東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第6章 突撃した所はハズレでした。・その7
「残念ね。私にこういったタイプの毒は効かないわよ。カスダメがいい所ね」
「冗談でしょ!?私の術レベルなら大型クリーチャーでも毒に侵せるのに!」
「私の陰陽術を侮っては困るわよ。このくらいなら幾らでも干渉できるから毒なんてあっと中和できるわよ」
紗江は余裕たっぷりに答える。陰陽術の干渉能力は一言で表すならチートそのものだ。小手先の戦法は全く意味を成さない。真正面から向かっていくしかないのだ。セレスはフリーズウォールを唱え、氷の壁を貼るが突っ込んで来た紗江に一気に破壊され、壁に突き飛ばされた挙句、小刀をつきたてられる。
「どうする?まだやる?」
セレスに跨った状態で紗江が問いかける。完全に紗江のペースだ。セレスがここから逆転するには非常に厳しい。
「もういいわ、十分よ。陰陽術も見させてもらったし、私は満足よ」
「ホントに?ここから接近系精霊術を使うと踏んでいたのに。まあいいわ」
武器を収めて、セレスから離れる。
「あなた達はクラル姫を探していたわね。なら、上層階の貴賓室に行くといいわ。謁見の間の近くだからそこに行けばすぐにわかるわ」
セレスがやれやれといった感じの口調で答える。これは紗江に向けられたものではなく、まったく別の誰かのようだ。
「何か不満そうだな」
「まあ、少しはね。あなた達がすんなりここに来る事もそうだけど、本当に来た事に対してもね。本来なら、あなた達がここまで出張る必要はなかったはずなのよ」
「その発言からすると、俺達が来る事で別の目的が達成されるという事だな」
「その通りよ。まあ、それはその内わかるでしょうね。嫌でも。ほら、早く行ってあげなさい。道すがら、血の気が多い兵士が襲ってくるでしょうけど、使い物にならないようにしない程度でお願いするわ。彼らもまた被害者だから」
そういうと指を鳴らし、廊下に続く扉が開かれた。
【登場人物紹介・その5】
・セレス
・性別:女性
・誕生日:11月3日
サウザント・リーフ王国の軍参謀を務める精霊術師。その腕前は精霊術の上級属性も簡単に使役できるレベル。本人は大陸出身のため、どうやら何かの縁でスカウトされて、軍に所属する異例の存在。サウザント・リーフ王国に流れてくる前はかなり無茶をしていたようで、精霊術の腕前もその時に上げた模様。
今回の騒動の要因や事件の裏側を知っている模様。しかし、本人の口から説明するのは面白くないらしい。
軍の中では、精霊の力が宿った道具を作ったりしている。機械系の道具を作っている月崎とは、ものづくり仲間である。
第7章へ続く
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