東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第6章・招雷童子:その1
国技館やシーサイドガーデンより南。海やいくつかの埠頭を越えた先にある“湾岸部”。その一帯が最終ステージに指定されている。その湾岸部だが、道路を除く大部分の土地が東雲家の物となっている。大治郎達は環状1号国道から続いている橋を越えてきた所に軽トラを止めていた。遠くに東雲家の屋敷の一部である逆三角形の形をした建物が見える。
「私の役割はここまでよ。ソフィア、怪我をしないで帰ってきてね」
「何よセレス。私だけやられるとでも思ってるの?」
「そうね。あの2人はワンマンアーミーのレベルを超越しているから特に心配する必要はないと思うけど、あなたはそこまでのレベルじゃないから。トドメを刺そうとして転ぶかもしれないわ」
「何か馬鹿にされている気がするんだけど・・・」
「本当よ。ソフィアの腕はたしかだけど、あの時は危なっかしい所が結構あったわ。私がいなかったらどうなっていたことかしらね」
セレスがやれやれという感じのジェスチャーをする。この2人のやりとりを大治郎と紗江はニヤニヤしながら眺めていた。
東雲家の土地という事あって警備はとても厳重であった。差し詰め、今までの総集編といった感じだ。敵の配置は地上や空中、至る所で待ち伏せをしている。土地全体をこの時の為に改造を施したようだ。大治郎と紗江は刀や銃で攻撃を防ぎつつ各個撃破していく。相手の砲弾などを弾ける装備を持っていないソフィアは、華麗な足捌きで攻撃をかわしつつ距離を詰め、打撃を与えている。中々の身のこなしだ。大治郎や紗江程の戦闘レベルではないが、自国の軍に配備されている戦車を叩き壊すレベルの威力はある。ヘリやドローンを落とし、戦車や車を破壊し、3人が通った後は金に目がくらんで参加した人々がバタバタと倒れていた。その状況に割り込むかのように、生垣を潰しながら、赤いピックアップトラックが現れた!
「このまま、すんなりと通しはしないぞ!」
先程、川に落ちた会長と執事だった。だが、車のエンジンがあきらかにおかしい。水没したのがあきらかに影響している。まさにその通りだったのか、いきなりエンジンが止まってしまった。
「ああ、まただ!動け!動かんか!」
会長が慌ててエンジンを再始動しようと、キーを回してキュルキュル言わしているその隙を逃すわけがなく、大治郎の刀がトラックを襲った。
ガシュ!!
見事な剣閃がトラックを一瞬で鉄くずに変わる。最新の技術が詰まったトラックはもう動かない。
「あー!我が社の新商品の試作品がーーー!!!」
斬撃の衝撃で車外に放り出された会長が、頭を押さえながら叫んでいた。
続く
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