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東都幻想工房

同人サークル・東都幻想工房の近況等を報告するブログです。 また、二次創作小説等も掲載しています。

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東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第2章・その2

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第2章・白昼の吸血鬼:その2

 クラル姫からの連絡から数日後、大治郎は悩んでいた。相手が姿をくらましている方法に精霊術を使った偽装工作を使っていると踏んで調査をしていたのだが、反応がそれなりにあったため、どうように絞り込むか難航していたのだ。
 (弱ったな。使用した技術が間違っていた。精霊術の反応を拾えるのは確かだが、これが戦闘によるものかどうか判断がつかないどころか、攻撃か偽装工作等に使われる支援系の区別すらつかない)
 自総研内のカフェテリアにあるソファーで大きく溜息をつき天井を見上げると紗江にそっくりな顔つきの人物が視界に入ってきた。
 「伯父様。お疲れのようですね」
 「千歳か。ああ、どうやら調査方法を間違えたようで、どうしたものかと考えている所だ」
 千歳が差し出したコーヒーを大治郎は受け取る。千歳は紗江の一人娘であるため、大治郎は伯父にあたる。紗江の一人娘とはいえども、顔つきや体格は紗江そっくりであるため、面識が少ない相手だと紗江と間違われる事が多々ある。違う特徴といえば髪の色と瞳の色の緑が紗江よりも濃い事と、髪の毛が肩までのセミロングである事くらいである。
 「そうだ。チェリーさんにお願いしてみたらどうでしょうか?彼女、あの後色んなセンサーを搭載しているの事がわかったのでしょう?相手が精霊術以外での方法で隠蔽していた場合も対応できるかもしれませんよ。後ほど、事務所に行くように伝えておきますね」

続く
【登場人物紹介・その1】
・菊川 大治郎(キクカワ ダイジロウ)
・性別:男性
・誕生日:12月17日
ご存知本作品の主人公。クラル姫誘拐騒動や東雲グループが仕掛けてきた夏の首都騒動を解決してきた。ここ最近発生している傷害事件の調査をクラル姫から依頼された。久しぶりに本格的な騒動の調査となりそうだ。
【登場人物紹介・その2】
・菊川 紗江(キクカワ サエ)
・性別:女性
・誕生日:12月17日
大治郎の双子の妹。陰陽術というあらゆる事象や性質に干渉できる危険で凄い能力を使う事ができるが、体調不良で今回の騒動の調査には参加せず。名前がないクリーチャーに名前をつけるのが密かな楽しみらしいが、センスはいまひとつのようだ。
【登場人物紹介・その3】
・チェリー・ブロッサム
・性別:女性
・職業:自総研事務員(名目上)
・誕生日:4月28日
自総研からさほど離れていない“ロックルーインズ”という遺跡に埋もれていた施設で発見された女性。目覚めてからというもの自分の名前等サッパリ覚えていない記憶喪失状態であったため、保護の名目で自総研に引き取られる。自総研での検査の結果、機械と人間が融合している状態である事が判明。電子ネットワークへのアクセスやハッキング、さらに各種センサー等が組み込まれているらしく情報や索敵に強い。さらに、戦闘技術も組み込まれている模様で最初からそうであったかのように使っている。誰が何のためにどのようなコンセプトで彼女にこのような処置を施したのは不明であるため、彼女自身がブラックボックスの塊である。
名前は思い出せないので紗江が命名。桜の木の下にあったカプセルに入っていたのでそれが由来らしい。なお、誕生日だけはカプセルにあった識別表と思われる所にかろうじて残っていた。また、超高度文明崩壊時よりも前に産まれているため、大治郎や紗江よりも年上である。(眠っていた期間を含めるなら)
【登場人物紹介・その4】
・菊川 千歳(キクカワ チトセ)
・性別:女性
・職業:自総研事務員(管理職)
・誕生日:5月20日
紗江の一人娘。自総研の事務作業及び、自総研で働くクリーチャー達の管理をしている。ズボラでだらしない所がある紗江と違って、しっかり者な撫子である。一体、誰に似たのか。
紗江との遺伝子配列が限りなく100%に近いため、髪型と髪と瞳の緑色が紗江よりも若干濃い程度しか違いがない。そのため、クローンではないかという噂があるがこれは大治郎が否定している。
父親に関しては、産まれる前に死んだとしか聞かされていない。(紗江に千歳の父親について聞くと最終警告レベルのような背筋が凍りつくような表情をするため、良い印象は全く持っていない模様)
紗江の娘であるため、遺伝の所為か陰陽術を使役する事ができるが、物事の事象に干渉するようなレベルの力は全くないレベルの上に、紗江から余程の事がない限り、使用を禁じられているので、彼女が陰陽術の影響で暴走する事はない。
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東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第2章・その1

