東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第5章・爆裂暴走車両:その5
「なになになに?なんなの、あのゴツい車は!?」
目を覚ましたソフィアは目に入った赤く大きなピックアップトラックを見て開口一番に叫んだ。
「東雲グループの会長その人が直々に私達の相手をしてくれるそうよ」
「流石にそれは知らないわ!とにかく、あなたの精霊銃を借りるわよ」
「いいけど、ソフィアの精霊銃はどうしたのよ?ちゃんと渡したでしょ?」
「あなたの方の銃が威力が高いからよ。いいから使わせて!」
運転しているセレスから強引に精霊銃を奪い取り、相手の車に向けて精霊銃を放った。しかし―――
カンッ
乾いた音と共に弾が弾かれる。大治郎や紗江も加わり銃撃を加えるが結果は変わらず、乾いた音が響き渡るだけであった。
「無駄無駄ぁ!この車には大量の金をつぎ込んでいるんだ!」
この返答に回答するかのように大治郎がチャージ弾を撃ち込むが、こちらも先程の精霊弾と同じ弾かれてしまった。
「効かないねぇ」
スピーカーから会長の余裕たっぷりな声が響いてくる。
「あの車のボディには何か仕掛けが施されているな。自分達の銃ではどうしようもできない」
「我々は君達に比べて武術や精霊術の技量ははるかに下だ。それで勝負するとしたら、瞬く間に負けてしまうだろう。だが、私には君達に勝る物が1つだけある。それは資金だ。資金力は力の1つ。多くの優秀な技術者に金を払い、この車を設計、開発したのだ!いわば、この車は最新技術の結晶!そしてこの車の相手はこの星の有数の実力者達。新型の性能を試すには丁度いいわ!」
「気をつけろ!相手の言っている事は本当だろう。セレス、あの車から体当たりは何としてでも避けろ!耐久力未知数のこの軽トラだと、一撃で壊れる可能性があるぞ」
大治郎がセレスに向かって叫ぶ。たしかに改造が施されている軽トラであるが、自分達が手を加えたものではないため、耐久力に対しては本当にわからなかった。軽トラが壊れてしまえばリタイヤという事だけしかわかっていなかった。
(精霊銃や精霊術の威力を軽減する方法より、資金を増やして反射するコーティングを施したのは正解だった。これで相手の遠距離攻撃を防げたのはいいが、問題は近接攻撃だ。あの軽トラに施した改造では、この車による体当たりは2回まで耐えられるようにしている。だが、問題は相手の近接攻撃だ。戦車や列車をたやすく切断する剣術を喰らえば、いくら対衝撃防御力をあげた所で耐えられるかはわからない。体当たりはここぞという時にしかできない。時間もかければ、対策も立てられしまう。ここは用意した人海戦術方法で一気に攻める短期決戦で行くしかない)
続く
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