東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第3章・酒呑妖精:その2
「それであのゲートの先にはどんな所に繋がっているんだ?」
「簡単に話すとおもええええ!?……あなた達かた見れば魔界という私達の住む世界があるわ。って何よこれ!」
自総研の一室でクレインに対して取調べを行っているが、突然、舌をひん曲げられたような様子の後、素直に質問に回答した。
「どうやらその御札の効力はただ暴れるのを防ぐだけでなく、悪態もつけなくなるみたいだな。それにどうせ話すつもりなんだろう?」
「そうね。次の段階へ進ませるにはそうするしかないわね」
「やれやれ、今回の騒動の首謀者は下準備がしっかりしているようだな。まあ、少しずつ聞いていくか、まずは今回の騒動の規模についてだ。襲撃範囲は地球全体なのか?」
「いくら私達とはいえ、それは無理な話よ。それに大陸の北の方は暴走した機械兵器が無差別に襲ってくる状態だし、東の大陸は姿が魔族っぽい人間だらけだし、私達が出向いても効果は薄そうだしね。そういった地域を省いた結果、日本という事になったのよ」
「次に目的についてだ。魔族の中にはヒトを捕食するのもいると考えている。だけど、発生した襲撃事件においては重傷者はいるが、命に別状はないパターンまでで最悪済んでいる。これは意図的に行っているとしか思えない」
「ご名答、その通りよ。襲撃しても絶対殺すなという伝達が出ているの。本来、私達は人間を襲い、人間はそれを退治するのが基本的な関係なのよ。一部の友好的なヒトは人間と親交を深めてと言う事例もあったらしいわ。昔の事だからよくは知らないけど」
「そういう事をする目的は何なんだ?」
「さあ?私はこれでも一般人だし。こちらの世界を襲撃する計画があるから人員募集の広告を見て申し込んだだけだから。この計画を考えたヒトに、直接聞きにいくしかないんじゃないかしら?」
「ゲートで魔界に乗り込むしかないという事か」
「そ・こ・で、私に魔界に連絡させてくれないかしら?」
「それは、今回の計画の首謀者に今の状況を説明するという事か?ワナを張られる可能性がありそうだが」
「それはないわね。あなた達のような実力者に負けたら、こちらに来させる様に連絡しろと言われてるから。さっき取り上げられた私の持ち物から瓶詰めのような物があったでしょ。あれを返してくれる?」
それ以外は方法が無いと思ったので、その瓶詰めをクレインに返した所、中に入っていた紙切れを額に貼り付けたのだ。一体、何をやっているのだ怪訝の表情を浮かべていたら、ポンッ!と軽い音と共に、マジカルな煙とエレクトリカルな煌きが出て、すぐに消えてしまった。
「それで本当に連絡がついたのか?」
「特別な魔法道具らしいわ。額に貼り付けて送りたい内容を考えれば、読み取って送ってくれる仕組みね。これで連絡はついたし、あなた達が明日ゲートを潜るとも伝えておいたから」
「じゃあ、もう取調べは一旦終わりにして検査でも受けてもらうか。千歳、取調べ室に来て、このヴァンパイアとやらを検査室に連れて行っていれ」
流れるように部屋の内線機から千歳を呼び出す大治郎を見て、
「ちょっと私は変な病原体は持ってないって言ったでしょ!あれはデマだって!」
「念には念をだ。健康診断とでも思えばいい。魔界の住人用のセットではないが」
「伯父様、例のヴァンパイアを引き取りに参りました」
「来たか、早速このヴァンパイアを連れ出してくれ。五月蝿くてかなわん」
「嫌よ!それなら私はここを動かないわ!」
「困ったヒトですね。それじゃ――」
五月蝿く叫ぶクレインを、軽々と肩に担いで運び出してしまった。運ばれている最中、クレインは喚いたり、何か呪詛を言いたそうにしていたが、御札の効果の所為か呂律がまともに回らなくようで、ただの狂言にしか聞こえなかった。
魔界の某所―――
「カナメ様、クレインより連絡が入りました。結果から申し上げますと合計で5人。骨のある連中が魔界へのゲートを潜るとの事です」
「どのような人物かしら?」
「はい。詳細は自総研という所に所属している菊川大治郎とチェリー、サウザント・リーフ王国の女王であるソフィア・リーフ・サウザン、そして東雲グループという巨大商業企業の次期会長と噂されるクソ生意気な小娘の東雲晴海と執事の月島との事です。また、チェリーなる人物は私達に関して間違った知識を持っている模様です」
「自総研。やっと釣針に待ちにまった本命がかかったわね」
「と、申しますと計画を次の段階に移すのですか?」
「もういいでしょ。他の連中も随分暴れて満足しているでしょうし、全員、引き揚げさせなさい」
「お言葉ですが、その判断はまだ早いのではないでしょうか。今までのように魔界に連れてきた人物達は腕っぷしはたしかと豪語しながら、こちらに来てからは妖精にすら全く歯が立たない連中ばかりで記憶を消して、外に戻してばかりです。今回もそのような事に―――」
「その心配はないわ。この5人の内、他の4人がいなくても1人でも十分なのがいるわ。他の4人も権力や地位といった部分は申し分ないわ」
カナメと呼ばれた人物は口の端を少し緩めた。
「ノエル、不知火を呼びなさい。彼に出迎えに行ってもらうわ」
続く
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