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第2章・白昼の吸血鬼:その1

 晩秋。最近、妙な事件が日本各地で頻発していた。空を飛ぶ変人に襲われたり、女性に道を尋ねたらいつの間にかフラフラな状態で家にいたり、ヒトを案内していたら森の中にいたなど不可解な事ばかりだ。中にはクリーチャーと違わぬ異様な姿を目撃したら、いつのまにか病院にいた等、怪我人が出る事例も発生していた。その他には変な小人の酔っ払いに絡まれたなんて話も出たが、前の話に比べれば可愛い物だ。だが、そんなヒトが襲われる事態が発生しているの中、未だに死亡者が出ていないのが不幸中の幸いなのかもしれない。しかし、それはそれでおかしな話だ。
 「怪我人の特徴を集めた所、どのケースも急所には当たっていないそうだ。これをどう見るかだ」
 自総研の一室にあるオフィスで大治郎が集められた資料を見ていた。
 「見た限りプロの犯行には違いないわね。しかし、一見クリーチャーみたいな姿をしているのを見たという話も気になるわね。仮にクリーチャーだとしても組織的に動く事はまずないでしょ?」
 「今まで出会ったクリーチャーはどれも単独行動だったな。もし、クリーチャーを動かせるなら指揮官のような存在が必要だ」
 大治郎や紗江が今まで戦ったクリーチャーはどれも単独であった。元々は生物兵器であるため、操る事が出来れば、絶大な軍事力を手に入れたも同然であるが、そんな話は聞いた事がない上に仮にあったとしても、正体も身元も不明なクリーチャーが多く集まっているという不審な情報が瞬く間に集まるだろう。しかし、そう言った目撃情報も無い上に、正式な依頼も届いていないため、自総研内での調査は本腰が入っていない状態となっていた。

数日後――

 「当局の捜査状況ではカバーできない?それは前から囁かれていた人員不足や精霊術師の育成が追いつかなかったのか?」
 『いきなり痛い所をついてくるわね。たしかにそれの影響もあるけど、ある写真が出てきたから、自総研に任せたほうがいいという声も出てきたのよ。そっちに送るわ』
 クラル姫との電話で大治郎は話していた内容は例の頻発している事件についてだ。わかりやすくまとめると、イースト・ペイジング王国の警察当局の捜査力だけでは対応しきれないので自総研に任せたいという事だ。その中で何やら手がかりになりそうな物があるらしい。
 「・・・成程。たしかにこれは手がかりになりそうだな。よく見つけ出したな」
 クラル姫から送られてきた画像データを見ると、ビルが立ち並ぶ夜景に映っている月に人影らしき物が映っており、その部分を鮮明に拡大した画像データにはしっかりとヒトが浮かんでいるのが映っている。
 『天気予報で流れるお天気カメラの映像をたまたま見ていた捜査員が偶然見つけたそうよ。ね?生身のヒトがこの高度まで維持できる風属性の精霊術を使えるには中々いないわよ。そう考えると、この一連の騒動に関わっている可能性が非常に高いわ』
 「たしかに、この高度まで身体を飛ばすのは流石に自分達でも無理だ。精霊術、もしくは何かの超能力かもしれないな。ただ――」
 『ただ?』
 「紗江が体調不良を起こしているんだ。魔力の高まりとかは陰陽術が1番わかりやすいんだが、今はそれができない。他の方法を当たってみるが、少し時間がかかるのは了承して欲しい」
 『ええ、問題ないわ。それにあなた達にお願いするのはもう1つ別の理由があるの?もし、映っている人物が今回の騒動に関係しているのであれば、その理由を探って欲しいの。ただ、組織の力を示すだけならいいのだけど、知らず知らずに私達がこの人物が所属する組織にの何かしらに手を出していたと場合、政治の問題にも発展するからよ』
 「たしかにその部分は気にする必要があるな。相手方の目的が明確になっていない状態でこちらから下手に動くと口実を与える事になってしまうからな。まずは、出所を突き止めて手頃な人物から情報を聞き出すかな」
 『情報の聞き出し方はそちらに任せるわ』
 こうして自総研が本腰を入れる事態となった。紗江が動けない状態でどうやって出所を突き止めるかを大治郎は考え始めるのであった。

