東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第6章・招雷童子:その4
飛び込んだ部屋は室内に置いてあった物を片付けたのか、ガランとしていた。正面の壁には沢山のモニターが設置されており、その傍らには椅子とテーブルが置かれていた。三人がモニターに近づくと今まで通ってきた所の映像が映し出されていた。その一箇所のモニターには、この部屋にいる3人の姿が映っていた。その3人が近づいたのを見たのか、椅子がくるっと回った。
「ようこそ東雲家へ」
椅子を回してこちらを向いた人物が喋る。椅子に座っているのは小柄な少女だ。服装はクラル王国内に存在する名門の初等教育学校の制服に帽子を被っている。
「やっぱりあなた達には簡単すぎだったわね」
「誰が今回の企画者かと思ったら子供じゃないの。どこかしら底が浅い部分が感じられた原因はそれね。言っておくけど、私と兄さんは市民をいっぱい集めたところでどうにかなる腕じゃないのよ。この女王様だけは違うみたいだけど」
「納得いかないわね。私が遅れでも取ったというの?」
「あなた、RIKISHIにボコボコにされていたじゃない。忘れたとは言わせないわ」
紗江とソフィアがいままでの戦闘内容について口論を始めた。内容は至極子供染みた会話のため詳細は割愛する。
「・・・・。まるで子供みたい。大人って堅いものかと思っていたのに」
「大人と言っても色々あるぞ。紗江は余り参考にはならないな。普段、いかに仕事をラクにこなすかどうかばかり考えているからな」
大治郎が紗江の普段の生活ぶりをバラす。それを言われて、厳しい表情を大治郎に向ける紗江であった。
「今回の騒動の企画者は君だろう?せめて名前を教えてくれないかな?」
「私は東雲 晴海(しののめ はるみ)。あなたの言うとおり、今回、クラル国の首都を巻き込んであなた達を倒したら、最大100億円!の企画を立ち上げたわ。本当に実施する事は思わなかったけど、初等教育学校の最後の夏休みの思い出になったわね」
「それは残念だったわね。その企画は私達の勝ちで終わりよ。さっさと賞金の小切手でも貰って帰りたいんだけど」
「ダメよ。まだ私がいるわよ」
紗江の催促をばっさりきった晴海は、机に立てかけてきた長い刀を持ち出した。刃の長さは晴海より長い刀だ。
「あなたが私達と勝負するというの?はっきり言ってあなたは弱いわよ。せめてオータムリーフフィールドで戦った狐くら――」
紗江が言い終わらないうちに足元に雷撃が飛んできた。飛ばした本人はとても不機嫌な顔に変わっていた。
「ごちゃごちゃうっさいわね!私は企画者よ!あなたの意見なんか聞いてないの!プログラムは最後まで実行するのよ!」
ヒステリックに叫ぶ晴海に言い返そうとする紗江だが大治郎に制止される。
「まあここは、しっかり相手をしてやるのも大人の務めというものだ」
(さっきの電撃は精霊術を使った感じはしなかった。おそらく、鹿部と同じような独自の能力である可能性が高い)
紗江を宥めつつ、晴海の正面に刀を抜いて大治郎が立った。
続く
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