東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第6章 突撃した所はハズレでした。・その5
ジャラララララッ!ガゴン!!
身構えてすぐ、上から吊り天井が落ちてきた!紗江と大治郎はそれぞれ左右に避ける。
サスペンドシェーリング。金属性の精霊術の中でも扱いが難しい精霊術である。相手の真上に吊り天井を精製して押しつぶす精霊術である。セレスの服装から口元を覆うベールの所為で精霊術を唱えているのかがわかりにくい。ただ、上位属性の上級系に分類される精霊術の詠唱を素早く唱える程の実力だけは判明した。
(ただ、精霊術に長けているだけではないな。予め、仕込んでおいたか、それとも詠唱をキープしてたか?)
大治郎がいくつかセレスの精霊術に対して推測を立てるが、実際に戦闘を行うは紗江である。紗江がそこまで考えているかはどうかはわからない。一方、セレスと紗江の間合いは常に一定の距離を保たれてしまっている。紗江が近づけば、セレスは距離を取る。機動性をあげているため、棚の上にもひょいと飛び乗ってしまっている。
「何を待っているのかしら?」
「・・・・・・・・・・・。」
紗江の呼びかけにセレスは答えない。だが、何かを待っているのはたしかだ。
「待っているのはこれかしら!?」
懐から取り出した陰陽符をセレスが乗っている棚に投げつける。紫炎を纏う陰陽符がセレスが乗っている棚に貼り付くと、不思議な事に棚がまるで豆腐のように音を崩れたのであった。突如壊れた棚と一緒にセレスに切りかかろうと接近を試みる。だが、セレスもそれは読んでいたようで落下しながらも風属性の精霊術・エアスラッシュを発射してくる。下級精霊術に属する術であるが、弾丸のように発射するタイプは、術師の魔力によって数が増えたり、術の形態を変化させたりする事が可能だ。普通は1つもしくは2つであるリング状になった風の塊が6つ、紗江に向かっているのである。しかし紗江は素早く迫る風のリングを避け、小刀で払い、セレスに接近して切りつける。ガキンという音がした。よく見ると、セレスが両手にチャクラムのようなリング状の武器を持っている。刃はついていないが、小刀を受け止めるには十分な程の強度を持っている様だ。もう1つの手に持っているリングを振り回すと同時に炎が飛び出す。この攻撃により再び、間合いが開く。
(落下時の身のこなしといい、武器のリングの仕込み方といい。このセレスという人物は本当に精霊術師か?身体能力が高い精霊術師は普通にいるが、それにしても妙だ。)
大治郎はずっとセレスの動きを観察していたが、現在、その疑問を解決するような術はない。
続く
PR