かつて地球の暦が西暦と呼ばれていた時代に宇宙に放たれた“ボイジャー2号”は数十世紀の歳月をかけて、広大な宇宙ネットワーク文明の調査隊に発見される。その解析結果より地球に広大な宇宙ネットワーク文明の使者が降り立った。その広大な宇宙ネットワークの仲間入りを果たした地球には様々な技術が導入され、地球の人達の生活は飛躍的に向上した。しかし、繁栄と栄華の超高度文明は突如、地球に飛来した巨大隕石によって崩壊、その後の生き残った人類同士の戦争により超高度文明の技術の大半が失われてしまった。
そんな黄昏の世界から5000年程度の月日が流れた――
東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第1章・機巧少女:その1
初秋。地面を焦がすように照りつける太陽の日差しも和らぎ、過ごしやすい日々が始まっていた。木々は未だに緑の葉をつけており、冬の訪れは未だ遠い予感を醸し出していた。そんな中、大治郎と紗江はロックルーインズと呼ばれる超高度文明の遺構が残されている地域に足を運んでいた。近頃、ここの発掘調査が本格化している背景もあるが、先日、白骨化した人間に遺体が入った壊れたカプセルが見つかり、ニュースになる等の話題となった。一般的な遺構の調査であるならば、クリーチャーが潜んでいる可能性について注意を払うため、クリーチャー退治を請け負う傭兵等を雇って警戒をすればいいが、超高度文明時代のシステム等が生きている可能性が有る場合は、大治郎達が所属している自然総合研究所(自総研)等の研究機関が調査に立ち会う必要が出てくるのだ。超高度文明時代の産物は、何が起こるかわからない、何のために作ったのかわからないといった代物のオンパレードであり、迂闊に触って施設に閉じ込められたり、頭にキノコが生えるといった信じられない事故も起こったりしている遺失技術の塊である。
「これが仏さんね」
紗江が壊れたカプセルに入っている亡骸を見る。カプセルはひしゃげていたり、ひび割れてしまったりしている。
「このカプセルで何をしようとしていたのかしらね。見ると中に液体で中を満たしていたような後があるけど」
「超高度文明崩壊後の過酷な環境をコールドスリープのような状態で乗り切ろうとした、と考えるのがスジかな」
超高度文明崩壊後の地球環境は酷いものであった。隕石の衝突の衝撃で火山が噴火、地震の頻発、地面の隆起や陥没等の地殻変動も発生していた。このカプセルがあった施設も隕石が地球に衝突した際の直接的な被害は免れたが、その後の地殻変動に巻き込まれて施設の破壊と共に、埋没してしまったのだろう。5,000年程前の地球環境はとても厳しく、草木も人間も明日を生きるだけで精一杯だったと記録されている。銀河ネットワークから切り離され、地球に残された人々は稼動できる技術を使ってありとあらゆる方法で生き延びる方法を試みたという。そんな過酷な環境の中、戦争も発生したため、戦火から逃れるため、ある人達は地の底、またある人達は海の底に逃れていったとも記録されているが、その人達がその後どうなったかはわかっていない。
続く
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