東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅳ ~【小説版】
第5章・爆裂暴走車両:その8
反対車線に逃げ込んだ大治郎達は、高架上にある非常駐車帯に軽トラを止めていた。見つかってしまうのは時間の問題だが、どうしても一息ついて考えをまとめたかったからだ。余裕があるなら、軽トラの様子も見てみたかったが、軽トラを降りると失格という条件というため、必ずどこかに自分達の行動を監視している人物がいると思われるので、それを行う事が出来ないでいた。
「精霊弾や精霊術は弾かれる。実弾は防弾装備があるはずのなので効果が薄い。近接攻撃も仕掛けようにも、距離を詰めたら逃げられる。そして、軽トラから降りたら失格。おまけにこの軽トラの耐久力はあのピックアップトラックに比べてはるかに劣る」
「残りの耐久値は半分くらいって所かしらね」
「どうするの?これじゃあ、こちらの攻撃が全く通じないのと同じじゃない」
大治郎が現状とを説明するとセレスとソフィアが口を挟んだ。実際、いつものやり方とは違う戦闘を条件で戦っているため、手間取るのは予想していたが相手の車に施した技術のレベルは本物であった。もし、戦車を相手にするように戦ういつもの戦闘なら、お金と時間と優秀な技術者をつぎ込んだ車といえど、すぐに決着はついただろう。
「そう。これからわかるのは、叩き壊すより場外に落としたほうがいいと言う事だ。そこで、陰陽術を付加した弾の出番だ」
「やっぱりそれしかないでしょ。あの時、叩き込んでおけばもう片付いてたわよ」
「そのやり方だと、後々禍根を残すからやりたくない。じゃあ、どうするかと言うとあのトラックを場外に出してリタイヤさせる。この方法に先程の弾丸を使う。よく見てくれ、環状国道1号線は川の上を通っている区間がある。そこにあのトラックを落とす」
携帯映像端末に映し出された地図を見せながら大治郎は説明を行った。用はこちらの攻撃が通じないなら相手を場外に出して、リタイヤにしてしまおうという事だ。道路の修理費等は全部東雲グループが支払うはずだからだ。その説明を終えた頃、遠くから遠くからエンジンの音が響いてきた。
「来たわね。その作戦を実行するわよ」
「ああ、まずは例のピックアップトラックに見つからないとな」
軽トラがスキール音をあげながら、道路の本線へと飛び出していった。
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