東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第6章・招雷童子:その5
何らかの方法で心得したのか、晴海の剣術は思っていたよりひどくはなかった。身長より長い刃渡りを持つ刀を扱うためか、脇に刀を構えている。不思議な事に細い腕や小さい手であるのに関わらず、刀自身の重さに負けておらず、両手でしっかりと振ってきている。だが、斬り上げ、突きといった攻撃は悉く大治郎に防がれてしまっていた。
「基本は出来ているようだけどそれだけではダメだな」
「くっ・・・」
鍔迫り合いを行っている刀がカチャカチャと音を立てる。余裕の大治郎と厳しい表情の晴海でどちらに分があるのかがわかる。
「君の目の前にいるヒトは、君が何をどうやっても勝てない相手だ。全力を出さないと後悔するぞ」
その言葉を聞いて、ムッとしたような表情が晴海の厳しい表情に混ざる。刀を弾いて、薙ぎ払う様に振り回し、大治郎と距離を取る。そして、刀で地面を刺すと雷撃が地面を這うようにかなりの速さで雷撃が飛んでくる。大治郎はそれを簡単に横に避けてしまう。
「ジャンプで避けてもよさそうね」
後ろで観戦している紗江が呟く。避け方としては剣で衝撃波を飛ばす物となんら変わりがないためである。振り下ろされた刀を大治郎が受けると共に身体を引き、晴海がバランスを崩して前のめりになった。その無防備な背中に向けて、峰の部分で思いっきり叩き、晴海は地面に叩きつけられる。
「まるでやりすぎの稽古みたいね。これであの子が懲りてくれればいいのだけど」
ソフィアの期待を裏切るかのように、突如、晴海を包み込むように電気のシールドが発生する。バチッという電気の音と共に、大治郎の刀に電流が流れ右手が痺れる。
「さっきの電撃といい、その電気のシールドといい、それらは精霊術ではないね」
「やっぱりわかる?私は電気人間じゃないけど、いつからか電気を出せるようになったわ。詳細はわからないけどね」
「差し詰め、電気を自在に操る能力という感じかな。それを使ってどう戦うかを見せてもおうかな」
刀ではなく精霊銃を構え、発砲する。しかし、たしかに精霊弾は命中するコースであったが、不可解な軌道で反れて壁に命中する。その動きを見て、晴海が不敵な笑みを浮かべる。
続く
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