続く

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第1章・その9

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第1章・機巧少女:その9

 帰りの列車の中で紗江はグロッキーになっていた。勝浦のお店でつい調子にのってしまい飲みすぎてしまったのだ。一方で、同じくらい飲んでいたチェリーはケロリとしていた。
 「指定席が取れて良かったわ。この状態で新高崎まで立つのは結構シンドイわ」
 駅で買った水を飲み干した紗江はチェリーの顔を見る。
「あんだけ飲んでたのに、大丈夫なの?」
「うーん。酔っている感覚は少しくらいですね」
 組み込まれている機械によってアルコールの影響を受けにくくなっているのかと紗江は思い、それはそれで便利だなと考えた。紗江が酔っ払う事以外で体調を崩すといえば、変な物を食べたり、風邪をひいたり、陰陽術を影響を受けるくらいだ。
 「ところで紗江様、どうして私を自総研に受け入れてくれたのですか?」
 その話を振られて紗江は少し困った。明確な言葉が思い浮かばないからだ。しかし、このまま黙っておくわけにはいかなかった。
 「そうねえ、うまくは言えないけど、似た者同士・・・だからかしらね」
 「似た者同士ですか」
 「そう。自総研には他に行き場がない存在の人達が多くいるの」
 「行き場のない人達ですか?見た感じそんな感じはしませんでしたが」
 「クリーチャーと聞いた事はあるでしょ?自総研にはそういう人達もいるの」
 クリーチャーと聞いてチェリーは思い出した。確かに普通の人間とは違った異形の人達がいた。しかし、その人達は自分が自総研に来た事を、新たな仲間として迎え入れてくれた。
 「彼らはもともとは過去の戦争において生物兵器と呼ばれる存在だったのは聞いたでしょ?その戦争が終わった後、作った人達の予想を超えて自然繁殖してしまったのよ。本来は繁殖できないように遺伝子を弄られていたけど、極限の状況におかれて進化て、繁殖能力を身につけたと考えられてるのが一般的ね。たしかに自然には、性転換する生き物がいるから不思議じゃないわ。自総研にいるクリーチャーは皆、これらの子孫ね」
 「自総研には昔、生物兵器があったのですか?」
 「ないわ。自総研ができたのは戦争が終わってからしばらく後になってからよ。自総研に来るクリチャー達は皆、言葉を理解できるレベルで産まれてきたのがほとんどよ。皆、自我が目覚めた時、頭を悩ますのよ。ここはどこなのか?自分は何なのか?湧き上がる破壊衝動に呑まれて暴れたりするの。街で暴れたクリーチャーはほとんどその場で処理されてしまうけど、113年程前から局長の砲身で、戦いを経て大人しくなったクリーチャー達を預かるようになったの」
 「預かったクリーチャー達はずっと大人しくしているんですか?」
 「暴れなくなった個体もいるけど、基本的には生物兵器だから破壊衝動を抑えられず暴れだす事もあるわ。その時は私達が相手になって叩き伏せるの。そうすれば落ち着きを取り戻すものとわかっているわ」
