりしている。
 「というのもなんだけど、物資の盗難なら東雲グループの倉庫でも起きてるわ。相変わらず犯行グループはわからずじまい。正直、お手上げよ」
 「それでね私の予想だと、穀物を盗んだのは最近起きている襲撃事件が絡んでいると思うの」
 「まさかとは思うが、今回の件に首を突っ込む気じゃないだろうな?今回はクリーチャーや傭兵相手とは明らかに違うぞ」
 「だから何だというの?大人しく、問題が解決されるのを指をくわえて待ってろというの?自国が被害を受けたのに黙っていたら、臣民に示しがつかないわよ」
 「月島、聞いてるわよね。この件、東雲グループも一枚噛むわよ。・・・え?危ないからやめろって?何を言っているの?あなたも行くのよ。いい?これが成功すれば新しいビジネスチャンスがおきるわよ。どこの企業よりも早く、東雲グループが一番乗りでね。私の事を快く思っていない株主連中も大人しくなるでしょうね」
 一連のやり取りの後、2人は大治郎にしてやったりという顔をした。
 「・・・自分の身は自分で守ってくれよ」
 不本意だが、紗江が体調不良で動けない現在、少しでも戦力になると考えるとまんざらではなかった。

続く
【登場人物紹介・その5】
・ソフィア・リーフ・サウザン
・性別:女性
・職業:サウザント・リーフ王国女王
・誕生日:7月20日
クラル姫が治めるイースト・ペイジング王国の東側に隣接しているサウザント・リーフ王国の女王様。
国政は腹違いの弟であるカズサに任せている。春先に発生したクラル姫誘拐騒動を機に菊川兄妹と知り合って以来、自総研に出入りするようになり、クリーチャー退治の仕事等を2人に変わって持っていったりしている。クラル姫誘拐騒動の際、2人を動かしたとして多大な依頼料を抱えるハメになったが、今回の騒動で自総研が本格的に動く頃より少し前に、南海の海域で海賊団と一悶着した結果で獲得した財宝を元にして依頼料を全て完済した。戦闘スタイルは先祖代々伝わる格闘術による徒手空拳。
【登場人物紹介・その6】
・氏名:東雲 晴海(シノノメ ハルミ)
・性別:女性
・職業:初等教育学校6年生
・誕生日:3月30日
日本を始めとして世界に名だたる東雲グループの先代会長の忘れ形見であるお嬢様。
グループの潤沢な資金を元手に、菊川兄妹(+α)賞金首騒動もとい菊川兄妹に勝てたら賞金190億円という市民や傭兵やらを巻き込んだ大乱闘を夏に引き起こした。性格は強引でわがままな所もあるが、将来は東雲グループを背負っていく自覚も備わっている。英才教育を受けていたため、経済に関する知識は初等教育学校6年生の時点でズバ抜けている(ただし、友達は数えるくらいしかいない)。
家宝の刀を自総研にくる時はいつも持ち歩いている。晴海の背よりも長い赤い刀身が特徴。兄妹とあった時は平凡な長刀であったが、ある時を境に突然このような状態になった。(本人曰く、不思議な夢を見たとの事)

カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

リンク

フリーエリア

プロフィール

HN:
SHIN
性別:
非公開

バーコード

ブログ内検索

P R