東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第2章・白昼の吸血鬼:その9
「ここからが本当の勝負だ。勝敗もすぐ着くと思うぞ」
「どうしてわかるのよ」
「勘というやつだな。気の遠く成程の戦闘回数を重ねると場の空気とかでそれなりにわかるようになる」
それは本当かしら?と晴海は思ったが、自分と比べてはるかに戦闘回数を重ねている事は確かなので、一応、信じる事にした。
「ヴァンパイアはね、優れているのは身体能力だけじゃないのよ」
そういうと彼女を囲むように魔法陣が足元に浮かび上がる。大治郎は一発で精霊術の詠唱を行った事を見抜いた。(余談だが、精霊術の詠唱時の魔法陣は、個人の好きなようにアレンジできる)距離があるので、チェリーが詠唱を妨害するにも間に合わず発動、周囲にいかづちが降り注ぐ!
「きゃあああああ!」
一つのいかづちがチェリーを捉える。それを浴びたチェリーは悲鳴をあげながら地面に倒れこんでしまった。
「どうかしら、私の精霊術の威力は!?」
「うう……、か、身体が……」
チェリーは電撃の影響か、バチバチという音が立っている。そのためか身体が痺れて身動きが取れない。
「どうやら効果は抜群のようね。(でも、効き過ぎのような気がするけど、まあいいか)」
(たしかにあのヴァンパイアの精霊術の威力は高いけど、あそこまで影響が出るほどとは思えない。超高度文明時代生まれのヒトは、術に対する防御力が低いのか、それともチェリーの体質の影響か?)
大治郎がチェリーの様子に疑問を感じている中、晴海とソフィアは慌てているそぶりを見せていた。
「さて、ちょっと古い方法だけど、あなたが言っていた通りに昔ながらの方法で吸血をお見舞いしてあげるわ」
ヴァンパイアがチェリーの頭と右手を押さえつけ、首筋目掛けて噛み付いたのだが、すぐに顔をしかめて上に口を押さえながら後ろに倒れこんだのであった。
(何なのよ何なのよ!こいつは!噛み付いた瞬間、宇宙が見えたわ!腕とか耳とかはたしかに人間の柔肌だったのに、首は焼きレンガのようの硬いのよ!)
「あなた、一体何をしたかったのかしら?ヒトの首筋に噛み付いたのはいいけど、歯を押さえて苦しみだすのは、虫歯でもあったのかしら!?」
パカーン!!
チェリーがキャンプで使っていたスキレットを振りかぶり、相手の頬を思いっきり叩いたのであった。ヴァンパイアは口から光る液体を噴出しながら、きりもみ回転しつつ、地面に数回バウンドして動かなくなってしまった。
第3章へ続く
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