東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第6章 突撃した所はハズレでした。・その6
「100人載っても大丈夫と謳っている棚が溶ける様に崩れた。・・・あなた何をしたの?」
「私はお札を貼り付けただけ。そのように崩れるようにね!」
見せびらかせるように紫炎を纏うお札を見せ付ける。その禍々しい雰囲気からセレスの背筋が若干強張る。
(あれが噂に聞く陰陽術。もし、あれが自分に当たったら、私はどうなってしまう?むしろ、私の精霊術がどこまで通じるか。いや、全く通用しないかもしれない!その可能性は十分にある!)
「あなたの記憶のひきだし。空っぽにしてあげてもいいのよ」
もはや、言い方がすっかり悪役である。
「それだけは遠慮願うわよ!」
セレスが発言と共にリングを投げる。カン、カンと床や壁に跳ね返って迫ってくる上に接触した所で火柱が上がる。どうやらセレスが持っているリングは精霊力を封じた武器のようだ。
「ブレイズクラッシャー!!!」
セレスが精霊術の名前を叫ぶ。空間を大爆発させた後、火炎弾を降り注がせるエクスプロードの上位術だ。
ドゴォォォォーーーーン!ガラガラガラガラガラ!
「室内で中々、滅茶苦茶な事をするんだな」
「これぐらいしないと、あなた達には対抗できないでしょ?」
「詠唱速度や精霊術の威力はかなりの物だと見受けたけど、それだけでは紗江から金星を取る事は難しいぞ。力と力の押し合いなんて、紗江の前には無意味だ。紗江の陰陽術にそのような理は通用しない」
「あー、ビックリした。埃まみれよ、まったく」
崩れた棚を押しのけるように紗江が姿を現す。ダメージと負っている描写はない。
「嘘でしょ。まったくダメージが与えなられていない」
「少し、驚いたけどそれだけじゃダメね。さ、次はどうする?」
間髪入れずに、セレスから光の剣が複数放たれる。光属性の精霊術・ホーリーソードだ。しかし、それをすり抜けるようにかわし、一気に間を詰めていく。
「コレなら、どう!」
セレスが手を突き出すと、紗江が後方へ吹っ飛ぶ。
「エアロドライブか。うまく当てたな」
風属性の精霊術の代表的な物である。発動と同時に高速の風弾を発射する。近接、遠距離と使い勝手がいいので多くの人々が覚えている。
「まだよ。ポイゾニックローズ!」
「おいおい。そこで発動されると、こっちにも毒ガスがくるじゃないか。やれやれ」
術者を中心に前後に茨を伸ばし、大きなバラを発生させる木属性の精霊術だ。茨やバラ自体に攻撃能力はないが、そのバラから発生する毒ガスで攻撃するのだ。倒れている紗江に追い討ちをかける。
「さて、効果はどうかしら」
バラから発生した毒ガスが薄まってきたが、その中から紗江が平気な顔をして出てきたのだ。
続く
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