この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第8章・その7
進軍途中、小規模な深海棲艦と遭遇し交戦を行ったが、特に損害は出ずに終わった。前回、ヌ級と交戦した海域に差し掛かかる所から偵察機を飛ばしているが、中々見つからずにいた。日も傾き始めていた。
「こういう時に限って見つからないわね。どこをほっつき歩いているのかしら?」
「折角、機銃も持ってきたのに拍子抜けですね」
「このままだと日が暮れてしまいます。夜戦になってしまった場合は艦載機は飛びたてませんから、機銃のテストが出来なくなってしまいます」
斉藤にその旨を連絡し判断を仰いだ結果、今日の出撃はこれまでと決まった。しかし、母港に戻る途中、事件が起こった。
『こちら・・・南さつま・・・艦隊。・・・の・・・援に遭遇・・・急、救・・・・・・・・・む』
激しいノイズ音と共に途切れ途切れとなった声が無線から流れてくる。周波数を調べると、緊急用の非常無線帯である事がわかった。
『こちら本部。磯波、今の通信はどう思う?』
「ノイズが酷くてはっきりとは聞こえませんでしたが、おそらく救援要請だと思います」
『なら助けに行くぞ。装備の弾薬量と燃料は十分だ。折角の機会だ、このような非常事態に対応するのも必要だ。戦艦と空母は覚悟しておけ』
たとえ2線級の戦場といえども、相手に増援艦隊が来てしまったらそれなりの錬度がない艦隊では、増援も含めた敵艦隊と立ち回りは難しい。苦戦は必死だ。
『こちら、佐潟2174艦隊。貴隊の救援要請と思われる無線を聞いた。何があった?繰り返す。こちら、佐潟2174艦隊。何があった!?』
斉藤が通信を送るが返答はなかった。そもそもノイズが酷いため、向こうにこちらの通信が届いているかどうかも怪しい。それから何回か通信を送り続けたが、一向に返答がない。やられたか?2線級の戦場とはいえでも運悪く、敵の増援部隊を呼ばれたり鉢合わせしてしまう事もあるだろう。避けられぬ悲劇もあるのかもしれない。
『こちら南さつま2123艦隊陣内提督だ。通信に出てくれた事を感謝する』
「何があったんだ?」
突然、相手の鎮守府の提督が通信に出てきた。
『我が艦隊が交戦中に、他の敵艦隊が加勢した状況に陥った。まず、現在の状況だが、敵には戦艦1、軽空母が3健在している。こちらは、加勢した軽空母の攻撃で鳳翔が中破。制空権を喪失。攻撃の要の古鷹も中破。残りも中破及び小破だ。軽巡と駆逐だから中々、いいダメージは与えられない』
このままでは全滅は必至だ。すぐさま、大淀に位置を特定してもらった。磯波達がいる地点から全力で飛ばせば、10分程度で到着できる距離だ。
「状況を把握した。こちらには空母はいないが撤退支援はできるはずだ。10分粘るようにそちらの艦娘達に伝えてくれ!」
『すまない。協力に感謝する!』
通信を一旦切り、磯波達向けて発信する。
『聞いた通りだ。友軍の撤退を支援する。大淀が示してくれた方向に向かって全力で進撃しろ!10分以内に友軍と接触するんだ!金剛は長距離攻撃で軽空母を狙え!磯波と潮は機銃で敵艦載機に向けて牽制しろ。大井と鳥海はその他の戦艦等の動きをひきつけるんだ!以上だ!』
「了解!全速力で向かいます」
機銃テストの出撃が、友軍の撤退支援の任務に切り替わった。また違う緊張感を感じながら、友軍のいる方向へ進んでいった。
続く
PR