東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第1章・機巧少女:その4
「結論から申し上げますと、彼女の血液や細胞にナノマシンのような物が認められます」
自総研の一室である医療室で大治郎は医師から診断の結果を聞いていた。もちろん対象者はチェリーだ。彼女の健康診断の結果である。
「治療用ナノマシンを投与する事は超高度文明時代にはよくあった事と記録されているが、それではないのか?」
「たしかに治療用ナノマシンではないかと考え、調査を行いました。しかし、治療用ナノマシンとは思えません。怪我をした場合、ナノマシンにより細胞再生の時、一時的に細胞にナノマシンが含まれますが、時間と共に血液内にナノマシンは戻っていきます」
「だから、ナノマシンのような物と言ったのか」
「そうです。決定的なのは細胞にびっしりとくっついている事です。遺伝子レベルといってもいいかもしれません。それも全身の細胞も同じようになっていると思ったほうがいいでしょう。このような例はいままで見たことも聞いたこともありません。超高度文明時代の技術で今の技術で、彼女のような身体にする事はどこも不可能でしょう」
「機械と人間の遺伝子レベルの融合・・・」
「彼女が持っている能力については私達にはわかりません。ひょっとしたら、食事はいらず電気エネルギーだけで生きていけるかもしれませんね。それと、彼女の血液を他の人に輸血するのは控えた方がいいでしょう」
医師から一通りの説明を受けてから大治郎は改めて思った。彼女はブラックボックスの塊であると。どのような能力が備わっているかは彼女自身も現段階ではわかっていない。だが、現段階でわかっている事は機械との融合による身体能力の強化だろう。確実に寿命や頑丈さが上がっている。何千年も眠り続けて、目が覚めてからすぐの状態で平然と動き回れる時点でそうだった。その事を聞いた紗江は、どういった能力があるのか、どうやったらそういう能力を見れるのかという事に興味津々であった。
「チェリーちゃん。あなたの服を買いに行きましょう。いつまでも私の服だとサイズが合わないし、落ち着かないでしょ?」
そう言い出し、紗江はチェリーを外に連れ出していった。
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