東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第3章・酒呑妖精:その3
そして、現在――
「でも、いきなり飛び込んで大丈夫なんでしょうか。あの吸血鬼は空を飛べますから、向こう側は空中あるという可能性もあるのでは」
「手だけ先に突っ込んでみればいいんじゃない?」
「どれどれ・・・・・・」
警戒しているチェリーにソフィアが提案した所、晴海が興味深そうに手を突っ込んだ。
「お嬢様!何もお嬢様が率先してやる事は!」
「いいじゃない。別にクリーチャーの口の中に手を突っ込むわけじゃないんだから。あ、地面があるわよ。だいじょ・・・・・・」
最後に大丈夫と言っている途中でいきなりゲートに引き込まれてしまった。
「お嬢様!!」
それを見た月島は大慌てでゲートに突っ込んでいった。
「俺達も行くぞ!」
月島の後を追うように大治郎達がゲートに飛び込む。なんともいえないケミカルでサイケデリックな風景が目に飛び込んできた。この中では前に進んでいるのという感覚は全くわからない。だが、すぐに黒い影が目の前に広がり、その中から光が溢れる同時に周りの景色が現れてきたのだ。そして、目の前に見覚えのある人物がいた。
「どうもお久しぶりです、皆さん。ようこそ魔界へ」
紅い5つの尻尾を持つ妖孤・不知火がにこやかな笑顔で立っていた。そばにはゲートに引き込まれた晴海の姿もあった。
「それにしてもゲートから手だけを出して地面をペチペチと叩いていたのを見て、引っ張った所、晴海さんが釣れたのですが、空中に出ると思っていたのですか?」
「新しい所に行くのだから警戒するのは当然でしょ?」
「たしかにそうですね。ああ、貴女がチェリーさんですね。お初にお目にかかります。私は近江不知火と申します。何でも、我々に対して間違った知識をお持ちだとか。今回を機に理解を改めていただければ幸いです」
「は、はあ・・・・・・」
「さて、自己紹介も終わった事ですから早速、魔界をご案内します」
そういうと一台の車に向って行った。
続く
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