 現に、自総研では時々、クリーチャーが暴れる事があるが、表に出ないのは他のクリーチャー同士によりに連絡網の構築により、兆候が見られたらすぐに大治郎達に伝わり、カウンセリングや実戦を交えて解消させている。
 「このレベルのクリーチャー達が自総研の事を知ったら、命がけでやってくるの。ヒトに見つかったら通報されて排除されてしまう事も理解して、必死に姿を隠して来るのよ。海を渡ってくるときは船に忍び込んで息を潜めたりしてね。皆、自分自身に悩んでる。自分は何なのか。何のために存在しているかとかね」
 いくら自総研に辿り着いたとしても、ここでは社会に馴染む為、普通のヒトと同じく自総研の仕事をしていく。もちろん大抵のクリーチャー達はそれぞれの個性をいかして作業を行うが、中にはそのような生き方に馴染む事ができず、自総研から出て行き、街で暴れてしまう。その場合は処理されてしまうが、今まで紗江や大治郎がそういったクリーチャーを退治してきたが、自総研で生活した影響か物を壊したりするがヒトに人的被害を与えず、2人を連れて来るように呼びかけるという。この場合のクリーチャーが戦って死ぬ事を望み、自総研で生活した事と戦ってくれた事に感謝して生涯を閉じるのである。自総研にいる他のクリーチャーは、2人に討ち取られた事は幸運であると考えるようになっている。
 「・・・私や兄さんも同じようなものなのかもね」
 その言葉を聞いて、チェリーはハッとした。チェリーも紗江も他のヒトとは違うのだ。紗江はずっと昔から地球にいる上に戦闘に関しては圧倒的な強さを保持している。チェリーは機械との融合体で普通のヒトとは違った感覚を持っている。人の姿をしていなかったらクリーチャーと呼ばれてもおかしくない。
 紗江も大治郎も正確に言えば地球出身ではない。超高度文明崩壊後の戦争終了後に地球に辿り着いた宇宙船に乗っていたのだ。宇宙船に乗っていたのは紗江と大治郎の2人だけで、その理由も地球に飛ばされた理由はサッパリ不明であった。寿命も地球のヒト達と違い、あきらかに長寿である。知り合ったヒトが年を取ってこの世から去っていくのを幾度となく体験していった。地球に来た時は、子供の姿だったが10年くらいで今の姿になって、時間が止まったかのように続いている。故郷がもう無い事は2人とも察している。今は自総研が故郷だ。
 「さてと――」
 紗江が袋からガサガサと缶ビールを取り出す。
 「ま、まだ呑むんですか?」
 「そうよ。休憩は終わり♪。特急列車で飲むビールは格別よ。チェリーちゃんの分とおつまみも買ってあるわ」
 そういうと500mlビールの6本セットとおつまみをテーブルにおいた。
 「終点についたら、チェリーちゃんに担いでもらおうかな~?」
 「そうなる前に飲むのをやめてくださいね」
 湿っぽい話はこれで終わりになり、ビールを飲む2人を乗せて、夜の闇を切り裂きながら特急列車は自総研がある街へと走っていった。

