東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第6章 突撃した所はハズレでした。・その3
城の地下というのは、牢屋や地下水路等が張り巡られているイメージがあるが、このサウザントリーフ王国はそうではなかった。牢屋や拘置状等は別の場所に作ればよく、ぶっちゃけていえば警察署等の施設が別にあるため、わざわざ作る必要はないのであった。この城の地下では軍の設備の一部や備蓄倉庫が広がっているが、たくさんの通路が張り巡らされているため、
「さてどうする兄さん?」
「クラル姫がいる所を見つければ大当たりだが、そう簡単には行かないだろう。まずは、今回の事を知っている人間を探す!」
「了解!結局は手当たり次第ってことね」
2人は、城の地下の扉という扉を開けまくり、まるで家捜しのような動きである。倉庫を開けた時は即閉めであったが、サウザントリーフ兵の休憩室を開けた時は、紗江が中にいる兵士に襲い掛かかり、知らないとわかるとその場に投げ捨てていた。それを繰り返しつつ、通路で時たま、兵士と遭遇するが軽く往なしながら、扉という扉を開けていった。そして30回程、扉を開けた時の事だった。葡萄色のローブ、そして葡萄色の帽子や口元を覆うヴェールのような物をつけており、どこかの民族衣装を思わせている。ローブの中に導師服のような前掛けを着ているのもわかる。その他の特徴と言えば、目元付近以外は素肌を晒していない事と帽子から覗いている猫耳であった。
“ものすごく怪しい奴がいる!!”
紗江と大治郎の頭は一瞬でその事でいっぱいになってしまった。
「あなた達。今、私の事を“怪しい”と思ったでしょ!?」
図星である。いや、それ以外に表現のしようがなかった。その怪しい人物が“パチンッ”と指を鳴らすと、ドアが閉まり、ガチャリという音がする。状況から見て何かしらの精霊術を使ったようだ。見た目の格好からして精霊術師である事は間違いない。役職は司祭だろうか。
続く
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