東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第5章・爆裂暴走車両:その6
逃げる軽トラ、追うピックアップトラック。さらにそのピックアップトラックに追随し、軽トラを追うバイカーや小型ドローンの列が見える。大治郎達はピックアップトラックを始めとする集団に銃撃を加えていた。バイカーや小型ドローンを追い払うのは難なくこなしているが、会長が乗っているピックアップトラックに対しては決め手を欠いていた。大治郎達が撃った精霊銃の弾がたまたま、トラックのタイヤに命中し、パンクする。
シュボッ!
しかし、空気が入るような音と共に、タイヤのパンクが修復される。タイヤそのものを破壊しない限り、あの車の機動力は低下しないのであった。トラックからの攻撃を防ぐため、荷台に乗って機銃を操作している男に、精霊銃を向けて牽制している状態で留まっている。
「会長!狙いが的確すぎて機銃が撃てません!このままでは私か機銃のどちらかがやられてしまいます!」
「無理はするな月島!他の攻撃部隊とタイミングを合わせるんだ!おおっ!」
返答中に会長が急ハンドルと急ブレーキを行い、荷台に乗っていた月島は床に思いっきりぶつかった。会話の最中の僅かのスキをついて、軽トラが急接近してきたのだ。
「タイミングが少し遅かったか」
精霊銃や精霊術ではダメージを与えられないため、接近しての斬撃を繰り出そうと大治郎達が接近したのだ。
「ねえ、兄さん。コレを使っていい?」
紗江が手に持っている物を見せる。実弾だ。並の精霊弾よりもはるかに威力がある。ここで使えば、バイクの燃料タンクに打ち込めば、バイカーはもちろん、その周りの相手も爆風で吹き飛ばす事が出来るだろう。
「窓ガラスやボディは、あの様子だと防弾装備なのは確実だろう。牽制しか出来ないぞ」
「何とか、窓ガラスだけでも壊せれば流れは変わると思うのよね」
実弾を装弾し、バイクの燃料タンクに向けて発射する。燃料タンクに打ち込まれた車は爆発し、乗っていたバイカーと周辺のバイカー、そして爆風がピックアップトラックに襲い掛かった。
「爆風でもだめなの~?」
爆風と煙を切り裂きつつ、全く変わらないトラックの姿を見て、紗江は溜息交じりに呟いた。
「実にいい。これなら国家間の小競り合いが頻繁に起きている地域に売り込めそうだ」
「会長。それはいささかヘイトを買いそうです」
「ならば、頼まれた時にこっそりと売ればいい事にしよう。しかし、彼らは何をやっているんだ?」
月島と東雲グループ会長が向けた視線の先では、大治郎が紗江を抑えている光景が展開されていた。
「放して兄さん!いいじゃないべつに!」
「だめだ!陰陽術の効果を付加した銃弾だったら、窓ガラスを粉砕するだけでなく、東雲グループの会長まで殺してしまう!それではいけないんだ!」
「眉間に風穴を開けたくらいがどうしたのよ。私がそこもリカバリーするわよ!」
「市民が大勢参加しているんだぞ!やったらやったで余計な騒ぎが起こる!」
「じゃあ、どうするのよ!もう、撃鉄まで引いてしまったのよ!このまま、ただで戻すのは絶対に嫌よ!」
どうやら、紗江が弾丸に陰陽術の効果を加えて、撃ち込もうとしているようだ。たしかに陰陽術の効果なら、耐性等ありとあらゆる制限を無視する事ができるので、効果は確実にあるだろう。
続く
PR