第二章へ続く

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第1章・その8

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第1章・機巧少女:その8

 「あーあ。結局、ミチザネがこうなった原因はわからずじまいか」
 「でも、重さも増えたのに振り続けられているからいいじゃない」
 「そう。例の夢の中で散々振り回したわ。だから、納得がいかないのよ。本当に夢だったのかしら?それとも――」
 何かを言いかけた晴海が大きく切ったハンバーグを一口でほおばった。自分の獲物が突然、姿を変えていたら誰だって納得がいかないのは不思議な事ではない。
 「何やら楽しそうな話をしてるじゃない。マルール12、持ってきたわよ」
 そう言いつつビールの入ったグラスをテーブルに女性が置いた。その人物には紗江は見覚えがあった。いや、忘れたくても忘れれない。
 「ソフィア様、今日はここにおいででしたか」
 「あら、私がこの国にいる時は基本的に、ここに滞在しているのよ」
 「一国の女王様が、パブで軽々しくそんなこといっていいのかしら?」
 月島がソフィアの置いたビールを受け取る。紗江はソフィアの発言にツッコミを入れた。
 ソフィア・リーフ・サウザン。それが彼女で名前であり、紗江達がいるイースト・ペイジング王国の東隣に位置するサウザント・リーフ王国の女王を務めている。春先にイースト・ペイジング王国の国家元首であるクラル姫を巻き込んだ誘拐疑惑騒動を引き起こしており、その騒動の解決に大治郎と紗江が出張ったのが馴れ初めであった。しかし、ソフィアは本来の目的とは別に、王国軍の実力を確かめるために2人を呼び寄せた事が発覚し、利用料及び誘拐疑惑の迷惑料として多大な借金を背負ってしまったのだ。ただ、イースト・ペイジング王国とサウザント・リーフ王国の間で経済協力に関する条約が結ばれたので、本来の目的は達成された。そんな多大な借金を背負ったソフィアであったが、先日、自総研に来た時に全額支払ったのだ。居合わせた大治郎や局長は、どこかで銀行強盗もしくは資金不足で悩んでいる国庫から無理やり持ってきたのではないかと疑ったが、そういうお金ではないと言い切られてしまった。一方、サウザント・リーフ王国の政は腹違いの弟であるカズサ・リーフ・サウザンに全て任せており、自分は外回りの方が合っていると公言し、自総研にしょっちゅう現れてはクリーチャー退治の仕事を代わりに引き受けていくのであった。その時の活動拠点はこのパブの2階の自室であり、店が開いている時はいつも呑んでいるそうだ。そんなこんなで、一国の女王様に気軽に合えるお店という噂が広がり、色んな人が訪れている。フランクな彼女を見て、喜んだり、意表をつかれた顔をするなど様々な反応があるそうだ。
 「それで、彼女がさっき話していた遺跡で見つかった人ね。さっき聞いたと思うけど、私はソフィア。隣国のサウザント・リーフ王国の女王をやってるわ」
 「チェリーです。どうかよろしくお願いします」
 「自総研に住んでるんでしょ?じゃあ、そのうちそこで会うかもしれないわね。その時はよろしくね」
 女王様とは思えないフランクな対応に面食らうチェリーであったが、
 「ソフィアがフランクなのは、この店にいる時と私達しか周りにいない時くらいよ。後はそれなりに女王の風格を出すわよ」
 「好きで女王になったわけじゃないからね。気楽に出来る時にそうしないと息が詰まるわ」
 「サウザント・リーフ王国・・・。今、調べて見ましたが、私が覚えている範囲では千葉と呼ばれていた場所と同じ所にありますね」
 「チバ?たしかに大戦前はそう呼ばれていたとか、そういう事を何かで見た事あるわ。・・・・・・・って、あなたどうやって調べたのよ?」
 「チェリーにはネットワークにいつでもどこでもアクセスできる能力があるのよ。それでも頭の中でね」
 「何よソレ。新しい精霊術か何かかしら?」
 「精霊術じゃない事はたしかね。チェリーは精霊術が失われていた時代の生まれだから。差し詰め、人間コンピューターと言えば良いかしら?」
 「それだとしたら、ロボット何じゃないの?」
 「うーうん。チェリーは有機体の身体よ、私達と同じね。だけど、その有機体の身体の細胞レベルでナノマシンみたいな物が全身にくっついてるらしいわ」
 「ねえ、今度、私の城に遊びに来ない?いや、ぜひとも来て欲しいわ。セレスとか貴女の事を知りたがるわ」
 「待って。それなら私の家に先に来て欲しいわ。自分の事は覚えていなくても昔の世の中の事は覚えているんでしょ?当時の人気商品とかの情報があったら教えて欲しいわ」
 いつの間にか、ソフィアとの会話に晴海が割り込んできた。その後、チェリーがいた時代の事を聞きだそうと2人で揉め始めるわ。月島が泥酔して役に立たなくなるわ。なんやかんやでワイワイ騒いで無事に終わった。

