東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第1章・機巧少女:その2
埋没した施設を調査している人達に話を聞くと、施設の形を保っている部分が音波装置等でわかったとの事。施設は東西に伸びており、崩壊が激しくカプセルが見つかった所は西側で、東側に行くほど施設が形を保っているらしい。大治郎達が調べた所、広い空間と幾つかの実験施設と思われる部屋とカプセルが発見され、クリーチャー及び遺失技術の影響は受けないと判断され大治郎達は現場から引き上げた。しかしその数日後、再び大治郎達がここの現場に呼ばれた。連絡をしてきた研究者はかなり興奮しており、話を聞けばさらに新しい施設が見つかったとの事。興奮している原因は少なくとも4,000年以上は埋もれていたのにもかかわらず、施設の機構が生きているのと事だ。たしかにこれは大発見である。しかし、しかしだ。物は地面に4,000年以上も埋もれて保守も修理もできない状態にもかかわらず現在も稼働しているといかにも危ない雰囲気を醸し出している。その施設の中には一体何があるのか誰もわからない。カプセルに入っていた白骨化した死体は、ひょっとしたら超高度文明時代の技術の大半を喪失する原因になった戦争において作られた人型のクリーチャーの可能性も否定できない。施設が動いているという事はそこには何かとっておきの物がある事は容易に推測できる。そこまで考えた大治郎と紗江はいつになく神妙な面持ちであった。
「たしかに稼働している。間違いない。ここの施設はまだ生きている」
静かにしていると僅かだが、機械が動いているような駆動音が聞こえてくる。中に入るためと思われるキーパッドを突いてみたところ、それも起動したからだ。
「こういったロックをパパパと解除してくれる装置でもあれば楽なのに・・・・・・」
紗江のキーパッドに触っている手から紫炎が漏れている。陰陽術を使って証拠だ。
「それがあれば皆、苦労はしないよな。今現在、この地球上においてもっとも安全に装置のロックを解除する事が出来るのは紗江の陰陽術くらいなものだからな」
「私が動けない時はどうするのよ?」
「その時はその時だな。できる限り無理せずこじ開けるしかないだろう」
「あーあ。本当にこういったロックを簡単に解除してくれる物でもなんでも欲しいわ。結構、神経使うし。ほら、開いたわよ」
プシュー。
4,000年以上閉まり続けていた扉が時間の流れを感じさせない程の勢いで開き、埃と土臭いが混じった空気が流れてくる。部屋の中は暗く、機械が動いている事を示す数多の光だけ仄かに辺りを照らしている。
「見てあそこ。部屋の中心部にある何かを覆い被さるように木の根が伸びてるわ。ここ、真上に桜の大木があった所かしら?」
どこの誰かが植えたのかはわからないが、この遺跡の真上にはたしかにかなり立派な桜の大木があった。この時代の桜は、はるかに昔に品種改良が行われており1,000年単位で生きている物も確認されている。どんな劣悪な環境でも枯れないようにされたのだろう。
「兄さん、この根っこが覆っているのはカプセルよ。他の白骨死体が入っていたのと同じタイプみたい」
紗江の発言を聞いて研究者達はこぞってカプセルに近づいた。施設が生きている中に一個だけ置かれているカプセルに期待するのは必然だった。そしてその期待はすぐに驚嘆の声となって現れた。こカプセルの窓から中に女性が目をつぶって眠りについているのがわかったからだ。中が液体に満たされており、時間が止まったような感じだ。
続く
PR