東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode 5 ~【小説版】
第3章・酒呑妖精:その1
大治郎、チェリー、ソフィア、晴海(+月島)は先日戦ったヴァンパイアのクレインが向かっていたトンネルの入り口に立っていた。
「見てあそこ」
ソフィアが指を指した所に青白い光を放っている渦のような物がある。
「これがクレインが言っていたゲートか。これを潜ったら魔界と呼ばれる世界へ行ってしまうのか」
先日、チェリーがクレインを倒した後――
「吸血鬼が虫歯だったなんて聞いた事なかったんだけど……」
チェリーがあきれた様子でクレインを見る。スキレットで殴った所がたまたま虫歯であったため、衝撃でその歯が砕けてしまったのだ。砕けるまで痛み等はなかったようだが、殴られた衝撃が引き金となり、箪笥の角に小指をぶつけたような鋭い痛みに襲われたのであった。
「ふん!歯の1本や2本砕けたって、どうってことないわよ。抜けたらまた生えてくるしね。それよりもこの御札は何?全く力が入らないんだけど」
「その御札は、貼った相手から抵抗する力を奪うという効果がある物との事だ。作ったのは自分じゃないから原理は知らん」
この御札を作ったのは紗江だ。主に暴れているクリーチャーを捕獲する際に、誰でも捕まえられるように陰陽術の力を封じ込めた御札である。抵抗する力に干渉するだけあって、逃亡や反抗しなければ、行動には全く制限がないのであった。
「皆、ここで色々と聞き出すのは少しばかりどうかと考えている。それにチェリーの話によれば、ヴァンパイアは変なウイルスを持っている可能性もあるらしい。そこでだ、一度、自総研に運ぶのはどうだろうか?」
大治郎の提案に4人は反対の意見は出さなかった。むしろ、一旦戻って物資の補給をしたかったくらいだ。
「私は変なウイルスなんか持ってないわよ!」
「わかったわかった。それは検査結果で信用するから。大人しく来てもらうか」
そう言うと、大治郎は動かないクレインを引きずり始めた。
「わかったわよ!ちゃんと歩くから引きずるのはやめて!服がやぶけちゃうわ!」
チェリーとの戦闘で服に綻びが出始めているのにと思いながら放すのであった。
続く
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