続く

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】第1章・その7

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第1章・機巧少女:その7

 「うーん。すぐには慣れませんね。このスリットの高さには」
 チェリーが街を歩きながら、青海にコーディネイトしてもらった服の感想を述べる。あれからいくつかの服を試着したが、デザインや今の季節にあった物ではなかった。挙句の果てに、“これは服なのか?”と目を疑うような着せられたため、着物をベースにした服に決まったのであった。青海は夏のアレの件や紗江と大治郎に出会った事により、孫である晴海が色々変わったとかいう理由でタダでいいと言われたが、後でどんな事を言われるかわからないので、しっかりと料金を払った。(それでもいくらかの金額は、勝手に割り引かれてしまったが・・・・・・)
 「私の服は買ったので、次はどこに行きますか?それとも、自総研に戻りますか?」
 「うーうん。一杯引っ掛けて帰りましょう。あなた・・・お酒は飲める・・・よね?」
 「お酒ですか?多分、飲んでたと思いますよ」
 「じゃあ、どれくらい飲めるか試してあげるわ(年齢を考えたけど5,000歳はいってるから問題ないわね)」
 2人は鉄道の駅に向かいながら他愛のない会話を続けた。
 「あの建物は国技館でしょうか。この駅の位置とあの建物の位置は覚えがあります」
 ボースカントリーズ駅に降り立ったチェリーが言った。彼女は頭の奥底に眠っている記憶の片隅に触れているのだろう。ここに2人が来たのは、サウザント・リーフ王国の勝浦がパブを開いたという話を聞いたからだ。何でも開店にはソフィアの力が働いており、中の料理人は王城務めレベルを送り込んでいるため、料理のレベルは3つ星以上は確定ともっぱらの噂である。2人が到着した時点で、店内はすでに混雑しているが、見知った顔に気づくのは難しくなかった。
 「ビールを飲むにはまだ早い年頃じゃないかしら?」
 「ご挨拶ね。これはただのオレンジジュースよ。私がビールを飲めるのは15歳になってから」
 紗江に声をかけられたベレー帽を被った少女が反論する。よく見ると服装は初等教育学校の制服であり、パブには不釣りあいだ。
 「お嬢様。紗江様はお嬢様の格好がここでは合わないと仰られているのです」
 付き添いと思われる紳士服を来た男性が少女に声をかける。少女は東雲 晴海。男性は晴海の執事の月島 辰巳である。晴海は青海の孫娘であり、東雲グループの先代会長の忘れ形見でもある本物のお嬢様である。夏にイースト・ペイジング王国の首都で大治郎達に賞金をかけた市民参加型の大騒動を引き起こしたのであった。それがきっかけで大治郎や紗江に知り合い、自総研に度々入り浸るようになった。
 「さっきからゴチャゴチャ五月蝿い執事ね!マスター!この朴念仁にぴったりのストロングエールを1つ持ってきて!」
 「お嬢様!それでは帰りの車の運転が!」
 「代行を呼べば済む話でしょ!私がここでオレンジジュースを飲むのが不釣りあいなら、代わりにあなたがビールを飲めばいいのよ!」
 「相変わらず執事を振り回してるわね」
 隣のテーブルに腰を落としながら紗江は呟いた。
 「いえ、あなた方とお会いしてからお嬢様は変わりましたよ。学校でご友人もできたり、家庭教師を電撃で痺れさせて抜け出したりしているんですよ。ところでそちらの方は?」
 「この子はチェリーよ。実はかくかくしかじかで――」
 紗江がチェリーの事について話す。
 「成程。それはとても難儀でしたね。でも、紗江様達の所にいられるようになったのは幸運ですね」
 「その服・・・。おばあ様がこの間ファションショー向けにデザイナーに発注していた服じゃない。もらった時に写真を撮られなかった?」
 「そういえば、何枚か撮られていたわね。理由はわからないわ」
 「おそらく、ファションショーで反応を見るよりも、さっさと商社に売り込んだ方がいいと思ったのね。所で、私の刀について何かわかった?」
 晴海が壁に立てかけている刀・ミチザネに指を向ける。晴海は夏のアレの後、大治郎に頼みこんで剣の稽古をつけてもらった。クリーチャーが出没する自総研が管理する森の中でキャンプはかなり過酷だったらしく、自総研に戻ってから迎えが来るまで事務室の片隅で眠り込んでしまったのだ。そして目を覚ますと刀が変わっていたのだ。眠り込むまではたしかに何の変哲もない長刀の刀身であったが、目を覚ますと刀身が少し伸びたうえに紅色に染まっていたのだ。当初は、誰かに摩り替えられたのではないかと思われたが、晴海自身が見た夢の中でミチザネを鍛えた物と全くそっくりであったため、自総研で保管している超高度文明時代の遺物が何かしらの影響を及ぼしたのではないかと色々調べたが、結局手がかりはなかったのであった。

続く

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